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秘密の交換日記


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記事:川端麻美(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「お父さんにも孫が出来るってこと? うわーん!」
私が妊娠を報告した日、電話越しでいきなり大号泣し始めた私の父親。
というか、うわーんとはどうした?
60過ぎても、人ってうわーんと泣けるのだなあ。
子どもみたいに泣いている父の声を聞きながら、もらい泣きをするどころか、申し訳ないけれど笑いを我慢するのに必死だった私。
 
今年は、昨日6月19日が父の日でした。
みなさんはお父さんに感謝の気持ちを伝えましたか?
私は地元の愛知県に暮らす父に、ちょっと良いビールを贈ってみました。
 
私が出産するまであと2か月。
自分が親になるのかと思うと、最近、家族とのエピソードを思い出すのですが、今日は父との日課だった「秘密の交換日記」についてお話しします。
 
私の父は、私が物心ついたときから会社から独立して自営業をしており在宅で仕事をしています。
母は外に出てバリバリ仕事をしていたので、学校から帰ると「おかえり!」といつも迎えてくれたのは父でした。土曜日の午前中、授業が終わって学校から帰ってきた私と妹のためにお昼ごはんを作ってくれるのも父の担当でした。
 
私が育った実家では、玄関から上がってすぐ横に、父の仕事部屋がありました。
小学校3年生ぐらいからか、毎日学校から帰ってくると、私は父の仕事部屋に居座り、自然と今日起こった出来事を報告するようになりました。
「先生にこんなことを言われたんだ。 むかつくー!」
「リレーの選手に選ばれたんだよ。 すごいでしょ!」
帰ってから、だいたい1時間ぐらいは話していたと思います。
 
いつも「うんうん。 そうなんだね」と相槌をしてくれていた父。
自分の仕事中にいきなり子どもが話しかけてきて、正直、忙しいから後にしてくれよというときもあったと思うのですが、いつも私の話をちゃんと聞いてくれました。
 
そんな報告が毎日あるので心配したのか、いつまでも続く話を聞くのが少し面倒だったのか……?
きっかけは不明なのですが、ある日、父からピンク色の小さなノートを渡されました。
「このノートに話したいことがあったら書いてこの引き出しに入れてくれたら、お父さんはちゃんと読んで返事を書くからね。 秘密だから何でも書いていいからね」
 
父の仕事部屋にある棚の一番下の引き出しに、こっそり入れておくところから始まった父との交換日記。
私は二人の秘密であることがなんだかうれしく、そしてなんだか照れくさくて、父と交換日記を始めたことは母にも妹にも言いませんでした。今でもこの交換日記の存在を、他の家族が知っていたのかは謎です。
 
その交換日記に書いていた内容は、正直まったく覚えていませんが、毎日父の部屋で話していた今日の出来事と同じようなことだったと思います。特にいじめられていたわけでも、大きな悩みがあったわけでもない私の、たわいもない話に対して、父はコメントを入れてくれていました。
成長するにつれてお友達との交換日記が始まり、そちらの執筆活動に忙しくなった私は、いつの間にか父との交換日記をフェードアウトしてしまいました。
加えてお友達との遊びや部活で忙しくなり、学校帰りの今日の出来事の報告タイムも自然と終了に。
 
薄情な終わり方のせいで少し罪悪感が残るけれど、父との思い出である秘密の交換日記。
子どもにとっては、いつも気軽に相談できて、親身になって話を聞いてくれる存在がいたのはとても支えになっていました。大人になって、周りの人にこんなことがあったと話すとこの父の気遣いはすごくありがたいことだったと感じます。
ちなみに偶然にも、私が好きな芸人・ゆりやんレトリィバァさんもお父さんに毎日、今日の出来事を話すのが家族のルールだったそうです。あれだけのびのびと自分の好きなことに全力投球できている彼女をみると、子どもにとってすごく良いことだったんだなと、これから親になる方がいたらぜひオススメしたい家族の習慣です。
 
大学入学を機に上京してからは毎日のように話すことはなくなったけれど、私には親身になって話を聞いてくれる存在がいるおかげでひとり暮らしも頑張れたと思います。
上京するとき、私は一切親に相談せずに受験校を決めてしまいました。経済的な援助もしてもらったし、両親にとって正直きつい時期もあったと思います。自分が親だったらなんでこんな大切なこと相談しないんだ! と、怒ってしまいそうな事件ですが、いつも応援してくれました。
ああ親不孝な私、思い出すだけで恥ずかしいことばっかりしています。
 
お父さんをおじいちゃんにしてあげられる。
ワガママで親不孝な私ですが、初孫の誕生で少しは親孝行できるでしょうか。
とても優しくて、なぜかうわーんと泣いちゃうぐらい日に日にチャーミングさが増している私のお父さん。なかなか私に子どもができないことを心配しつつも、私を気遣って直接的には聞かないようにしてくれていたのだろうな。
父が私にそうしてくれたように、これから生まれてくる子どもにとって、今度は私がいつでも話を聞いてあげられる存在でいられるように父を見習うべし! と、胸に刻んだ今年の父の日でした。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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