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メディアグランプリ

進撃の友人~持つべきものは歳の差の友


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:奥志のぶ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
若い頃、自分が歳をとるということがまるで想像できなかった。毎日でも焼き肉が食べたいと思っていたし、朝まで飲んでも平気。母が揚げ物を好まないのも新聞の字が読めないのも不思議だった。それなのに私も順調に若さを消費して、なってしまった。そういうお年頃に。食事をしては胸やけ、お酒にもめっきり弱くなった。徹夜なんかできないし、好きな読書からも遠ざかってしまうほど視力の低下はいまいましい。
昔、ネットがない時代、世界はまだ小さかった。流行りのモノや新しいモノ、全てを把握していた。知らないことなんてなかった。しかし現在はどうだろう。とてもついていけない。新しい機能や知らないコンテンツに触れるたび、自分が歳をとったことを痛感する。それは、 肉体的な衰えよりも寂しいものだ。
 
私には、娘のような年頃の友人がいる。どうにかこうにかSNSを使いこなして知り合った、本来なら接点のないはずの人。好きなドラマがきっかけでフォローし合い、オフ会を開くことになった。初めての経験だ。10人の参加者が集まった。たぶん皆お嬢さん。SNSだけの付き合いなら歳は関係ない。だが、リアルに顔を合わせるとなると気が引けた。最年長の自信はある。私だけ浮くんじゃないか? だけど…… やってみたい。歳をとると臆病になるが、逆に「やり残したくない」という痛烈な思いに突き動かされることもある。私は勇気を出して飛び込んでみた。
いま、あのとき勇気を出した自分を褒めてやりたいと思う。10人の友情は続いているのだ。ドライブしたりお泊りしたり、長年の友人のような親密さだ。たしかに私は最年長だが、それを気にしていたことがバカバカしく思えるほど自然な付き合いができている。この関係は奇跡だ。私にはそう思える。
 
20代のころ、勤めていた職場では先輩後輩の仲が良く、休日にはよく皆で遊びにいった。その中に年上の女性がいた。優しくてユーモアがあって大好きだった。関係は良好だったが誘うのはいつも私の方。なにかを企画し、やろう、やろうと声を上げるのはいつも若手だ。その女性が自ら発信することはなかった。そして、必ず誘いを断るのだ。嫌なわけではなくて遠慮しているようだった。何度も誘って参加してもらっていたが本当は迷惑だったのだろうか。彼女はいつも「アタシ年寄りだから」と自虐ネタで笑わせてくれた。そのセリフをどんな気持ちで言っていたのだろうか。
 
若い友人たちを前にしてどう振る舞えばいいのか、はじめは考えていた。ただ、無理して若ぶるのは嫌だった。素の私でいこう。後でわかったことだが皆も同じだったらしい。誰もが初めてのオフ会。もし居心地が悪ければそれまでにしようと。結果、皆が力を抜いての付き合いになり、それが功を奏した。それからというもの、お互いにいい意味で遠慮がなくなった。私が自ら動くことはない。いつも誰かのおぜん立てに乗っかるだけ。企画もリサーチもリザーブも。いいのだ、それで。そういうことさえも若者は楽しんでいる。私も昔はそうだったのだ。速やかに世代交代をし、彼らの若さと元気を発揮させてやろうではないか。お泊り会でも私は自分の役割以上のことはやらない。なにごとも若手に任せておけばいい。とうてい私には思いもよらない企画で盛り上げてくれるから。その勢いたるや、まさに進撃するがごとし。レンタルルームにタコ焼き器を持ち込んでの盛大なタコパ。私の世代だったら絶対やらない。作るのも片づけるのも面倒くさい。でも、それを含めてのワイワイキャッキャが楽しいのだ。そもそも私はレンタルルームで遊ぶなんてこと知らなかったよ。映画を見るための接続も丸投げ。もともと得意じゃないし。え? ファイヤースティック? なにそれおいしいの? 危険なものじゃないでしょうね? 世の中は知らないことばかりだ。
 
とはいえ、若い仲間たちに誘われるたびに思うことがある。楽しく過ごしている最中に頭の片隅が醒めている時がある。それは、この時間は長く続かないだろうという予感。歳の差がありすぎる。いつまでも友達でいられない。いつかはお別れしなければ……。そう考えると胸が苦しい。このメンバーなら何年たっても変わらないという信頼と、本当は私のようなオバサンはお荷物なんじゃないかという疑念。悩むくらいなら早く離れてしまった方が楽になれるのではないか……?
ハッとした。私が若いころ、親友だと思っていたあの年上の女性もきっと同じことを思っていたのだ。いま、まさに、彼女の気持ちが理解できる。生々しく、自分自身のリアルとして。
 
全てを把握していると思っていた若かりしときは過ぎ去り、いまは若者を眩しく見つめる。なんて美しい光を放っているんだろう。彼らはそれを知らない。だけど、それは確かに私を照らしている。娘のような友人たちは可愛くてたまらないし、私の新しい知恵の泉でもある。あれこれ思い悩むのはやめて、この友情を大切にしていこうと決めた。年長者として私は彼女たちになにをあげられるだろうか。なにもない気がするし、たくさんあるのではないかとも思う。遠い未来、彼女たちが若い友人をもったときに、私のことを思い出してくれたらうれしい。そして、若かった私に友人として接してくれた年長者たちに感謝の気持ちをここに記しておきたい。
 
若い友人たちとの付き合いはもう5年になった。メンバーのひとりが出産し、とうとう私は孫までもった気分だ。本当に、持つべきものは歳の差の友。グループラインは盛大なお祝いモードだ。その勢いが進撃している。おっと、私も出陣だ。奇跡の出会いに感謝をこめて、私は進撃の友人の最後尾についていく。ゆっくりと、でも、しっかりと。
 
 
 
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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