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生き方を学んだ万年筆の持ち方


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤知子(ライティング・ゼミ2月コース)
 
 
「万年筆を持つ手首は柔らかく、自由に動かせるようにしておくといいよ。適当に遊ばせることで、いい線が描けるよ」
万年筆クロッキー講座の先生の言葉に、心がほぐれていくのがわかった。
 
フェイスブックで講座の案内を見て、学生時代、料理番組のレシピをメモ帳にイラストで描き込んでいたのを思い出した。これがグレードアップできれば、いろんな場面で使えて楽しいだろうなと思い、申し込んだ。
そもそもクロッキーとは、素早く簡潔に描写することをいうようだ。
初めて絵の描き方を学ぶので、うまく描けるだろうかと不安だった。でも先生は、最初から最後まで、きちんと描くことではなく、線で楽しく遊ぶことを勧めていた。線の歪みや変化は、個性であり人間らしさだ、と伝えていた。つまり、心を自由にして楽しんでいいということだと解釈した。
 
しかも、モチーフを正確に捉えて描くのではなく、押さえるところを押さえれば、あとは感覚的に描いた方がおもしろい絵が描ける、ということには驚いた。
はみ出て滲んだ線が認めてもらえる。おもしろいと受け入れてもらえる。
固定概念を捨てて羽ばたこう、そんな気分なっていった。カウンセリングを受けたような時間だった。
 
まず、先生がポットの絵を描きながら説明して下さった。
最初に、だいたいどの位置に描くか、軽く鉛筆で輪郭を形どり、それから万年筆を使って、ささっと描いていく。その時、万年筆は、なるべく下の方を持ち、手首の力を抜いてくねくねと動かすことが、自由な線を生み出すポイントのようだ。
 
まず自由に線を引いてみようということになるが、万年筆というものを初めて使ったためか、線すらうまく書けない。だが、やっているうちに、手首くねくねの感覚にも慣れてきて、それなりに線は描けるようになった。
 
次の段階として、奥行きの出し方を教わった。
モチーフを真上から見るか側面から見るかで、見え方がまるで違ってくる。
私が用意したのは、マグカップ。
上から見ると底の方まで見えるが、手びねりの2本ある取っ手は、隙間が出来て描くのが難しい角度になる。横から見ると平坦なマグカップに見える。
面白さも描きやすさも、ちょっとのアングルの差でこんなにも違うことに気付いた。
 
先生は相変わらず、真面目に描くよりも、楽しい気持ちを共有して、それが伝わることを楽しむのが大事、と語っている。
日々萎縮したりストレスが溜まる世の中だけれど、絵をとおして皆を喜ばせ、いかに楽しませるかなのだ。笑顔や笑いが生まれることが大事。気持ちが落ち着かなくて描けない時には、ワインとチーズのセットでも用意して、いい気分の時に描くといい絵が描ける、と。
 
そういう生き方を忘れてはいけない。
これは、絵の勉強でもあるが、生き方の学びでもある、そう思った。
 
同時に、数日前、仕事で会ったMさんから聞いた言葉を思い出した。
Mさんは高齢者だ。Mさんの友人Yさんは、Mさんにとって絶対友達になりたくない、と思うタイプだった。地域のサロンで会うと、Yさんは大変な情報通で、近所のことを何でも知っている。だからあまり近づかないでおこう、と思っていたそうだ。
そんな中、畑の手伝いを求めている近所の人へ、Yさんを紹介することになった。それを機に一緒に働いたり、温泉に入ったりするようになった。すると、Mさんは彼女の面倒見の良さが見えるようになってきた。それだけ人に好かれていて、関わる人も多いから情報が集まるのだと気が付いた。別の面が見えたというのだ。だから人を一方向からばかり見てはいけない、と語ってくれた。
 
苦手な人と思ってしまうと、嫌な面ばかりが見えてしまい、それが全てだと思ってしまう。
だけど、一緒にいろんなことをして過ごしすうちに、その人の人間らしさや全く別の面が見えてくる。これは、万年筆クロッキー講座で言えば、万年筆を持つ手首を柔らかく、あそびをもちながら動かすということにつながる。そして生まれる味のある線は、新たな世界を見せてくれる。あそびを持つということは、他の可能性を受け入れるゆとりがある、ということだ。
さらに、アングルを変えることで、難しいことが描きやすくなったりする。見えていなかったことが見えるようになったり、物事が違って見えるようになる。
 
形には方向性がある。形があるから影がある、形をしっかり見ることで、影の付け方がわかってくる。
これは人づき合いでも同じことが言えると思った。人にはそれぞれ性格や考え方の方向性があり、逆らえば違和感が生じ、見過ごせば面白みに気が付かなくなる。
このことを知っているかどうかで、絵の上達と生き方が違ってくると感じた。
 
万年筆でクロッキーを描きながら、そんなことを考え気分良く1枚仕上げた。写真を送り、先生に見ていただいた。
「どっしりとしていますね。ほどよく線が暴れていていいでしょう」とフィードバックをいただいた。心が解放されたから、堂々と描いたんだな、私。
ちょっと恥ずかしいようなうれしさだった。
 
物事を楽しむにはあそびが必要。こうでなければならないというのはない。自分がこうしたいからしたいのだ。楽しんで、いい時間を過ごすのが大事。
 
生き方の教えがちりばめられた、先生の万年筆クロッキー講座を受講してよかった。
10枚描いて、選りすぐりの課題の3枚を提出したいと思う。
 
 
 
 
***
 
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