メディアグランプリ

○○ちゃんのママだけど、私という個人を認める


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記事:冨井聖子(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
私には、10年来のママ友がいる。
ママ友と呼んでいいのか、友達と呼んでいいのか、定かでは無いけれど。
今も、子ども同士も仲が良くて、大人同士も仲が良い。
 
はじめての出会いは、上の子たちが6ヶ月の検診。
たまたま隣同士に座った。寝返りを打ったうちの息子が、その女の子の上に乗ってしまって「ごめんね」って言って引き剥がした。それだけなら、こんな付き合いにはなってない。たった30秒後に、その子が寝返りをしてきて、うちの息子の上に乗ってしまった。お互い顔を見合わせて大笑い。それがきっかけ。
そこから話すようになって、まさか10年以上も一緒に過ごすなんて思ってもみなかった。
 
私自身、当時、車がなく、バスや歩きで移動。しかも、我が家から子育て支援センターも健診会場も遠かった。そんなときに、会場で私を見つけると、帰りに送ってくれて、たくさん話すようになった。
2人とも地元は関西じゃなくて、友達もこっちにいなくて、仲良くなるのに時間はかからなかった。でも年齢は私よりも上で、私よりもずっと落ち着いてて、私よりもずっと仕事ができて。面白いぐらいに正反対なのに、いまだに一緒にいる。
 
ドラマや漫画のイメージで【ママ友=子どもの親同士の付き合い】という枠だろう。【足を引っ張りあう、どろどろしたもの】という人もいるかもしれない。
【自分の友達】っていう意識が非常に薄いと思う。
ある程度大人になって、職場と家庭の往復だけだと新しい人間関係ができにくい。新しい友達ができたり、新しい人間関係つくっていったりしていくのって、子どものつながりは、すごく大きいのではないかなって思う。
 
この人は、子どもたちが仲良い子の親。
この人は、仕事の同僚。
この人は、取引先の人。
間違ってないけど、寂しく感じてしまうのは私だけだろうか?
 
お母さんとしての話をしよう。
 
この人は〇〇ちゃんのお母さん。
この人は◯◯くんのママ。
そんなふうに勝手に枠をつけて見ているのは自分だけで、〇〇ちゃんのお母さんにだって名前はある。その子のお母さんだって、ここまで歩んできた人生がある。大事なものがあるし、好きなものがある。
でも【〇〇ちゃんのお母さん】って呼ばれた瞬間に、それまでの人生が全て箱にしまわれて、【お母さん】としての自分を、自然に見せているのかもしれない。全ての人生が、なかったものとは言わないけれども、見え隠れすらしない。
 
正直な話、小さい子どもたちって、決してキレイな生き物ではないのだ。
泥だらけでも、鼻水だらけでも、食べかすだらけでも、親のことを触ってくる。抱きしめに来るし、抱っことせがむ。そんな手で、自分の一番好きなお洋服など、触られたくないから、いつでも汚れてもいい格好になる。ホームクリーニングができる程度のお洋服で我慢をしている場合もあるだろう。
子育てのそんな時期なんて、たった数年しかないから「それでもいいや」って思っている人もいる。でも「本当はヒールが履きたいのに」とか「本当はきれいなワンピースを着て出掛けたいのに」とか思っていても「それはかなわないよね」って諦めモードだったりもする。
ある意味、そんな過酷な時期を一緒に乗り切る戦友がママ友でもあるのだ。【1番自分に手がかけられない時代】を一緒に過ごしてしまう。正直、そんな自分を同性に見せたくないのが女心だったりもする。
 
だからこそ自分の名前を呼ばれるより【〇〇ちゃんのママ】って呼ばれる方が楽な人もいるかもしれない。でも、そんな付き合い方をしてたら保育園が終わった瞬間に関係が切れてしまったり、習い事を辞めた瞬間に関係が切れてしまったり、とってももったいないと思うのだ。
 
仏教用語で、対面同席五百生(たいめんどうせきごひゃくしょう)という言葉がある。お釈迦様(仏陀)が伝えたとされる言葉で、意味は「対面したり同席したりする人は過去世で500回は関わりを持っている」というもの。
「袖振り合うも他生(多生)の縁」と同じような意味合いだと思うけど、それよりも、もっとご縁の糸が太い気がする。ママ友って、子育てという楽だけではない時代を一緒に乗り切っているので、絶対に大切なご縁だと私は思うのだ。
 
私の友達のママの話に戻るけれども、彼女とは、それこそ、早い時期に名前で呼ぶことに決めた。だからお互いそれで呼んでいる。だから【1人の人間】としての付き合いだ。「〇〇ちゃんのママ」でもあるけれど、「あなた」という1人の人間として付き合ってる。家族ぐるみで仲がいいので、2人とも主人に子どもを預けて、2人だけで飲みに行ったりもする。たくさんしゃべる彼女じゃないけれど、それでも誘ったら乗ってくれるし、一緒に行けなくても普通に断れる。
 
大人になって職場以外のつながりで、友達をつくるって、なかなかハードルが高いかもしれない。でも【〇〇ちゃんのママ】という枠を飛び出して、その人の名前で呼ぶようになったら、1対1の関係が作れる気がするのだ。
 
確かに【お母さん】である事実は変わらない。
 
でも【〇〇ちゃんのママ・お母さん】と言ってしまうと、たくさんのアイデンティティーがあるはずなのに、【お母さんという枠】に勝手に押し込められる。サザエさんのふねさん(サザエさんのお母さん)みたいなイメージが、どうしても私は拭えない。だからこそ、子どもを通してつながったお母さんたちは、出来る限り下の名前を聞こうって思う。出来る限り下の名前で呼びたいなって思う。
○○ちゃんのママではなく、個人として、あなたとトモダチになりたいから。
 
 
 
 
***

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2022-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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