メディアグランプリ

「自分のことが分からない」を抜け出せたのはランチのおかげだった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小川直美(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
自分の頭で考えず、
自分の言葉で話さず、
自分の気持ちを抑え込んだ。
 
あの頃の私は、一体”誰”だったのか。
 
 
 
割と最近まで、私は自分の気持ちが分からなかった。
 
理由は色々あるのだけれど、最も大きな原因は閉鎖的な小学校時代にある。
小学校入学後すぐに仲良くなったお友達が、支配的なタイプだった。
その子と同じでないと、「変(へん)!」の一言で切り捨てられ、仲間外れにされた。
 
小学生にとって、小学校は良くも悪くも社会の全てである。。
仲間外れになりたくなければ、従うほかない。
そんな恐怖の統制に屈し、私は自分の気持ちを無視して、彼女に従うようになった。
 
それは実は楽なことでもあった。
食べたいお菓子も、文房具のキャラクターも、「〇〇ちゃんと同じ!」ものを選んだ。
 
わたしのなかの、気持ちを感じる神経は、細くなり、次第に見えなくなった。
 
 
気持ちが分からない。とはどういうことか。
 
気持ちをきかれると、はて? と止まってしまう。
私は何を感じているのか、と頭が考えはじめる。
それは思考であって、感情ではない。ということも分からなかった。
 
当然、感想文や作文が苦手だった。
出来事しか並べられない。楽しかった以外の言葉が出てこない。
それもそのはず。
だって、何を感じているのかが分からないのだから、書けるはずもない。
 
 
自由にしていい、好きなものを選んでいいと言われるのが一番困った。
自分が何を好きなのか分からない。
誰かに決めてほしかった。
制限がないと動けなくなっていた。
 
 
進学した大学は、とても自由だった。
私は大いに困った。
選べない。選ぶ基準が私の中にない。
 
出会った友人たちは、好きなことや目指すものをはっきり持っている人が多かった。
私には私が分からなかった。
 
 
その上、嘘をつけない性分なので、就職活動にはとても苦労した。
業界が選べない。何をやりたいのかが分からない。
 
目の前のことに一生懸命取り組む。
その特長だけを握りしめて、なんとか会社員になった。
 
 
30歳を過ぎたころだった。
私が自分の気持ちを感じられるようになったきっかけは、1冊の本だった。
近藤麻理恵こと、こんまりの「人生がときめく片づけの魔法」
 
ものに触れ、自分の心がときめいているかどうかで判断する。
私が失って久しい感覚だった。
 
やってみようにも、自分自身の心の声はあまりに小さく、聞き取るのに骨が折れた。
 
こんまりメソッドに着想を得て、リハビリのように取り組みだしたことがある。
それは、「ランチに何を食べたいか」を、からだに問うこと。
 
幸い、おいしいものは大好きだった。
でも、それまでは、食事もすべて頭が選んでいた。
 
「仕事が忙しいから、片手で食べられるものがいい」
「昨日はおにぎりだったから、今日はサンドイッチにしよう」
手っ取り早く、最寄りのコンビニに行く。
棚に並んでいるものから、カロリー表示と価格を見て選ぶ。
野菜が足りてないから野菜ジュースを足す。
パソコンを見ながら、飲み込むように食べる。
 
食べることも機能性重視。
情緒的価値などなかった。
 
そして、それは内側を摩耗させていた。
 
食事の選び方を変えた。
何が食べたいか、からだに問う。
胃がつかれていないか。
さっぱりしたものがいいのか。
あたたかい汁物を飲みたいのか。
ちょっと力をつけたいのか。
 
そうして選んだ食事を大切に食べることにした。
 
食べるのが早い私の、1回の食事は20分にも満たない。
多くとも1日3回の、貴重な食べるための時間。
そのわずかな時間を惜しむように、ケータイを見るのはやめることにした。
 
からだの声を聴いて選んだ食事。
手を付ける前に、まず眺める。全体の彩りや野菜のつやを見る。
次に、においをかぐ。
だしやソースの香りが、体の中に広がって、浸透していく。
そして、手を合わせる。
「いただきます」
一口目を口に運ぶ。
 
これだけのこと。
たった15秒の習慣。
 
だけど、これだけのことが五感をよみがえらせる。
 
 
私は今、何を感じているか。
からだと心の声は、次第にはっきりとしたものに変わっていった。
 
快か不快か。
ざっくりとした大くくりから
より詳細に自分の好みが分かるようになった。
 
そこから、
洋服選びが変わった。
買い物の基準が変わった。
時間の使い方が変わった。
最後には仕事も住む場所も変えてしまった。
 
消費するだけでなく、自分も生み出したいと思うようになった。
今やっと、少しずつではあるけど、自分の人生が始まっている予感がある。
 
 
今、自分が分からなくなっている人が、もしいるなら
まずは、ランチ選びからはじめてみませんか?
 
 
 
 
***
 
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2022-06-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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