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メディアグランプリ

親の心子知らずならぬ、父親の心娘知らず、な出来事


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記事:飯髙裕子(ライティング・ゼミNEO)
 
 
「12時25分過ぎくらいには着くと思う~」娘からLINEが入る。
それに合わせて、私は昼食の準備を始めた。
夫にも一応伝えておこうと、「25分過ぎくらいには着くって」「12時?」「そう」
パソコンを見ながら一言。なんだか薄い反応だ。
娘が一人で来る時とはえらい違いじゃないの。
 
そう、今日は娘が彼氏を連れて初めて家にやってくるのだ。
 
一年前の春、娘がマンションの更新を機にお付き合いしている彼と同居しようかと思うと私に連絡があった。家賃がもったいないからという理由だが、まあ結婚を視野に入れてのことだろうと思い、その時うちに挨拶に来ると言っていたのだ。
ところが、コロナの蔓延で親族に会うのもはばかられる事態に彼のご両親も二人が挨拶に行くことは心配ということで、報告のみになり、延び延びになっていたのである。
二人の同居に双方の親としては異存もなかったが、夫はそれまでお付き合いしている彼のことも知らなかった。
 
さすがに娘には、会えなくても連絡を入れるように言ったのだが、これまた簡単なメールを送り付けてきた。
娘のことがかわいくて仕方なかった父親にしたら、青天の霹靂だろう。
私が間に入ってフォローするはめになった。
 
その娘が、彼を連れてうちに来るという。
夫は、「結婚のあいさつに来るのか?」と私に聞いてくる。
いやいや、それは何回も説明したじゃないの。同居の時できなかった顔見せみたいなもんでしょ。
結婚するとはまだ聞いてないし。
 
小さいころは、娘も夫と遊びに出かけたりしていたのに、いつのころからかあまり話さなくなり、付き合っている人のことなど私が話すのさえ嫌そうだった。
一方夫は、娘のことが気がかりで仕方ないのだが、そっけない娘に話すのも気が引けるようで、結局私に聞いてくる。
いつも私が間で右往左往する羽目になる。
 
まためんどくさいことにならないといいけど。そう思っているうちに、「ただいま」と声がした。
お、娘はちょっと改まった格好で、やってきた。彼氏もきちんとした格好で、好印象だ。
初めての対面に何やら双方少し緊張が見える。
娘もなんだかいつもとちょっと違う感じだ。
当たり障りのない会話で、夫と彼は話をしている。とかく夫は、身内をこき下ろす会話で盛り上がる癖がある。
娘の転職を持ち出して彼に何やら同意を求めている。
私を手伝うのにキッチンに来た娘はぶつぶつ小声でつぶやきながら眉間にしわが寄っている。やれやれ。
 
まあまあ、そこは彼氏の前なので、抑えているようだ。
とりあえず、和やかな昼食会という感じで、短いご対面も無事終了し夕方二人は仲良く帰っていった。
 
二人が帰った後、夫は「写真で見るよりずっとハンサムだったな」と一言。
え? そこ? そう思ったけど夫にしたら文句を言わないだけ、かなり気に入ったのかもしれない。
「けど、結婚の話もないし何しに来たんだ?」まだ言ってる……。
 
ほんとは、心配で仕方ないけど娘にうまく伝えられないもどかしさと、寂しさがあるのかもしれないと何となく思った。
父親って、子供のことを心配する気持ちは、母親と同じでも表現の仕方が少し違うのかもしれないとふと思う。
そういえば、私の父も普段無口であまり話さない人だから余計にわからなかったけれど、同じような気持ちだったのかもしれないなと思う。
自分が親になって初めて親の気持ちがわかったのだから、娘に父親である夫の気持ちを理解することなど10年早いというものだろう。
 
かわいくて仕方ない娘が大人になったことを喜ぶ気持ちと寂しさと心配、これは親が子供がいくつになっても消えることのない感情なのかもしれない。実のところ私も、息子がお嫁さんを私に紹介した時に、驚きと喜び、そして娘が増えるうれしさとほんの少しの寂しさを感じたではないか。
母親のように、割とストレートに子供に物を言わない父親は、誤解されがちだし何となく気持ちがすれ違ってしまうことも多いのかもしれないなと思う。ちょっと、気の毒な感じもする。親子って近すぎて逆にわからないことがあるのかもしれないというのを最近つくづく思う。
 
娘は彼女なりに父親を心配しているのだろうけど、うまく伝わらないところがあるのかもしれない。
 
「今日はありがとう。また遊びに行くね」娘からのLINEだ。
 
どうやら娘も父親に彼を紹介するイベントを結構気にしていたんだなと私は初めて分かった。彼と父親を会わせるというのは、娘にしても彼が父親をどう思うか、父親が彼をどう思うか、どちらにも気を遣う出来事であったことは間違いない。
 
たったひとことのLINEの文面にその気持ちが表れているような気がした。
 
次に来るのはおそらく結婚するときだろうなと思いながら、仲良さそうに歩いてゆく二人の後姿を思い出して私は、そう遠い話ではないかもしれないなと思うのだった。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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