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車の運転は、人としての生き方を学ばせてくれる ~ペーパードライバー講習を受けて~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:清野千聖(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「自分がされて嫌なことは人にしない」
そんな当たり前のことができる人は世の中にどれくらいいるだろうか?
 
30年以上前、大学時代に普通自動車運転免許を取得した。
大学卒業後は東京都内をはじめ、交通の便が良い地域で働いていたため、車の運転をする必要がなく、いわゆるペーパードライバーだった。
結婚を機に田舎に住み、車が必要だったが、夫の運転する車で移動すればよいと思い運転を避けていた。
ところが、0歳の息子を遺し、夫は亡くなってしまった。
一家の大黒柱として、息子の通院や保育園の送り迎えに車を運転したほうが良い。でも、運転には全く自信がない……。
知人から個人的に運転の練習をさせてくれる話をいただいたが、やはり、ここはプロに任せた方が安心である。
車を購入する前に、まず、自動車教習所でペーパードライバー講習を受けよう!
 
早速、0歳の息子を実家に預け、自宅近くから送迎バスがある自動車教習所を探して訪ねた。
受付で事情を説明したところ、1回1時間程度の有料のペーパードライバー講習を受けられることになった。運転に自信がつくまで講習を受けて良いと言われ、迷わず申し込みをした。
 
路上に出る前に、場内をゆっくり運転したり、車庫入れの練習をしたりして、運転に慣れることから始まった。
10年以上も運転していなかったため、運転の感覚がつかめず、不安と戸惑いの連続で、講習は心身ともに疲れ果てた。
でも、教習所にいるときは、泣き止まない赤ちゃんと離れることができ、育児ノイローゼのようなものから少し解放された。
徐々に慣れていき、問題なく運転できるようになっていく……。
教官から路上に出ても良いと言われ、3回目からの講習は路上での練習となった。
 
「自信を持って運転してください。危ない時は、教習車の助手席側のブレーキを踏みますから、安心してください」
教官に言われ、ほっとしながらも、私は教習車でおそるおそる路上に出た。
 
順調に、運転できていると思っていたある日のこと。
「ちょっと、今の運転はまずいよ。止めるよ」
教官が助手席でブレーキをかけた。
路地から広い通りに出るときに、強引に割り込もうとしたらしい。
気を付けていたつもりだったが、慣れは怖いものだ。
さらに、車線変更のときに、方向指示器を出すのが遅く、後続の車に衝突されそうだったと注意を受けた。
講習の途中、教官から路肩に止めるように指示され、車を移動し、指導を受ける。
「今回は教習車だから他の車も気を遣ってくれたけど、今後、あなたが買った車で路上を運転していたら、誰も気を遣ってくれませんよ。自分がされて嫌なことは、人にしないほうがいいですよ。普段の生活でも同じことあるよね? お互い嫌な気持ちにならないようにしようよ」
その言葉は、私の心に強く響き、ハッとさせられた。
 
順調に講習は進み、ペーパードライバー講習は10回で終了した。
小回りが利く小型車を購入し、運転することが、田舎暮らしのシングルマザーの私が胸を張って生きていく支えの一つになった。
 
あの時の教官の言葉を思い出す。
「自分がされて嫌なことは、人にはしないこと」
人生を振り返ると、自分がされたらきっと嫌なのに、人にしてきた言動が少なからずあったと思う。
車の運転中だけでなく、人とのコミュニケーションでも、自分の言動に気を付けることができるようになった。
何か言葉を発するときには、「相手にこの言葉を使って大丈夫か」とワンクッション置いて、考えられるようになった。
もし、自分が言われたら、自分がされたら……相手のことを思いやる気持ちが大切であることを、自動車教習所の教官から改めて教わった。
 
運転して20年経つが、今のところ、大きな事故や交通違反はなく、優良運転者の証であるゴールド免許である。
当たり前だが、車の運転中は、無理な割り込みや急な車線変更、急ブレーキをしないように常に気を付けている。やはり、相手に同じことをされたら不快な気持ちになり、交通事故の引き金にもなり兼ねない。
猛スピードで追い越ししたり、むやみにクラクションを鳴らしたりしたことはない。
車の運転をすると人格が変わる人がいるそうだ。短気やせっかちな人の助手席に座るとイライラ感が伝わり、ヒヤッとすることがあるが、私は違う。
今、平穏無事に車の運転ができているのは、ペーパードライバー講習の教官の言葉のおかげにほかならない。
 
ペーパードライバー講習を受けて、車の運転が出来るようになったという技術だけでなく、人としての生き方を学ばせてくれたことに感謝しながら、運転席で車のハンドルを握る。
 
 
 
 
***
 
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2022-05-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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