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夏到来! 海を愛するあなたに~離岸流の話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横山裕子(ライティングゼミ・4月コース)
 
 
青い空、照りつける太陽、ここは、湘南のとある海水浴場、波の音が心地良い。
どこからかサザンオールスターズの曲が聞こえてくる。
友人たちと荷物を下ろし、深呼吸する。
海がキラキラと輝いていた。誘われるように、海に入る。
 
風が凪ぎ、波間に漂っていた。大自然に抱かれているようで、のんびりと心地よい。
「そろそろ、岸に戻ろう」
顔を上げた。浜辺の方を見る。
「えっ嘘? と、遠い」
 
嘘ではない。知らぬ間に、浜から遠く離れてしまったのだ。
 
「離岸流」
最近はテレビなどで取り上げられているので、ご存じの方も多いと思う。
離岸流とは、海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする時に発生する強い流れのことで、最大で1秒に2メートル進むこともあるそうだ。
長さは数十メートルから、数百メートルになることもあるが、幅は十から三十メートル程度と、さほど広くない。
どこで発生しやすいか?
海岸が外洋に面しているところ、遠浅で海岸線が長いところ、近くに人口構造物があるところだそうだ。 まさに、堤防のある遠浅の海水浴場など、ぴったりと当てはまる。
 
有名人も、離岸流の恐怖を語っている。
マツコ・デラックスさん、仲間と海に遊びに行き、女装したまま飛び込んだ先が、なんと離岸流だった。
「ズラ(かつら)も流され、あー、死ぬかもって思った」という。
反面、「凄い面白い画が取れる」とも思ったそうで……、さすが、芸能人!
ともあれ、渾身の力を振り絞って脱出し、「波、本当に怖い」とコメントを残している。
 
もう一人は、長嶋一茂さん、ハワイのビーチで離岸流に遭遇。
「思いっきりかいているのに、全然岸に行かない。これは離岸流だと思って、パニックになりかけた」
離岸流の知識があり、アスリートの一茂さんでも、パニックになりかける。
「潜水して横に出たら、離岸流を外れてた」と当時を振り返っている。
ただその後、「溺れそうになった自分が悔しかった」と、もう一回同じ所に行き、同じように溺れそうになり……。今度は、普通に横に出たら離岸流から外れたとのこと。
一茂さんらしいと言えば、らしいのだが……。
これは絶対にマネしないでほしい!
 
かくいう私も、仲間と遊びに来た海水浴場で、離岸流に遭遇してしまった。
足がつく深さのところで、ぷかぷか波に浮いているはずだった。
気持ち良く波に身を任せていた。
ふと、気づくと、岸ははるか遠く、仲間の姿も見えない……。
そんなに長い時間が経っていたわけではないと思う。
足も着かない。喉がカラカラになり、恐怖が忍び寄る。
 
当時の私は、スイミングスクールで子供たちに教えたり、自分でも水泳を習ったりしていた。泳ぐことは大好きで、離岸流の知識もあった。
それでも、パニックになりかかった。いくら岸に向かって泳いでも、岸から遠ざかるばかりなのだ。
 
「パニックになったら、戻れなくなる」
海ではすなわち、死を意味する。
「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせた。
遠く、友人たちが居る浜辺を見て、「あそこに戻る」と心の中でつぶやき、体の向きを変えた。
左に岸を見ながら、泳いだ。岸と平行に進む感じだ。
体に力が入ると、体力を消耗するし、沈む。なるべく平静を装い、ひたすら泳いだ。
 
しばらくすると、ふっと体が軽くなったように感じた。
強い流れで沖に持っていかれそうな感じがなくなり、今度は岸に向かって押されているような感覚になった。
離岸流を抜けたのだ。
そこからは早かった。波に乗って泳ぎ、浜辺に降り立った。
「助かった」
疲労困憊だった。ふらふらと、友人たちのもとに戻る。
「何してたん? どっから歩いてきたの?」
姿が見えなくなったので、心配してくれていた。
水をもらい、飲む。美味しい。足の下の砂が熱い。
友人たちの心配そうな顔を見て、心底ほっとした。
 
母なる海は美しい。広がる水平線、寄せては返す波音が、心を癒してくれる。
大自然を前に、人間はあまりにも、ちっぽけな存在だ。
目の前の自然を知ろうとすることは、自然を守るため、ひいては自分を守るためにも、とても大切なこと……。
自然との距離の取り方、付き合い方を考えるきっかけを、離岸流は与えてくれた。
二度とそれに乗りたくはないけれど、また、海に行きたいと思う。
畏敬の念をもって、海を見つめ、波の音を聴き、潮風を感じたい。
 
また、暑い暑い夏がやって来る。
コロナ禍になって2年、今年はようやく海の家も再開されるという。
待ちに待った海開き、海に集う人々の笑顔が目に浮かぶ。
どうか事故なく安全に、海を楽しんで欲しいと願う。
 
 
 
 
***

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2022-07-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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