メディアグランプリ

子の無い人生を選ぶことにした


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:よしかたよしこ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
子の無い人生を選ぶことにした。
 
そう言えるようになるまで、時間がかかった。
 
友達4人で温泉旅行に行った時のことだ。
私以外の3人は、皆子連れでの旅行だった。
こういう状況はもう数年前から慣れている。ホームパーティや飲み会には、赤ちゃんや幼児が一緒のことが増えた。
 
その日その温泉旅館は満室だった。朝食は部屋での提供だ。指定した時間に仲居さんが準備に訪れる。忙しく時間に追われているのが見てとれた。子供はまだ眠くてグズり布団から出れていなかったが、仲居さんはお構いなしにテキパキと朝食の準備をしていく。
仲居さんが出て行くと友達のひとりが憤慨して言った。
「なにあの態度。あの人子供いないんじゃないの?」
 
ドキッとした。
自分に言われているような気がした。
 
もちろん、そんなことないことはわかっている。15年以上の付き合いだ。その子の怒りの沸点が低いのも知っている。
ドキッとしたのは自分に負い目があったからだ。
子供がいないということに。
 
私は婚期が遅かった。まわりの友達が続々結婚し子供を産んでいる中、独身生活を満喫していた。
大した焦りを感じずにいたのは、子供を作る気があまりなかったからだ。
女性の多くが結婚を急ぐのは、出産のタイムリミットを意識しているのが大きいだろう。
30を過ぎるとまわりは皆焦り出す。それまで続いていた既婚者との不倫関係を解消し、その後あっさりスピード婚をした友達。旦那はいらない、子供だけでいいから欲しいとアプリで好条件の相手を探す友達。高いお金を払い卵子凍結をする友達。
ウンウン、と悩みを聞きながら、そこまで共感できていない自分に気づいていた。
誰かが赤ちゃんを産むと会いに行く。かわいいね~と言いながら、実ハソンナニ子供ガスキジャナイ。そんな自分に気づいていた。
それを気づかれないようにと、生きていた。
 
日本は少子化が問題になっている。子供が欲しくてもできずに苦しみ、不妊治療を続ける友達も何人もいる。育児の分担や育児と仕事との両立との問題は、女性の間でいつも議論の中心となる話題だ。そんな中、「私は子供いらない」それは言ってはいけないような気がしていた。
一方で、「子供を持って初めて知った幸せ」「子供を持つことで進めた次のステージ」そういった感動が友達の間で話題になる時、SNSで流れてくる時、少し傷ついている自分もいた。
 
そんな私が結婚することにしたのは、バツイチの人だった。離婚した奥さんの方に子供がいた。
子供は作らず2人で暮らす。その方針は一致していた。でも周りの友達に結婚の報告をすると同時に、なぜか言い訳めいたことを言ってしまっている自分がいた。
「前の奥さんの方に子供がいるし、子供はもういいと思ってるんだよね」
 
すると皆フォローするように言ってくれた。
「えーっ! そんなの気にすることないよ!」
だから私はまた言い訳した。
「いや、もう産むには若くないしさ。相手はもっと年上だし」
「大丈夫大丈夫! この歳ならまだまだだよ!」
「でも相手の仕事的に、産んだら私ワンオペ育児になりそうだし……」
「ちゃんと協力してもらえるように頑張ろう!」
 
 
友達のフォローは尽きない。だから、別の友達には思い切って言ってみた。
「私子供いらないと思ってるんだ」
「えーーーっっ!! 何で!?」
 
もう何も言えなくなってしまった。
きっとこの世の中は「女は子供が欲しくて当たり前」なんだ。そう思わない私は異端なんだ。
 
だけど何か引っかかるものがあった。もうひとりの自分が「おい!」とツッコミを入れている。
それで思い出した。高校生の時だ。進学校だったのに、卒業後進学しないことを選ぶ友達がいた。「えーーーっっ!! 何で!?」進学するのが当然だと思っていた。
そうだ、私もあの時同じようなことをしたじゃないか。
 
人生のいろんな局面で、マジョリティとマイノリティ、どちらの側に立つこともあり得る。
マジョリティ側になった時は無配慮に人を傷つけたくせに、たまたまマイノリティ側になった時、自分だけが特別で傷ついている、といじけて見せるのはちょっと身勝手ではないか自分よ。
 
結婚相手は言った。「2人で楽しく暮らしていきたいな」
同じ気持ちだったのに、私は子供を作らない理由を彼のせいして言い訳した。だから友達は、私にフォローの言葉をかけてくれたのだ。きちんと理由も言わず、選べる未来を雑に放り投げた。だから友達はびっくりしたのだ。
 
それからは、ちゃんと言うようにした。
「2人の夫婦生活を楽しみたいから、子供は作らない予定」
するとみんな言ってくれた。「それもいいね!」
 
子供を持たないことで見ることができない世界も、味わえない感動も、きっとたくさんあるのだろう。だけど、人生は子供がいる・いないの2択ではなく多種多様。一番もったいないのは自分の選んだ人生なのに自分に言い訳をして生きることだ。
 
私は子の無い人生を選ぶことにした。
でもそれは人生の中で選択すべき数ある道の中のひとつを選んだに過ぎない。
私は私の、唯一無二の人生を生きる。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



関連記事