燃えろ! 漆黒の炎!
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記事:kenken(ライティング・ゼミ4月コース)
あの日、私の中で火事が起きた。
誰にも知られていないけれども確実に。
最初はボヤかと間違うくらい小さな火だった。けれども次第に大きくなって、もう自分では消火することができないくらい大きな炎になっていた。こうなるともう止まらない。簡単には鎮火できない。この炎を一体どうしよう?
それは些細な気づきだった。
なんで二人とも同じ日に早く仕事を終えるんだろう?
会社の予定表を眺めていて、ふとこんなことに気がついた。
初めは仕事のできる人たちだから早めに仕事を上がるのだろう、そう思っていた。けれども、なんか引っかかる。片方の人は、実は私が会社で密かに気になっている方だったから、勘というかなんというか、時折二人のアフターファイブのスケジュールが一致しているのが気になる。
別の日、会社内のミーティングに参加した。二人のやりとりがまさに阿吽の呼吸。一緒に仕事をしているから、では言い訳にならないくらい、コミュニケーションが自然だった。社内のチャットツールでも、お互いを理解しあって会話している。この光景を目の当たりにして、私はある事実に気がついてしまった。
私の好きな人が私以外の人を好きになっていた。
そのことを知ってしまった瞬間、私の中に火がついた。
私が好きなあの人に対して、好きな人の思い人に対して、なんとも言い難い嫉妬の気持ちが湧き上がってきた。私にも人間としての卑しい感情があることに驚いてしまう。嫉妬なんて、見苦しい、カッコ悪い、みっともない感情なんて、私ものあったのか。自分を情けなく思う。
一度着火してしまった嫉妬の火は消せるものではなかった。
どんどん私の心を焦がしていく。
人間の負のエネルギーが集約され、人間の黒い感情によって生み出された漆黒の炎。
それが嫉妬というやつだ。
なんであの人が好きになった人は自分じゃないのか。
なんであの人の思い人はこの人なのか。
不思議なことにそんな感情は湧かなかった。
なぜだろう?
きっと、私が好きだったあの人と、好きな人の思い人が人格者だったからだと思う。社会人としても、いや人間としても、私よりも一回りも二回りもできている人たちだから。
私が好きになった人は、私が仕事で一番苦しんでいた時に声をかけてくれた人だった。社内の人が誰一人私に関わらないようにしている中、心配して声をかけてくれた。その人自身も難しい仕事を抱えて必死になっているにも関わらず、相談に乗ってくれた人だった。実は誰よりも勉強熱心で質問もたくさんして、失敗しても挫けない強い気持ちで仕事をしていた。次第に私はそんな姿に惹かれていた。
一方、好きな人の思い人は、一言でいうならスーパービジネスマンのような人だった。これまで大手企業を複数渡り歩いた経験から、その人しかない独自の強みを持っていた。次々と難しい仕事が舞い込んできて、期待以上の結果を常に出す。常に目標を持ち自分の仕事やチームの仕事を改善し続ける、そんな人だった。何より、私が好きな人と同じチームだったから一緒に仕事をする機会が多かった。勉強熱心な人と結果を出し続けるビジネスマン、これ以上の組み合わせはそうそうないのではなかろうか?
二人はなるべくしてなったのだ。
だから私は嫉妬の気持ちの矛先を好きな人やその思い人に向けることができなかった。二人に嫉妬してもどうしようもないから。けれども、この嫉妬という漆黒の炎は相変わらず私の中で燃え続ける。漆黒の炎で嫉妬先の相手を焼き尽くせば、そのうち消えるかもしれないが、それはできない。そう。明らかに私の完敗なのだ。二人からすれば、私なんて眼中にないのかもしれない。私が勝手に二人に嫉妬したところで何も変わらない。じゃあ、この炎の取り扱い、どうする?
行き場なく燃え続ける嫉妬の炎。
負の感情による膨大な黒いエネルギー。
気がついたら私を動かす原動力になっていた。
朝早くから夜遅くまで仕事をするようになった。休日も仕事のことを考えるようになった。以前は難しくて覚えられなかった専門知識を意地と根性で覚えるようになった。以前よりも質問や意見を出すようになった。仕事のできない自分を曝け出して、一つ一つの仕事を体当たりするかのように取り組んだ。
プライベートでも1日の過ごし方が変わった。
きっかけは会社の同僚の一言だった。
「体づくりは裏切らないからな」
ランニングを始めた。雨の日も風の日も今日は走ると決めたら必ず走るようにした。筋トレを始めた。毎日寝る前に必ず体を鍛えるよう習慣にした。さらにプロテインも飲んで、食事も脂が少ないものに切り替えて、自分の体を改造し始めた。
おまけにキックボクシングまで始めた。
「何が起きた?一体どうした?」
なんて言葉を周りの人にかけられた。それもそのはず、今までキックボクシングなんてやったことがないから。けれども、新しい自分になりたい、新しい挑戦をしたい、今のままじゃダメだ、そんな気持ちが私を突き動かした。自分に足りないものは戦う姿勢。折れない心。何がなんでも相手を倒すという気持ち。自分の心を鍛えるために始めた。
嫉妬というどす黒い感情から黒い炎が生まれたけれど、それは嫉妬先も私自身も焦がすことなく、今の私を突き動かす原動力になっている。人間の黒い感情から生まれる膨大なエネルギーが火力発電のように今の私を動かしている。
どうやら、小さな火のようだった嫉妬の感情が、瞬く間に大きな炎となり、とんでもない大火事になってしまった。幸いなことに、この火事による怪我人は出ていない。ましてやこの火事は、今までの自分を弱い部分を燃やしつくしてくれそうだ。だったら、この火事はしばらく鎮火しない方が良さそうだ。
燃えろよ、燃えろ!
炎よ燃えろ!
私を突き動かすために!
***
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