メディアグランプリ

ジャスミンティーを買うのにこんなにためらう日がくるなんて思わなかった


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松下広美(ライティング・ゼミNEO)
 
 
緑茶、ほうじ茶、水、烏龍茶……。
 
コンビニの冷蔵庫の前で、考える。その時間3秒。
いや、そもそも考えていないかもしれない。
冷蔵庫の前に立つ前に買う飲み物は決まっていて、通り過ぎる数秒の間に冷蔵庫を開けて、ペットボトルの飲み物を取り出す。
今、飲みたいものを手に取ればいいだけなんだ。
そんなところに考える力を使いたくない。
 
なのに、私はかれこれ数分、立っていた。
いつもなら、すでにレジも通過して、コンビニを出てしまえるくらいの間、冷蔵庫の前で考えていた。
違う。考えてもいない。
買おうと思っていたものは決まっていた。
このあと、朝ごはん代わりに手に取ろうと思っていた、おにぎりを迷うならまだわかる。
おにぎりは新作がよく出てくるし、限定品も多い。朝だと、買おうと思っていた具材が売り切れてしまっていることもあるし、2つ買うときはその組み合わせでも迷う。
お高めおにぎりの鮭を選んだのだったら、もうひとつは梅とシンプルにいこうかと思うし、納豆巻きに合わせるんだったら、ちょっとこってりめの具材でもいいかなと思う。
 
だけど、飲み物なんだ。
もちろん、飲み物だって新作は出るけれど、あまり飲み物で冒険をしたくはない。
しかも、もう買おうと思っているものはあって、それをじっと見ているのだけど手が伸びないのだ。
うーん、と声には出さないけれど、唸っていると邪魔そうに他のお客さんが冷蔵庫に手を伸ばす。
「すいません」と、ちょっと後ずさりをしながら、もう一度、買おうと思っている飲み物を見つめる。
 
こんなにためらってしまう理由はわかっていた。
数日前に読んだ、あの本のせいだ。
 
今日は、ジャスミンティーを買おうと思っていた。
水か緑茶、ほうじ茶、そしてジャスミンティー。定番で安定のラインナップ。
「またジャスミン茶飲んでるの? 好きだねえ」
と、母親から言われるくらいは飲んでいる。
 
しばらくためらった後、結局ジャスミンティーを買った。
 
ジャスミンティーを買うのをためらってしまう原因をつくった本の中では、「ジャスミンティー」がかなり重要で効果的なアイテムとして書かれていた。
 
最初に「ジャスミンティー」が登場したときは、コーヒーではなくジャスミンティーを飲む女の子というのを表したいのかと思った。勝手な想像ではあるけれど、そのお女の子は、旅行の行き先を選ぶなら、ハワイやグアムではなくて、タイヤベトナムを選びそうだし、イケメンよりは性格が良さそうな男子を彼氏にしそうなイメージを抱いていた。
視点も、そのジャスミンティーを飲む女の子が好きな男子大学生の視点だった。ただの恋愛小説として物語が進んでいくんだと、そう思っていた。
 
ただ、読み進めていくと、急に暗転した。
決して読んでいた部屋が暗くなったわけではなく、演劇の舞台で、場面を切り替えるときに使う暗転が起こったような錯覚を起こした。
これから話が展開すると思った瞬間に、バシッと音がして暗転し、スポットライトがポンと当たるような、それくらい急な場面切り替えだった。
 
今になって思ってみると、既にこの時点で騙されてたんだよな、と笑ってしまう。
 
確かに、ジャスミンティーはその物語の中で、喉に引っかかった小骨のような違和感があった。なんで、そんなにジャスミンティーが強調されるんだろうと。
「マジかー」
ジャスミンティーが重要アイテムだったと気付いた、その瞬間、思わず叫んでしまった。どこでそんなことになった!? と、パラパラと前に戻って確認する。
キリのいいところで、読むのはやめて寝ようかと思っていたのに、先が気になって寝られなくなってしまった。
いや、なんで? そうなる? えー、そういうことだったの?
声に出していたかも覚えていないけど、話の展開を理解するのに頭がフル回転して、振り落とされないようについていくのに必死だった。
読み終わった、深夜3時。
ふう、と一息ついてページを閉じる。
 
そんな体験をした後だったから、ジャスミンティーが気になって仕方がないのだ。
元々好きで飲んでいたけれど、そのまま好きでいていいのか、もしかしてこれを飲み続けることで、その本の中に出てきた人と同じ運命をたどってしまうんではないかと、おかしな思考回路になった。だから、ジャスミンティーを目の前に数分立ち止まってしまうような行動をしてしまったのかと、思い返す。
 
 
「久々に一気読みしちゃったよ」
同僚は、私より前にこの本を読んで、こう言っていた。
そんな同僚ならわかってくれるかと
「課題本を読んでから、ジャスミンティーを買うときにちょっと意識してしまう 笑」
と、伝えてみた。
「わかります 笑」
そう返ってきた。
 
次の日曜日の、課題本読書会が楽しみで仕方がない。
私はジャスミンティーのペットボトルを握りしめて、聞いていると思う。
 
 
 
 
『六人の嘘つきな大学生』 著:朝倉秋成
***
 
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2022-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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