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「お母さん、私は本当にお母さんの子供なの?」問い続けていた私が、今確信していること


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記事:平田台(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
今から20年前、私は少し嘘をついた。
「尊敬する人は、黒柳徹子さんです」
就職活動の採用面接で、そう言っていた。
本当は「母です」と言いたかったのに。
 
大きな声では言えないが、確か、就職課の方から「認知度の高い人物の方が、面接官に伝わりやすくて、好感度も高い!」などとアドバイスを受けて、選んだ答えだった。
 
幼い頃から「鼻のカタチ、背格好がお父さんに似ているねー」と、よく言われた。「お母さんに似ている」と言われたことは、記憶にない。
姉や弟のように、「目の形、お母さんにそっくりねー」と言われたかった。大好きな母に近づきたかったのかな、と思う。
淋しさからだろうか、「台は、お母さんの子供なの?」そんなことを母に訊いていた。「川で拾ってきたのよ! なんてね。昔はよく、そんな風に自分の子のことを言ったりしていたのよねー。台はお母さんの子よ。どうしてそんなこと、考えるの?」「だって、似ていないから」「そうね、あんまり似ていないわねー。うふふっ」そんなやり取りを何度かしていた。
 
私が子供の頃、父の木工職人としての仕事は厳しく、決して裕福とは言えない家庭だった。それでも、それを理由に、辛いとか、淋しいとかいう想いをしたことはなく、山川に囲まれた環境で、とっても豊かな時間を過ごしていた。母の努力と工夫があったからだと想う。
 
保育園の頃来ていたパジャマは、母の手作りだった。ズボンのオヘソの辺りに、三つ編みの女の子の刺繍を入れてくれていた。可愛くて、大好きで、ぼろぼろになるまで着続けていた。
週末には、母と姉弟とパン焼きをした。「カメさんパン」の少し首が斜めの感じ、焼きあがる前の香ばしいかほり、素朴な味まで、最高にあったかな思い出だ。
 
小学校の入学し、1年生の頃、好きだった男の子から「足長ノッポ♪ 足長ノッポ♪」とリズムよくからかわれて、家に帰り、落ち込んでいると「短足チビさん! と言ってあげたらよかったのにー!」と笑わせてくれた。「背が高くて、足が長いなんて、とっても素敵だものー。きっと羨ましかったのよ」そんな風に言ってくれた。
 
中学校で英語にハマってしまい、学べる学校をと片道2時間かけて通った高校時代。何を血迷ったか、バスケ部に入部してしまった。朝6時に家を出て、朝練に。放課後の練習が延びると、最寄りバス停までの終バスには間に合わず、30分の峠越えをしなければならなかった。いつ、クマやイノシシが出てもおかしくない獣道だ。父は「自分の選んだことだ。最後まで自分の力でやり切れ」と至極真っ当なことを言っていた。母が私を車で迎えに来ると、父の機嫌はぐっと悪くなってしまうのだが、冬の寒い日や、雨の日には、出来るだけ、こっそり迎えに来てくれた。
 
奨学金をいただきながら通った大学時代は、母に本当に頭が上がらない。
色々とあり、この時期は父と別々に暮らしていたのだ。姉、弟、それから私もバイトはしていたが、家計を守ることは、母にとって大きな苦労があったはずだ。
それでも「母はねー、仙人のような生活がしっくりくるのよー。びっくりするくらい物欲がないんだから!」と笑っていてくれた。
 
裕福でなくても、忙しくても、食事は手作り、そして、その味はどれも素朴な味付けで、美味しかった。
 
就職で実家の埼玉を離れて、福岡で2回目の誕生日。母からバースデーカードが届いた。「Push」と書かれたボタンを押すと「Happy Birthday to you♪」のメロディーが流れた。聴きながら「たまには甘えてくださいね」の言葉に、涙が止まらなかった。
 
 
母の優しさに包まれて、今の私がある。
 
 
食事は手作りを大切に、心を込めての手仕事は習い始めて10年ほどになった。
今、こうして文章を書いているのも、母の綴った言葉に触れてきたからかもしれない。
 
数週間前、実家から保育園卒園の時の文集「あしあと」を、持ち帰った。
 
「春の日に(台へ)」という題で、母が書いた文章が、大好きで、父に探し出して貰ったのだ。
 
「春の風は優しくて
まだひんやりと冷たいというのに
あなたのまっ赤なほっぺたをくすぐる
春の生命のきざしよりも
たしかで たくましく
あなたの歩み。」で始まり。
 
「こっちを向いてごらん」で終わる。
 
振り向くと、いつも母が見守ってくれている。その安心感が、私の背中を押し続けてくれている。
 
何と、素敵な人なのだろう。
 
数年前、「持って生まれたお顔を生かしたメイクレッスン」を受けた。
「平田さんは、自然な眉の方が似合いますよー。ちょっと伸ばしてみてください」と言われて、勇気を出して暫く放置し、少しボサボサにしてみた。
そして鏡を見たとたん、「あっ! お母さんにそっくりだー」と思わずニヤニヤしている自分がいた。
 
そう言えば、電話で母に間違えられたこともある。
 
私は間違いなく母の娘である。そう確信している。
 
声や眉だけでなく、たくさんのかけがえのないものを受け継がせて貰っているのだ。
 
こんなことを言葉にするのは、少し恥ずかしいのだが、心から尊敬する母に一歩でも近づきたい。
今も、そう思っている。
 
そろそろ素敵なパートナーでも紹介して、安心して貰いたいな。と思う今日この頃。
 
実現きるように……やはり、人として、女性として、素敵な母に近づく努力を重ねていこう!
 
母の日に、立てた誓いだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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