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病める時も健やかなる時も、新入社員は自炊せよ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:内野真紀(ライティング・ゼミNEO)
 
 
4月に入社してから、文字通り日々を生き抜くことに精一杯である。
正直に言わせてもらうと仕事のことを考えてばかりで頭も心もぐちゃぐちゃだ。
(「整理術講座を受講しなさい」と言われそうで恥ずかしいが。)
 
 
「ああ……、こんなに思い詰めてはいけない」
 
 
そう思うとき、私は玉ねぎをいくつか思い浮かべる。
 
その皮をペリペリとむき、頭とおしりの部分を切り落とし、半分に切る。
断面を下にして置いて、薄く薄くスライスし、最後にそれらを刻んでゆく。
 
「細かければ細かいほど良い」ということにして念入りに刻んでゆくのが私のなかでのちょっとしたルールだ。
だから細かく刻む。できるだけ細かく……
 
 
……と言うのを、想像する。
そうしたらいくらか気持ちがマシになるからだ。
 
 
料理は私にとって水泳でいうところの「息継ぎ」のようなものである。
たまには水面から顔を出して、思い切り空気を吸って自分自身を苦しさから解放してあげなくてはならない。
思い詰めて、仕事に溺れてしまわないように。
(一応補足すると、仕事が嫌いと言っているのではない。)
 
 
そう。これは息継ぎ。
なかでも個人的には玉ねぎと私の相性が良い。
シャキシャキと気持ちよく切れてくれる玉ねぎの従順さと、気を抜くとバラバラに崩れてゆくちょっとした難しさが良いのかもしれない。
集中できて楽しいゲームだ。
 
 
ただ、仕事でちょっとうまくいかないからってすぐに玉ねぎを刻めるなんていう都合の良いことはほぼ無いと言うか、完全にないと言って良い。
だから普段はそれを想像するほかないのだが、「玉ねぎを刻んでも良い」という機会が週に一度巡ってくる。
休日だ。
 
 
私は出勤前や退勤後に料理をすることが自分のキャパ的に不可能だと分かったので、休日にまとめて1週間分の料理を作り置きする。
 
材料は前日の仕事帰りに買うことにしており、この日は大きなエコバッグを持っていく。
一人暮らしとはいえ、3食×7日間=21食分の買い物だから、かなりの量の食材を買うことになるのだ。
 
 
もちろん抜かりなく玉ねぎをカゴに入れ、使い勝手の良い挽き肉や卵、ジャガイモ、あとは大好きなかぼちゃとアイスクリームなどもどんどんカゴに入れる。
 
どうでもいいことかもしれないがニンニクや生姜は自分で刻むなり擦るなりした方が美味しいと私は信じているし、何よりその作業が楽しいのだから、私はそれらのチューブを買うなんてことは絶対にしない。
ということで、それらも冷蔵庫からなくなり次第必ず買う。
 
 
そうしてパンパンになったエコバッグを「よいしょ」と抱えて帰るのだが、それを全く負担に感じないのはなぜだろう。
むしろ、ルンルンな気分で帰ると言っても過言ではないくらいなのだ。
 
もしかしたら、本屋でたくさんの本を買って帰る時の幸福感と似ているかもしれない。
「今日からしばらくこれらで生きてゆくのだ」という希望や期待に満ちた幸福感。
 
 
 
冷蔵庫に食材を入れながら「これでキーマカレーでも作ろうか」などと想像すると、「今から一品でも作ってしまいたい」と早まってしまう。
 
しかし、あえてそれはしないことにしている。
料理をするという「ご褒美」を翌朝にセッティングすることで、休日でもサッと起きられてすぐに活動を始められるのだ。
これは私が地味に意識しているライフハック。
 
 
 
翌朝、前日の私の思惑通りにガバッと起き上がり、顔を洗ってすぐに料理を始める。
「なんで休日もちゃんと起きないといけないんだ」とは全く思わない。
なぜだか本当に心地が良いからだ。
 
おそらく料理しているときは余計な雑念を取り払って目の前の作業や「今」という時間に集中することができるのが「心地よい」と感じるのだと思う。
 
 
では仕事中の私の頭の中がどうなっているかというと
「忘れる前にあれをやっとかないとな」
「他にやり忘れているものあった気がするな」
「ああ〜なんでこんなことで手こずっているんだ」
「今、何が起こっているのか全く理解できない……」
という感じ。
 
 
集中しようと思っても気づいたら不安ばかりで意識が散漫になることがある。
 
 
でも、私以外にもまだ業務に慣れていない新入社員という立場の人は同じ状況に陥っているのではないかと思う。
今はどうしても「訳がわからない期間」なのだ。
訳がわかるようになるまで続けるしかない。
 
 
もちろん苦しい。
 
でも。
というか、だからこそ、余裕がない新入社員は自炊をしろ、と私は言いたい。
「こんな自分にはカップ麺でいい」「コンビニ弁当でいい」と言う人には馬鹿野郎と言ってやりたい。
そんな「どうしようもない自分」のために自炊をして欲しいのだ。
 
 
玉ねぎを刻むうちに淡々と作業に集中するようになる。
「うまくこなせない自分が嫌だ」とか「あれもこれも不安だ」とかいう雑念はこのように単純な作業をこなしている時には考えもしない。
 
 
仕事以外のことに没頭する罪悪感を感じる必要もない。
生きる上でいつかは食べないといけないのだし、自分で作ることは節約にもなるのだからこれでいいのだ。
 
 
そうして一つの料理を完成させたときに小さな達成感を味わえば良い。
きっと気分がいいだろう。
 
 
そしたらいつの間にか自分を認めてあげようという気持ちになると思う。
「私はこうして何かに集中することもできるし、何も達成できない訳でもないし、第一こんなに余裕がない新入社員の私でも自炊してるなんて偉い」と。
 
 
思い詰めるほど仕事をし続けるのは、ずっとずっと息を止めて海の奥深くまで潜っていくようなものだ。
たまには料理をするなどして「息継ぎ」をする必要がある。
 
 
だから、いくら忙しくて自分自身が荒れていても、そういう時こそ料理をした方が良い。
もちろん元気なときは音楽やラジオをかけたりして楽しく料理をすれば良い。
 
 
病める時も健やかなる時も、新入社員は自炊せよ。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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