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メディアグランプリ

コロナで見せた覚悟とプライド

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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田 隆志(ライティング・ゼミNEO)
 
 
2020年、新型コロナウイルスの猛威により、世界中が不安と恐怖に駆られており、どんよりとした空気に包まれていた。
 
4月7日、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・兵庫・福岡に緊急事態宣言が発令された。
 
この時、私は4月12日に予定されていた大阪の営業所の移転の前準備と片付けの応援のために大阪にいたのだ
 
オフィスの移転というのは当事者からすれば、革命ともいえる一大イベントだ。単に荷物を運べばよいというものではなく、新事務所の物件選び、新レイアウトの作成、電気・電話・ネットワークなどのインフラ設備の段取りから始まって、オフィス・社員の荷物の整理整頓・箱詰めなどと多岐にわたる一大イベントを後方支援の形で大阪に1週間滞在していた。
 
翌日、本社から通達が流れた。『東京・大阪の事務所を閉鎖し、完全テレワークとする』
 
移転が5日後に迫っていた大阪オフィスの現場は大混乱となった。移転に向けての準備は万全ではなく、急に会社に来るなと言われてもどうすればよいのだろうか?
 
何より、テレワークに向けての準備ができていないまま日常業務をこなさねばならない。
 
こんな時に本社の役員から私の携帯に電話が来た。
 
「お前、こんな時に大阪で何やってんの? 早く帰ってきなさい!!」
 
「いやいや、何をおしゃりますか!! 大阪のオフィスの移転を私に指示したのあなたですよね。」
 
思わず役員に向かって声を荒げてしまったが、私が現場から離れてオフィス移転を進めるのは不可能だ。とはいえ、上層部も未曽有の事態に熟考したうえでの指示だったのだろう。
 
最終的に大阪に留まることはご了承いただき、オフィスサポートの後方支援をしながら、異常事態の中でのオフィス移転は予定通り完了した。
 
「オフィス移転、無事に完了いたしました」と関係者に報告すると、ねぎらいの言葉をかけられながら、先輩からこのように言葉をかけられた。
 
「この大変な異常事態の中、オフィス移転お疲れ様でした。業務が終わったならすぐに帰ってきなさい。間違えても飲み歩いてるんじゃないぞ!!」
 
私が出張に出ているときは、たいがい飲みに出かけておりそれを楽しみにしながら仕事をしている。数年前に会社の先輩と大阪に行ったときには、北新地や新世界で飲み歩いたこともあり、いろいろとやらかしたこともあった。
 
どうりでまた遊んで帰ってくるだろうと思われているわけだ。

 

 

 

緊急事態宣言発令直後、私が大阪のオフィス移転に奮闘していたころ、私の所属している総務部門はかつてないくらいの大混乱となり、オフィス内も異常な雰囲気に包まれていた。
 
何よりもコロナの影響により仕事が全く入らずに、冗談抜きで「うちの会社が倒産するかもしれない」という重苦しいムードとなった。
 
私もコロナの進行による重苦しいムードに押しつぶされそうになっており、日々刻々と変化している状況についていけずに右往左往している毎日でもあった。
 
創業以来かつてないほどのピンチに獅子奮迅の活躍をしていた人物がいた。彼こそが15年以上お世話になってきた2代上の先輩だ。
 
先輩は本社機能を持つ静岡市での総務部門で勤務しており、主に人事と労務関連を主体とし総務部門のリーダーとして活躍し、10年後には管理部門での役員候補との呼び声が高い。一方で私はというと三島の印刷工場での総務部門働いており、同じく総務と情報システム関連を主体として働いている。
 
勤務地こそ違えども、各々の業務で15年にもわたり連携を取りながら仕事を進めてきたのだが、それ以上に一緒に全国の営業所を回りながら、地方の営業所の人と一緒に夜の街に繰り出していた中でもあり、会社からは2人揃うとろくなことをしないとありがたくない評判も耳にしていた。
コロナが深刻化するにつれて、売上が過去最低を記録し青色吐息となっていた会社を救ったのは間違いなく先輩である。
 
私がコロナ禍の変化についていけずにうろたえている中、先輩はコロナ禍での社内ルールをまとめ上げ、各営業所に通達として発信した。
 
また、コロナの影響で売り上げが著しく下がり、休業を余儀なくされた会社には「緊急雇用助成金」という名の補助金が出る制度がある。ただ、国が行う補助金制度というのは何とも複雑怪奇な書類の提出が求められ、決して誰でもできる仕事ではないように思える。
 
圧巻だったのが、先輩が自ら補助金の制度を会社の仕組みに当てはめる、補助金をもらえる手はずを踏むことでコロナの厳しい2年間を乗り越え、見事に会社の立て直すことができた。
 
コロナの補助金申請の業務は決して簡単ではないはずだが、先輩の獅子奮迅の活躍を持って会社のピンチを救ったといってもよい。
 
この時私はいったい何ができたのだろうか?
 
私は目の前の業務こそ一生懸命やってきたつもりでいたが、いざという時に無力であることをまざまざと思い知らされた。

 

 

 

あれから2年後、いまだにコロナに苦しめられているが、世間には人が戻り、会社も一時のピンチを脱し、売り上げも徐々に回復してきた。
 
そんなときに、突然先輩から一本のメールが飛んできた。
 
「今年の8月より退職させていただく運びとなりました。長きにわたりお世話になりました」
 
私はショックで目の前が真っ暗になり、何もかもが手につかなくなっていた。
 
お互い定年までの20年は共に総務部門として盛り立てていく存在であると当たり前のように考えていたが、突然世界が変化したように感じた。
先輩の活躍を走馬灯のように思い浮かべ、コロナ後の獅子奮迅の活躍を思い浮かべながら、やっぱり敵わないなと脱帽しながら涙する。
 
当たり前のようにいた先輩に感謝の意を述べるのは、まだまだ照れ臭いがこの場を持って会社の意を述べたい。
 
「15年間お世話になりました。コロナ禍の獅子奮迅の活躍を忘れません。」
 
8月からは当たり前にいた先輩はもういない。
 
まだ見ぬ変化に立ち向かうべく、今度こそ私が覚悟とプライドを持たなくてはならない。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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