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家族を持つということ

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記事:下地敦子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
私には2つ離れた下の妹がいる。
その妹は5年前に結婚して、家を出た。
大学卒業間際に友達だった人と付き合い始め、2年間の遠距離恋愛の末に結婚した。
26歳頃に結婚した。
そして、29歳の時に妊娠し、昨年の6月に子供を出産した。
男の子だ。
出産までには数々の苦労があった。
妹は出産直前まで働く予定をしていたが、職場で新型コロナウイルスの濃厚接触者が出た。
悩みに悩んだ末に、予定よりも早く休暇を取り、不安な中を過ごしてきた。
出産時には、コロナ禍ということで、旦那さんも立会えず、1人での出産となった。
初めての出産だというのに、1人で立ち向かう妹がとても大きな存在に思えた。
そして、私たち家族には、初孫ができたし、私にとっては初めての甥っ子ができたわけである。
産まれた当時は約3㎏超で産まれてきたが、とても小さく、少しでも雑な扱いをすると壊れてしまいそうなくらい小さな身体をしていた。
産まれからは、月に1回は顔を見に行くようになった。
彼は、凄まじいスピードの成長で周囲の人間を圧倒した。
成長していくにつれて、妹宅に寄ると、人見知りをされ大泣きされたが、それさえも愛おしくてたまらなかった。
妹夫婦は毎日の子育ててと仕事で寝不足の日々を送っていたが、私は甥っ子を見る度に
「家族って温かくて力が湧いてくる」と思うようになった。
妹夫婦の苦労を見る度に、自分の両親に対して、フルタイムの仕事を持ちながら私たち姉妹を育ててくれたことに感謝の気持ちが持てるようになった。
今まで、両親に対してなんとなく有り難いなと思っていたが、「こんなに苦労をしたのか」と思うと今まで育ててきてくれてより感謝の気持ちも持てるようになった。
子供を授かることと聞くと思い浮かぶ人がいる。
以前、勤めていた小さな税理士事務所で40代のパート勤務をしている先輩がいた。
結婚していたが子供はまだおらず、子供を持つ為に不妊治療中であると話していた。
時間と、お金と、身体的負担がかかることで、不妊治療に集中するためにお休みすることになった。
卵子を採取する為の注射が身体にとてもこたえると話していた。
この先輩は、その当時年齢は43歳を超えており、自治体からの助成金を貰えず、自費で治療費を支払っていたそうだ。
1回の体外受精に何十万円とする治療を何回もトライすることはできず、治療に専念したいので、休みたいとのことだった。
女性には子供を持つことにタイムリミットがあるとは知っていたが、こんな場面で制限をくらってしまうのかと29歳のその当時はぼんやりと思っていた。
「晩婚だったのかな」と思って、尋ねてみたら、その先輩曰く、旦那さんと結婚したのは20代に職場で出会い結婚したが、先輩の仕事が忙しくなかなか子供を授からないまま、時間だけが過ぎていってしまったそうだ。
そう話す先輩はとても寂しそうな顔をしていた。
「年齢的にも子供を授かるのは難しいだろうなと」と当時思っていた。
その後、私はその事務所を退職したので、仕事を休んだ後、先輩がどうなったのかはわからない。
他にも40代になって結婚した夫婦がおり、子供は持たないだろうなと思ったが、不妊治療を始めたと聞いて驚きを隠せなかった。
数年の不妊治療の後、この夫婦は子供を授かることができた。
年単位の時間と安くはない治療費にお金をかけて子供を持ちたいという希望にその当時は違和感を持っていた。
「子供って何がそんなに良いのかな、子供を持つと大変だろうに」とずっと思っていた。
私は今まで子供を持つことが良いことだとは思えなかった。
世間一般では、結婚して子供を持つことがおめでたいとされる風潮があるし、結婚して子供を持つことが家庭の当たり前という空気感が漂っているので、表立って言うことはできなかったが。
子供が成人するまでにはお金はかかるし、自分の好きな事をやる時間も取れなくなってしまう。
今では女性も子供を持ちながらも仕事をすることが当たり前となっているので、そのこともとても重圧に感じ、自分の人生の中で子供を持って家庭を持つことがどうもイメージが湧かなかった。
自分に甥っ子ができたことで、「どうしても子供を持ちたい」という家族の願いが以前よりもほんの少しだけわかることができた。
大袈裟かもしれないが、子供はかけがえのない宝物なのだと思えるようになった。
だから1回に何十万というお金をかけてでも不妊治療に取り組むのだと。
幸い、妹夫婦は体外受精などお金のかかる治療に進む前に子供を授かれたが、
「結婚したら直ぐに子供を持つことができる」と話していた妹は、子供ができないことに焦りと不安を持っていたように思う。
側で見ていて、ひしひしと伝わってきた。
そして、子供を授かった後にこうも話していた。
「自分は割と早い内に子供を授かれたから良かったけど、自分より年上で不妊治療を行っている人が会社にいたよ。お姉ちゃんと同じ歳ぐらい」と。
その話を聞いた時に、不妊治療をすると言って仕事を休んだ先輩の顔が浮かんだ。
何歳になっても子供を持ちたいと願う家庭には、子供が授かって欲しいと思うようになった。
年齢を考えると女性は段々と子供が授かりにくいことはわかってはいるが、子供を持てる経済環境にあり、夫婦が「子供を持ちたい」と願うのであれば、年齢で制限をせず国や自治体は治療を支援しても良いのではないかと切に願う。
 
 
 
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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