メディアグランプリ

タワマン街にあるライブハウスの様な肉屋。はたしてその味は?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:森本裕子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「最近、食べたいものある?」
そろそろ梅雨の気配がしてきた今の季節に、夫とこの会話をしているとしょっちゅう出てくるのが「にく!」……分かってる、分かってたよ。じゃあ、あそこに行くしかない。汗が滲むムンッとした暑さと、七分袖から出た腕にあたる雨の冷たさが、予期せず交互にやってくる鬱陶しい季節を乗り切るなら、あそこがいい。
 
場所は、東京都中央区勝どき。
隅田川沿いに建ち並ぶ、タワーマンション群の間に、その一軒の肉屋は現れた。無機質に洗練されたタワマン街に似つかわしくない、金赤でハッキリと主張している看板を見ると、少し心拍数が上がる。
 
そして、吸い込まれる様に中に入っていく。
 
入口を通ってすぐ左を向くと、最初に茶色くトゲトゲしい肉惣菜一同が出迎えてくれる。いきなり胃をつかまれ食欲を刺激する光景がそこには広がっている。
 
チャーシュー、コロッケ、メンチカツ、
カレー、からあげ、ハンバーグ。
 
肉惣菜たちの、茶色光りした照りと艶、ザクザク尖った揚げ衣、香ばしい焼き目。惣菜パックの奥にガラス張りで見えている厨房の中で、煮る焼く揚げると手を加えられる事で、絵ヂカラがMAXになっている。
 
これぞ、最強のオープニングアクト。気持ちが盛り上がってきた。
 
「最初っからパンチ効いてるなー」
とりあえず衝動的にハムカツをカゴに入れ、見るからにトロトロになった豚足に釘付けになる。
 
息つく間もなく右に目を向けると、見慣れないレアな面々がアピールしている。
 
ハチノス、ハツ、センマイ、
コブクロ、レバ、ツラミ。
 
<希少価値品>というラベルが、発砲トレイにかかったラップの上に貼ってあり、お互いの希少で独特な形状と色合いをアピールし合う様に並んでいる。一体どんな味わいなんだろう。どんな歯ごたえなんだろう。口に入れてみたい衝動が湧き上がる。
 
「これはここでしか買えないヤツ。どうしよう?」
どれをカゴに入れようか、どうやって食べようか、思い巡らせながら一旦先に進む。
 
そして店の最奥まで足を進めると、そこはメインステージ、本日の目的牛肉様々の登場である。
 
タン、ロース、カルビ、ハラミ、
サガリ、モモ、ヒレ、サーロイン。
 
理屈抜きで新鮮さを物語る鮮明な赤色の牛肉が、とにかく目に眩しい。そして目に入るのは金色で縁取られた<宮崎牛>の文字。<日本一に輝いた上質なブランド牛>というキャッチコピーが、食べる前から美味しさの証明をしてくれている。さらに奥に見えるのは銀色に光るスライサーと、その傍らでテキパキと宮崎牛をスライスしてパック詰めする、真っ白い制服を着たスタッフの人達。
 
「やっぱり主役が光り輝くのは、スタッフの丁寧な手仕事あってこそなんだよね」
今晩の焼肉にピッタリの花咲カルビとハラミサガリを量ってもらって、カゴに入れる。
 
「勝ち確だ……」
牛肉を手に入れ、今晩の焼肉を想像して気分が高揚していると、さらに豚肉が追い打ちをかけてくる。
 
そこは一転、やさしいピンク色の世界。見るからに柔らかく旨味を感じる肉質の豚肉が誘っている。
「まぁ今日は食べないんだけど、これは冷凍庫に入れておこうっと」
切り落としとバラ肉をカゴに追加する。
 
前を見ると、レジが見えている。そこでくるりと引き返し、終わりを惜しむ様にもう一度店内をアンコールで巡りだす。
 
……気が付くと、私が手に持ったカゴの中は、茶色と赤とピンクの美しい肉の数々で賑わっていた。
 
レジを通って終演。
 
肉屋の出口から出てきた人達はみんな、まるでライブ帰りに身体から湯気が立ち上っているかの様な、高揚と爽快に満ち溢れた顔をしている。手にはエコバッグ、中には戦利品。もちろん私もその一人。梅雨入り前の鬱陶しい季節を忘れてしまった様に、ホクホクとした表情で家路へ向かっている。
 
多分この肉屋は、肉を販売しているだけではないのだ。最高のパフォーマンスが繰り広げられる店内を見ていると、段々と目の前のアーティストにのめり込んでいき、そして普段の自分が解放され気分がアガッていく……そんな熱のこもったライブハウス的空間なのだと、私は思っている。
 
最後に、この肉屋ができた実際の背景についても伝えておきたい。
 
東京都中央区勝どきにあるこの肉屋は、ここ数年間の外食需要の減少が原因で、生産者さんが厳しい状況にある中、宮崎牛の魅力をより多くの人に知ってもらい、家庭の食卓で楽しんでほしいという主旨で、2021年開店したそうだ。宮崎牛は一頭買いで加工から販売まで行っているので、ブランド牛なのにお手頃価格で手に入れる事ができる。
 
さぁて、そろそろいただきますか。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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