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イントロ、飛ばせますか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 ハルカ(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「ちょっとその見方やめて!」
「その場面、さっき見てなかった? もしかして巻き戻してるの?」
 
私は、うちの娘(小学3年生)のテレビの鑑賞方法についていけない。
 
テレビというか、アマゾンプライムビデオなどの動画配信サービスなのだが、ほっておくと一日中でも観ている。その手に常にリモコンを握りしめて。
普通は、再生ボタンを押すと、そのまま最後まで観たり、トイレなど中座するときに一時停止を押したり、リモコン操作はその程度だと思う。が、娘はせわしなく、スキップしたり早送ったり、もしくは巻き戻したり、理解できない速さで操作している。
私はずっと一緒に見ているわけではないのだが、それでも気になる。
ちょっとその場面何回見るの?
今、気になってたのにスキップしちゃったの?
内容が気になっていなくとも、いきなり切れる会話や音楽に気持ちが悪くなる。
 
繰り返し同じシリーズを観る、小学校3年生にしてオタク道まっしぐらなので、そういうものかな? 程度で気にしていなかったのだが、今朝、これだ……と思うことがあった。
 
我が家の朝は日テレで始まる。いつものように8時になり「スッキリ」が始まると、「最近の若い人の中には、音楽のイントロを飛ばす人がいる」というトピックを放送していた。「飛ばす派」「飛ばさない派」の街頭インタビューや、年々短くなるイントロの傾向をグラフで見せたりしていた。といっても、「飛ばす派」は20%弱なのだが。
これを見て夫と、
「○○(娘の名前)もやるね……」
と話した。
 
「飛ばす派」の20%弱の人たちも、好きなアーティストの音楽などは飛ばさずじっくり聴いたりするらしい。つまり、聴き方を選んでいるようだ。
選べるということは、より多種多様なコンテンツに簡単に触れられるようになった結果だろう。興味の深度を問わず、ちょっと聴いてみることができる。サブスク時代の鑑賞方法と言われる所以だろう。
 
私自身も、サブスクの恩恵には随分とあずかっている。映画なんか、レンタルショップでやっと見つけて、1週間で返さなきゃならなくて……という時代と比べて、なんと便利になったことか! うっかり解約し忘れて月額払うことはあっても、うっかり返却し忘れて3,000円くらい延滞料金を払った悔しさと比べると、なんのそのである。ちょっとでも「あれみたいな」と思い付いたら検索。ウォッチリストに加えておいて、気分に合わせて観ればよい。今が一番映画を観ている。なんて幸せな時代が到来したことか。
 
しかし、便利さと引き換えになくなる経験は、「不便を乗りこえる情熱」ではないか。たくさんの映画をサブスクで観ると、一つひとつの経験は薄れていくのに気が付く。それはちょっと寂しい。危機感すら感じ、私は前にも増して、映画館に足を運ぶようになった。「不便」をあえて自分に課す。大画面で得られる没入感もさることながら、わざわざお金を出して、場所を変えて、身柄を拘束するという不便も、映画体験を濃くする要素になる気がするのだ。
 
でも、そもそも、これも私個人の楽しみ方かなと思う。
映画とか音楽とか、全く興味を持っていなかった小学生のころから、なぜだか私にはこの傾向があった。
放課後、友達の家に自転車で遊びに行くのだが、私は行き帰りを同じ道で行かないと気が済まなかった。急な坂を上ったところにある友達の家に行くのに、急な坂を下って気持ち良く帰るために、急な坂を上って行くのを選択していた。遠回りして緩やかな坂では行かなかった。苦労によって楽しみが倍増される気がしていた。
だから、イントロを聴かずに素晴らしいサビを聴いたとしても、感動を十二分に味わうことはできるのか? という思いも断ち切れない。助走なしで高く飛べるのか? もっと飛べるぞ! 案外イントロも癖になるぞ。思わぬ場所で出会うお気に入りこそ醍醐味だぞ、と思ってしまう。
 
こんなことを言っていると中年のボヤキのような気もしてくる。
育った時代や環境で、違う価値観が生まれるのは事実。生きた時間や経験の勾配を振りかざすと、何だかうざい感じになるだろう。私も上の世代と話すときは、基本「うざいことを言われる」と思っている節がある。(いまだに中二病の気がある)だからこそ、凝り固まりたくないなぁと思うのである。お互いに面白がりたい。
イントロ飛ばしも「そんなの本当の良さを分かってない」とは思うけど、断罪したくない。なにかそこには私のあずかりしらない良いことが? と思う。
私だって、サブスクによって今の方が映画を観ているということは、サブスク以前は、そこまでの不便を乗りこえる情熱は持っていなかったのだ。そんな情熱はなくとも、より簡単に、よりたくさんの人が、作品に触れられるようになった。それ自体は素晴らしいことではないか。
 
我が娘のリモコンピコピコ鑑賞スタイルには拒否反応を持ってしまうが、それができるって、案外すごいことかもしれない。明らかに摂取できる数は増えるだろう。何かの仕事や場面に役立つかもしれない。
本心は、不便時代を知るものとしては、不便を乗りこえての鑑賞もなかなかいいものだぞ……と娘にささやきたい。そこは、おばさんがと思われても譲れない。ゆずれない願い。ああ、やっぱり、こういう話題は中年のボヤキになっちゃうな……。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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