メディアグランプリ

大切なひとを失ったときのはなし


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記事:園田玲花(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
クレヨンの好きな色。愛用のスニーカー。
大切なものほど、すぐに消えてなくなってしまう気がする。
 
高校1年生の頃に母を亡くしました。
母が病気だったのは知っていたけれど、当時は反抗期真っ盛り。
両親の言うすべての事にイライラしたり、無視してみたり。
その日も近所のアルバイト先で働いていました。
 
アルバイト先の電話が鳴り、
「すぐに病院に来てほしい」焦る父の声を最後まで聞かずに電話を切り、自転車があるのに走って家に帰っていました。走りながら、『自転車あるじゃん、っていうかまだママが死ぬわけないじゃん』少し怒りを感じながら帰ったのを覚えています。
家に着くと親戚が私や妹弟を車で迎えに来ていて、急いで病院へ。
車の中では「いやいや、大丈夫だよねぇ?!」なんて笑いながら向かっていました。
病院に着いてからはあまり記憶がありません。
断片的に覚えているのは、初めて見たパパの泣き顔。
ドラマでよく聞くピーッという心電図の音。
病院の匂い。話さない看護師さん。
そのすべてで、“ママは死んだんだ”頭の中に情報は入ってきましたが、心が受け入れられず、最終的には笑いながら泣き、過呼吸になっていたと聞きました。
三人妹弟の長女。いつも「お姉ちゃんなんだから」しっかりしなきゃと思っていたけれど
その時の私は妹や弟を泣かせてあげられず、妹弟に慰められる始末。
冷たくなった母に触るとより死を実感しそうで、触れることも出来ませんでした。
 
ママの作る料理が大好きだったな、
ママは運転上手だったな、
ママに好きなひとの話したかったな、
ママを旅行に連れていきたかったな、
ママの声が聞きたいな、
ママの元気な姿が見たいな、もっとたいせつにすればよかったな……
なくすと出てくる、たくさんの後悔が私を苦しめました。
そのあとは、流れ作業のように進んでいきました。
お通夜の準備、お葬式の準備。
いろんな人からの「ご愁傷様です」に、パパから教わった「恐れ入ります」で返します。
昨日まで反抗期だった私はどこにいったんでしょう。
両親の愚痴を書いているツイートを見かけると『愚痴が言えるだけ幸せなんだよ』
親孝行をしたという友達の話を聴くと『私にはもう何も出来ないから聞きたくない』
今度は自分の家族以外からでてくる想いに妬むようになり、
ふさぎこんでしまうようになりました。
 
ただ、時間が経ってふさぎこんでいた私を立ち直らせてくれたのも、
周りにいた家族や、友人でした。
 
イライラしている私を笑わせてくれようとする家族。
泣いてばかりいる私の隣に黙って座ってくれている友達。
こころの傷が少し癒えてきたころ、やっと周りに居てくれる人達に
感謝できるようになりました。
 
高校一年生の時の私へ
大切なひとを亡くすのって、どうしようもないくらい悲しくて、
いつも通りの世界にイライラしてしまうよね。
自分の気持ちが誰かに分かってもらえるはずないって、周りの人に当たってしまうよね。
実は、三ヵ月後くらいに当たってしまっていることに後悔し始めるから
どうか出来るだけ穏やかに過ごしてくれたら嬉しいな。
高校一年生の時の私は、これからどうやって生きていけばいいんだろうって
考えてると思うんだけど
30歳の今の私は、家族ともとても仲良くて、自分の好きな人と幸せに過ごせているよ。
大切なものやひとは、クレヨンの好きな色や愛用のスニーカーと同じくらいすぐになくなってしまうことに気が付いたあなたは、
これからきっと大切なことに“大切”と伝える重要さをわかっているから
安心して生きていてね。
 
あの時、あのタイミングで母を亡くして良かった。
とは思っていません。
だけど、母を亡くしたことがあるから、
同じ痛みが少しだけ分かる人間になれました。
今を大切に生きていようと思うようになりました。
自分の中の幸せ、の基準が少し下がって、小さな幸せを見つけることが得意になりました。
 
ママ、どこかでこれを読んでいますか。
どこかで私の事をみてくれていますか。
ママが居ない世界は、寂しくて、悲しくて、たまに残酷だと思う時もあるけれど
ママとの思い出をたまに思い出して、心があったかくなるから
私はまだそっちにはいかないよ。
 
でも、私にも寿命が来て、またママと会えたら
今の話をたくさんするからもう少しそっちで待っていてね。
お土産話が沢山出来るように今この瞬間を大切に大切に生きていきます。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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