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アフリカへ来たら、女性であることを誇りに思える祝日があった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:布施京(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
一年に一度、会社の女性たちが、みんなで同じ布で作った服を着る。
もちろん制服ではない。
そんな日が、ここモザンビークにはある。
 
4月7日の「女性デ-」にちなみ、
その約1週間前に会社のSNSで、女性だけのグループが突然作られた。
私が日本から赴任して2日後のことだった。
 
「カプラナで服を作って、会社に着て来ましょう!」
 
カプラナとはアフリカの布のことだ。
国によって呼び方が違う。
ケニアでは「カンガ」、ルワンダでは「ギテンゲ」、ここモザンビークでは「カプラナ」という。
カプラナは洋服だけではなく、カバンや小物、子どもの抱っこ紐に使ったりする。
動物・植物・果物などをモチーフにしていて、模様はさまざまで、カラフルな色も多い。
 
SNSで何十種類ものカプラナの写真が届いた。
それに対し、あれがいい、これがいいとみんなの意見が飛び交う。
4日後の金曜日にようやく布が決定した。
生成りの布地に、パパイヤがモチーフになっている。
赤・青・黄色の明るい柄だ。(写真参照)
 
「布は決まったが、どうやって服を作るのだろう……」
そんなことをふと考えていたら、女子たちが執務室から移動をはじめた。
 
「寸法測りに来たから、待合室に行きましょう」
 
「寸法? 会社で??」
と思いながら、よくわからないまま、私も付いていく。
会社の女子たちが、そそくさと待合室に集まっていた。
一人の男性が女性職員の寸法を測っていた。
彼は仕立て屋だった。手際よく寸法を測り、携帯電話にメモしていく。
 
ある女性職員は、ネットを検索しながら、どのような服を仕立ててもらうか探していた。
私は、その日着ていたお気に入りのワンピースが、気づけば10年以上経っていたので、同じ形を依頼した。
 
すぐに布代の回収が行われた。
カプラナは約2メートル四方の布で、1枚約500円。
シャツかスカートのどちらかの場合は、1枚で作れるが、ワンピースは2枚分となる。
 
みんなの寸法を測った金曜日から4日後の午前中。
また、女性たちが呼ばれ、そそくさと待合室に移動する。
なんともう服ができあがっていた。
各自トイレで試着をする。
 
私は少し大きかったので、2センチほど詰めてほしいと依頼した。
仕立て屋の彼は、「わかった」と言ったが、メモを取らなかった。
「本当に、覚えたの?」と念押ししたかったが、
もう一人、サイズが合わない女性職員がいて、調整を依頼していて、その対応で忙しそうだった。
15時に仕立て直して持ってくることになった。
 
おそろいの布地の服は、明日、みなで会社に着てくることになっている。
私は、少し不安になり、仕立て直しを依頼した女性職員に話しかけた。
「15時に持ってきてくれたときにサイズが合わなくても、もう直さないんですよね?」
否定してもらいたい気持ちを込めて質問してみる。
だが、答えは「そうですね」の一言で終わった。
 
「やっぱり、そうか。そうだよな……」
笑みを返しながら、一人心の中でつぶやいた。
 
仕立て代の回収が行われた。
一律約2500円。
オーダーメイドの服を日本で作ったことはないが、きっと破格に違いない。
 
15時に再度呼ばれて、そそくさと待合室に行く。
「仕事中にこんなことしていて大丈夫なのかな」と、なんとなく男性陣の目が気になる。
 
急いでトイレに行って、着替えた。
2センチ以上詰まっていて、体にフィットしたワンピースになっていた。
後ろのファスナーを一人で上げるのがつらいほど、きつかった。
布地が硬めなので、まるでコルセットをつけているようだ。
鏡を見ての第一声は、「もう、太れない」。
だが、とにかく入ったことに感謝して、急いで服を脱いだ。
もう一人の女性職員も、きちんと着ることができた。
「女性デ-」を迎える準備は、これで整った。
 
私たちは、追加の仕立てを依頼したということで、約600円請求された。
なんとなく「?」という感じだが、ここはアフリカ。
郷に入っては郷に従え。快く支払う。
 
翌朝、仕立てたばかりの服を着て出勤。
途中、カフェテリアのウエイトレスたちも、ビルの受付嬢たちも、それぞれお揃いのカプラナを頭に巻いていた。彼らは、白いTシャツに、頭と同じ赤いカプラナのスカートを身に着けていた。かわいらしく、色鮮やかで白いTシャツに映えていた。
 
会社では、10時から受付で撮影会が行われた。
それぞれ服の形はさまざまだが、同じ布地で女性全員が集まるととても華やかになった。
全員で写真を撮り、次は部署ごとに写真を撮る。
ポーズを何度も変えながら、笑いながら、
仕事中ということは思わず忘れてしまうような、
そんな愉しい時間が1時間近く過ぎていった。
 
その後、SNSで写真が共有された。
モデルさながらの個人写真もたくさんアップされていた。
日本人女性が執務室に戻った後、モザンビークの女性たちは、一人ひとり写真撮影を行ったらしい。
 
アフにカに赴任して10日目。
鮮やかなアフリカの布に身を包んで、現地の人たちと一体感を感じる。
その週末には、モザンビーク女性職員の家に招待され、再度仕立てた服を着て、食べ物を持ち寄り集まった。彼女の夫は子どもたちを連れて実家に遊びに行ってくれた。
またまた写真撮影を行い、食事をし、踊り、ゲームやカラオケをしながら夜まで過ごした。
「女性デ-」を女性たちだけで、心ゆくまで愉しむ一日。
 
日本を含め、国連が定めた3月8日を「国際女性デ-」としている国が多い。
 
モザンビークは、なぜ4月7日なのか。
 
それは、モザンビークの自由闘争のヒロインであったジョシナ・マシェル という女性の命日に由来するからだ。
ジョシナ・マシェルが女性の権利とモザンビーク独立のために戦うも、夢を実現する前に、肝臓ガンに侵され25歳でこの世を去ったのが、4月7日だった。
 
女性を差別せずに、男性と平等であるために掲げられた「国際女性デ-」と違い、
モザンビークでは、ジョシナ・マシェルを敬い、彼女の命日を「女性デー」として祝日にし、彼女の貢献が語り継がれている。
そして、実際、モザンビークでは活躍している女性が多い。
こちらに来て学校や施設を4箇所訪問して、うち3箇所の理事長が女性だった。
 
4月7日。初めて「女性デ-」の意義深さを感じた。
 
女性たちが華やかに装い、女性であることを共に喜び、分かち合う日。
女性であることに誇りが持てる、そんな日となった。
 
来年の4月7日は、どんなカプラなの服を着て、何を感じているだろう。
今よりも、女性である自分に自信を持って、過ごしているに違いない。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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