メディアグランプリ

お笑いは好きだけれど、女芸人をあまり好きではなかったかつての私へ


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記事:HOKU(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「お願いします! 僕を先生の弟子にしてください!」
「どうして弟子になりたいんだ」
「先生の作品を見たときに思ったんです……これだ! これなら僕にも作れそうだって」
「帰れ!!!!!」
 
私とお笑いとの「出会い」は、小学校5年生の時にさかのぼる。
 
もともとお笑い戦国時代に生まれ落ちた私は、物心つく前からお笑い番組に恵まれていた。3歳の頃にM-1グランプリが始まった。小学校に上がる頃には、エンタの神様、爆笑レッドカーペットなどのネタ番組が、既に最盛期を迎えていた。
だから、定期的に「お笑い」「ネタ」というものには触れてはいた。小学校低学年の私は、波田陽区とムーディ勝山が大好きで、たまに落語のCDを部屋でこっそり流してはケタケタ笑う、ごく普通の小学生だった。
そんな私に、転機が訪れた。
M-1グランプリ2009。パンクブーブーが優勝した年だ。
 
「え、誰?」「最近見ないねぇ、何してるの?」という声が聞こえてきそうだ。
テレビでは見かけないけれど、「漫才界のテツ&トモ」と言っても過言ではないだろう。地方営業と地方ローカル番組では大人気の、正統派漫才師である。
冒頭の漫才は彼らがM-1グランプリ2009で披露したネタの一部だ。
今でも覚えている。あの漫才に出会った時の衝撃を。
 
「楽しい」だけのものだと思っていた漫才は、「人を呼吸困難にさせるもの」だった。それを知った。ネタの4分間、私は涙を流して笑い転げた。苦しくて苦しくて仕方なかった。全ての言葉が、全てのボケが、なに一つとして無駄ではなかった。
 
でも、2010年、M-1が終了した。M-1が終了したら、なんだかどのネタ番組も勢いと元気を失っていった。家族もネタ番組を見なくなり、私の熱も少しずつ冷めていった。
 
出会い直しは高校1年生の冬だった。何かの拍子に母が「これだ! これなら僕にもできそうだ!」と言ったのだ。頭の中に腕が入ってきたような感覚だった。無理やり記憶が呼び覚まされた。そうだ。パンクブーブーだ。あの爆笑を、あの呼吸困難を、もう一度味わいたい。
 
そこから狂ったようにパンクブーブーのネタをYouTubeで探した。暇さえあればパソコンを開き、パンクブーブーのネタを探す。TSUTAYAに出向きパンクブーブーのDVDを借りる。探し回るうちに、他の芸人さんの情報も入ってくるようになり、気がついたら2週間ほどで純然たる「お笑いヲタク」になっていた。お笑いの大会のスケジュールも、出演者の基本情報も当然把握済。好きな芸人さんのネタは軒並み暗唱できる。その状態まで2週間で持っていった「好き」のエネルギーは本格的に恐ろしい。
 
その後も順調にヲタク活動を続け、日々をお笑いの動画とライブに傾け続けるうちに気づいた。
「そういえば私、『○○さんが面白いと思います』って言うときに、女芸人の名前出さないな……」と。
 
女友達も男友達もまぁまぁいる私ではあったが、特に面白いと思う友達には当時から女友達が多かった。ぶっ飛んだ人、言葉遊びの上手い人、お笑いで必要とされる要素を持った女友達を私は何人も知っていた。なのに、「女芸人」は面白いと思えなかった。
 
「女芸人」がひな壇で喋るとき、「ブスなのにモテたい」「モテないけどイケメン大好き」的なキャラを求められることが多いからだ、とじきに気がついた。面白いけど、私の好きな笑いとは違うな、という感じ。「面白い色々な人たち」が「面白い一種類の女」に濃縮還元されちゃったみたいな、ちょっとしたガッカリ感があった。
 
それが今やどうだろう。
3時のヒロイン、ぼる塾、蛙亭イワクラ、阿佐ヶ谷姉妹、Aマッソ、吉住……あげればキリがない。
「好きな芸人」といえば女芸人の名前がするっと出てくる自分になった。
 
彼女らの何がいいってもう、とにかく自然体なところ。何を考えていて、どんなことを面白いと思っているか、全部話してくれる。ネタにこもっている。「面白い人たち」が「面白い人たち」のまま、鮮度そのままお刺身みたいに素材で出てくる。「女芸人」という括りではなく、「芸人(女)」として見ることができる、といえば伝わるだろうか?
 
自然体の彼女らは最高に面白い。絶対に面白い友達がテレビで喋っている、みたいな感覚だ。
 
自分は女なのに、女芸人を好きになれない。そんなこと、と思われるかもしれないけれど、私は思春期をこの「そんなこと」に悩んで過ごした。大学でお笑いサークルに入ろう、と思った時にも「でも、女の人って面白くないしな……」と思って入らなかったし、ラジオサークルで面白いことが言えなかった時にも、「でもいくら頑張っても女だから面白くないよな……」と思ったりしていた。
 
馬鹿だった。彼女らなりの「面白い」が尊重されたらすごく面白かったのと同様、私だって「私なりの面白い」を見つければ良いだけの話だった。そのことを、私は好きじゃなかったはずの女性芸人たちから教えられた。
 
自分と異なる周りの男子ノリに合わせようとしていたからクソつまらなかっただけで、私自身の笑いを求めれば最高に楽しいし最高に私って面白いじゃん! バカにしてきた男子ども、私の笑いについてこいよ!
 
と思いながら生きることにしたら100倍楽になった。
「女芸人が好きじゃなかったかつての私」へ、見ていますか?
今の私が見ている世界は、かつてのあなたが見ていたよりも多分少しだけ、明るいよ。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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