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麻雀は人生に似ている


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記事:伊佐野 貴子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「麻雀って人生に似てるんだよね」
 
というと、大体の人は
 
「え? そうなの?」と不思議な顔をする。
 
確かに、麻雀と聞くと「ギャンブル」とか「違法」とか「ヤクザの資金集め」とかダークなイメージを持つ人が多そうだ。かつての自分もそう思っていた。学生時代に流行っていた麻雀を覚えてみたものの、当時は時間潰しや友人とのコミュニケーションツール程度であってそれほどのめり込むことはなかった。しかもどちらかというと負けてばかりで、相手から「ロン!」と言われた時のドキッと感、どんどん点棒が減ってい行く時の焦燥感、最終的に負けた時のショックが抜けきれずむしろ麻雀は「怖いもの」にまでなっていた。
 
ところが、昨今人と会えない時期が続き、自分の時間も増え、「オンライン麻雀」という手軽なツールができたことを知った。これまで人を集めて打てる場所にいかなければならなかった麻雀が、思い立ったらすぐできる。しかも相手は知らない人ばかり。これはなんだか楽しい。というわけでもう一度麻雀を勉強し直そうかなと思い立ったらなんと家にいながらzoomでレッスンまでやってくれる。なんという便利な時代。
 
麻雀と再び出会い、当時より少しずつ打ち方の知識も増え、いまだに「ロン!」と言われてドキッとするものの勝つことも増えて慣れていくうちに、ふとあることに気が付いた。
 
「あれ、麻雀って人生に似てない?」
 
麻雀のルールはいたって簡単、バラバラに配られた13枚の牌を、山から1枚ずつひいてきて数や模様を揃えながら取り替えることで「役」と呼ばれる最終形を目指すもの。4人で順番に山から牌をひいていくが、4人の中で最も早く上がれた人だけが点数を得ることができ、最終的に点数の高いプレイヤーが勝者となる。すなわち、より早く、より美しい=高い役であがることができれば勝利を掴めるわけだが、人生に近いと思うところはそこではなく、むしろ逆。
 
では、何が人生に近いのか。
 
1つ目は、「最後はどうなるか誰にも分からないこと」
 
ひいてくる山の中身は誰も知らない。自分でできることは基本的に「何の牌を捨てるか」のみ。そこでプレイヤーごとの戦略、技術や経験の差による勝率が分かれることはあるが、大体は「ここまではやった。最後のあがり牌に会えるかどうかは時の運」と思いながら打つ。
 
人生も、様々な出会いを通して思考し、決断し、その中で見えてくる目標に向かって進んでいく。だが最終的に思い通りになるかどうかは誰にも分からない。
 
2つ目は、「一人ではできないこと、つながっていること」
 
麻雀は一人で学んだり練習はできるが、本来4人であそぶもの。
 
ひとり黙々とあがり役に向かって思考することもあるが、自分の手だけ見つめていても成り立たない。相手の捨てた牌や言動などでどんな役を作っているのか、もうゴールが近いのかを探る。そして時には自分の牌を渡したり、相手の牌をもらったりしてあがりに近づいていく。それは4人のコミュニケーションで成立するものなのである。とはいえ他愛のない話をしているだけでも楽しい。
 
人も一人では生きられない。目に見える繋がりはもとより、目に見えない様々な繋がりによって生かされている。時には時空を超えた繋がりさえ感じる。
 
最後は、「勝つことが目的ではないこと」
 
私は、つい最近まで麻雀は「勝つこと」あるいは「負けないこと」が全てだと思っていた。「負けてはならない」という気持ちが強すぎて、ひとたび持ち点が減ると、焦りから視野がどんどん狭まり後悔の念に駆られていた。負けが込むと、「もう麻雀はやらないでおこう」と思ったりもした。
 
幾度となく離れようと思ったが、麻雀は私にとって友人や新しく出会う人との大切なコミュニケーションの場であり、長く楽しみたいと思う気持ちが勝り、いま再び触れ合い学びなおすことを選択した。そこでたどり着いた自分なりの答えが「勝っても負けても楽しめれば良い」ということ。「負けてもいいや」と思えるとぐっと視野も広がり余裕ができて、メリハリのある楽しめる打ち方ができるようになってきた。
 
それはまさしく人生においても同じで、出会う人やものは自分では選べない偶然の奇跡であり、その出会いの中で自分なりにどう自分の形を作っていくか思考し、周囲と繋がり助け合いながら「どう楽しむか」が一番大事なことではないかと気づかされたように思う。
 
楽しんでいれば、より楽しむために勉強もする、チャレンジもする、負けることもあるが勝つこともある、そして学んで経験を積むことで目の前にふとぶら下がるチャンスに気づくこともできる。チャンスは誰にでも訪れること、一見悪いことのように見えてもその中にヒントが詰まっていることを私は麻雀で学べたように思う。
 
モノには本質があり、作り手の思いを受け役割を担ってこの世に誕生するという。この小さな麻雀牌たちは私たちを楽しませるために生まれてきたのかもしれないと思うと、なんとなく牌たちから「私たちと楽しみましょう、うふふ」という声がたまに聞こえてくるような気がしてきた。うん、楽しもう!そして、これからもっといろんな場所で聴こえるだろう彼らの楽しく誘う声を探していきたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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