メディアグランプリ

先日、土浦店で開催されたある「文章鑑賞会」について

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:湯浅直樹(ライティング・ゼミNEO)
 
 
いましがた太宰を読みなおしたいと思ったのは、数日まえに来店した学生のことが、心に残っていたからだと思う。
 
角川文庫版の太宰治『もの思う葦』を手に取り、収録されている「一つの約束」という短いエッセイを読んだ。
 
2ページに満たない分量だが、
小説家は何を書くべきか? という問いについて、
太宰がどう考えていたかが伺える、
興味深い文章だとぼくは思う。
 
エッセイには、海で遭難した男と灯台守一家の話が挿話として出てくる。
 
あるとき海で遭難した男が、
灯台守の家へと流れつき、
たすけをもとめて窓から家のなかを見ると
ちょうど灯台守の一家が夕食をとっている。
 
男は「助けてくれ」と自分が叫べば、
この家族団欒のひとときを台無しにしてしまう。
 
そう思い救援をためらったところ、
ざぶんと波にさらわれ、
沖遠くへとその身を流されてしまう。
 
この遭難者の行為や心のなか、
そしておそらく命を落としたという彼の運命は、
作者によって書かれなければ、
誰に知られることもなく消えてしまう。
 
だから作者は、
こうした誰にも知られない事実(それがフィクション上のものであれ)をすくいあげ、
そこに秘められた家宝を書かねばならない。
 
そして太宰は、それを書くことこそ、作家の生きがいであると述べている。
 
いま、読みなおしてみて、
来店した学生に伝えた内容が、
大きく間違ってはいなかったと、
すこし安心している。
 
と、同時に自分がこのエピソードを学生にはなしのは、自分が文章で何を書きたいのか。
それをはなし相手の学生に伝えたかったのだと、あらためて気づいた。
 
誰かに話すことで、
あるいは口に出してみてはじめて、
自分の本音に気づいたという経験をしたことはないだろうか?
 
今回、学生と話していて
ぼくに起きたことは、
まさにそういう類いの気づきだった。
 
その学生は、文章を書くことに興味があるそうで、
その日、ぼくがした「天狼院ライティング・ゼミ」の話に、ずいぶんと長く耳を傾け、閉店時間が30分過ぎても仲間と一緒につきあってくれていた。
結局、1時間くらいは話していたんじゃないだろうか。
 
彼女と話はじめたきっかけは、
『READING LIFE』という雑誌を
彼女が購入するためにレジに持って来てくれたからだった。
 
「この雑誌は、ぼくたち天狼院書店が発行している雑誌なんです」と、ぼくは会計をしながら彼女に話しかけた。
 
ぼくたち天狼院書店は、これまでに3号、
『READING LIFE』という雑誌を発行している。
どの号も、天狼院書店のスタッフとお客様が参加して文章を寄稿している。
 
その最新号のVol.3は、「自分史上最高の文章を書く」ことがテーマになっていて、まさに書くことの面白さを追求した1冊となっている。
 
購入してくれる理由を尋ねると、
彼女は書くことに興味があり、
自分でも文章を書いていると打ち明けてくれた。
 
「ぼくもいま“ライティング・ゼミNEO”っていう天狼院書店のゼミを受講しているんです」と、ぼくはその学生に言葉を返した。
 
ライティング・ゼミというのは、天狼院書店が主催している文章教室で、通常4ヶ月のコースのほかに、1日で完結するゼミやいくつかのコースが年間をつうじて何コースか並行して開催されている。
 
「毎週1回、約2,000字の文章を提出する課題があって、それに挑戦しているんです」と、ぼくは彼女に言った。
 
毎週月曜日の23:59を締切として、
同じコースの参加者から多くの原稿が提出される。
そのすべてに、講師を務める天狼院書店店主の三浦さんが目を通し、フィードバックのコメントを返してくれて「掲載OK」ということになれば、原稿は記事としてWEB天狼院書店に掲載され、多くの人に読んでもらえるコンテンツとして公開される。
 
ぼくは、公開されている文章を一緒に見ながら、面白い本や音楽、映画を観た感動を話すときと同じように、自分が読んで面白いと思った記事のいくつかを彼女に紹介した。
 
妻が夫のために、ホタルイカのめんどうな下ごしらえを長年続ける、その理由について。
 
あるいは、母親が息子の成長を、すこしハラハラしながらも周りの大人たちと見守るその姿勢について。
 
やがて、ぼくと彼女、そして彼女の友人たちも巻き込んで、ちょっとした記事の鑑賞会をぼくらはレジの横に集まってひらいた。対話が行き着いた、自然な流れの結果として。
 
今となっては、なぜそんなことがはじまったのか、うまく思い出せない。
ただ、そのときふと話した太宰治の話が、
結果的に自分の書きたいテーマを表現していたことは、間違いがないみたいだ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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