メディアグランプリ

声出さず声援 距離とって参戦 そこで生まれた体験


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:森本裕子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
音楽ライブに行くのが好きです。ライブハウスでしか味わえない体験。
それは、
隣の知らない人と意気投合して踊ったり、
声がガラガラになるくらい大声で歌ったり、
水か汗か分からないしぶきが飛び交ったり。
 
ライブハウスは、思いっきり自分を開放できる、特別な空間です。
 
そんな楽しかった事を全て忘れてしまいそうになる位、2020年春、ライブの姿は変わりました。
 
当時、テレビのニュースでは「ライブハウスで集団感染か?」という見出しが躍り、ほぼ全てのライブは中止になり、特別だったはずの空間は一瞬にして危険な場所として扱われる様になってしまいました。
 
それから暫くして、ライブは画面を通じてオンラインで見るものになりました。それはそれでライブの新しい楽しみ方が1つ増えて、映像や音響の通信技術の進歩を感じる出来事だったのですが、やはり会場に行って熱気や開放感を肌で感じる体験とはまた違います。
 
「うーっ、体があのライブを欲してる……」
 
そして2021年、少しずつですが会場での有観客ライブが再開されはじめ、一年以上ぶりに恐る恐る行ってみることにしました。楽しみ半分、ドキドキ半分。
 
二重マスクをして久しぶりにライブ会場に行くと、開放的だったその場所は、厳戒体制という言葉がピッタリの場所になっていました。
 
まず会場に入るにはとにかく検温から始まります。
平熱である事を確認した後、チケットを見せます。前はいっぱいいた、チケットの半券をちぎるスタッフさんはもういません。その代わりに、両手にアルコールスプレーを吹きかけられて、やっと入場です。
 
ドリンクはペットボトルのみ。以前はスタッフさんが注いでくれたドリンクブースは閉鎖され、机の上に整然と並べられたペットボトルの中から1本だけをサッと手に取って、客席の方へと向かいます。
 
客席フロアに並んでいる椅子は、1つおきに座面に紙が貼ってあって、紙に目を向けると「ここには座らないでね」という柔らかい投げかけと共に「身体的距離確保席(飛沫感染防止)」という初めて目にする緊張感あふれる言葉。気持ちがきゅっと引き締まります。
 
「えーっと、マスクを外さない、大声を出さない。それからそれから何に気をつければいいんだっけ……」
 
開演が近づき、色んな意味でドキドキしていると会場が暗くなり、ついに待ちに待った時が始まりました。
 
最初は私も周りもみんな手探りなのか、少し控えめな拍手でアーティストを出迎えます。もちろん「キャー」や「オーッ」といった声援はありません。
 
さぁライブスタート。体の芯に伝わる様な重低音、視界いっぱいに光り輝く照明、お客さんの前でライブできる喜びが、ここまで伝わってくる位、心から楽しそうに歌い演奏するアーティスト。
 
私達も曲にノッて体を揺らしたり手を叩いたり。思い思いに楽しみます。
全身に音楽を浴びるこの感じ!
 
「そうだよ、これこれ! やっぱりライブってすごいな!」
 
一緒に歌ったりコール&レスポンスができない分、みんなで手振りが楽しめる曲も多くて「一緒に楽しめる方法探そうよ!」っていうアーティストの気持ちと工夫が伝わってきます。
 
久しぶりすぎるライブに私は一瞬全てを忘れる位没頭していて、呼吸をすると口元に感じるマスクが、かろうじて私の自制心を保ってくれていました。
 
「みんなー、楽しんでくれてるー?」
 
拍手と一緒に、両手を叩くその指先から「楽しいよー!!」っていう文字のレーザービームが出せたらいいのに。それ位、今の楽しい気持ちを伝えたいと思ったライブは初めてでした。
 
楽しい時間はあっという間。ライブが終わりに近づき、アンコールを心待ちにしていると、会場では揃いに揃った大きな手拍子が鳴り響きました。私も声を出せない分、気持ちをこめて手を叩きました。まるで会場にいるお客さんの心が、同じ一つのリズムでつながっている様な、お互いへの思いやりに満ちた心に残る手拍子でした。
 
終演後、乾ききった喉を潤すためにドリンクを口にする一瞬だけ、マスクを顎の方にずらしてみると、ライブハウス特有の、部活終わりの体育館みたいな匂いはしませんでした。そのかわりに、みんなで作った気持ちの良い空間がそこにはあり、ありがとうの気持ちと、再び心に灯ったライブ熱を、今日はここで開放せずに大切に家に持って帰ろう。そう思い家路につきました。
 
これからまた前みたいに、みんなで歌ったり踊ったり肩組んだりできるライブに戻っていくんだと思います。そうなったら、きっと今回のライブの事もいつかは忘れてしまうのかもしれません。それはそれで寂しいなと思う位、特別なライブ体験になりました。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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