メディアグランプリ

刑事ドラマは突然に~地域総務課にお世話になった日~


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記事:Idani Aiko(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
その日は奇しくも、2000年に誕生してから23年、国民的ドラマとして定着している某刑事ドラマの“五代目相棒”のキャストが発表された日だった。
スマホでネットニュースを読み、内心興奮した通勤時間。
人生の半分近くの時間で追いかけていた作品に思いを馳せつつも、勤務時間はスタート。

そんな日にまさか警視庁、地域総務課の「交番」にお世話になることを朝の私は想像もしていなかった。

「事件」は午後12時50分、営業先のビルの一階に着き、ポケットからスマホを取り出した時に起こった。

主人公は何か違和感があることに気がついた。
たしか先ほど左ポケットに定期入れを「とりあえず」入れた後、バッグにしまっていないのではないか?
そして今スマートフォンへ左ポケットから取り出し、そこに定期入れはなく、空になっている……。

しまった!!定期を落としてしまった!!人生で初めて、それも渋谷のど真ん中で。
あと10分でアポイントメントの時間になるので、来た道を戻って探す時間はない。

先方とのミーティングが終わり、ビルを出たのが13時40分。
一旦来た道を戻って足元に失くしものを探す。
ない、ない……1000メートル歩くも見つからず、オフィスへ戻る前に交番へ。

近づくと女性のお巡りさんが「どうしました?」と声をかけてくれて、事情を話すと中へ通してくれた。
いまここには届け物はない。
遺失物届を今出すかどうか尋ねられ、紙に氏名や住所、そして失くしたもの、その特徴、失くした場所、時間帯を記入すると、パソコンを開き検索をしてくれた。

連携プレーで、私が記入している間に情報を読み上げて、もう一人が検索をするという無駄のない作業だった。

そして耳に飛び込んだのは予想外の言葉。

「ありました。○○の交番に……特徴は○○ですか?」

「……そうです!」

「今日身分証明書はありますか?」

「はい!!大丈夫です」

「14時00分、○○さん、身分証持参でこれから行かれます。」

まさか見つかるとは思っていなかった。
感謝を伝え、隣の駅の交番まで歩いて行く。

落とし物をしたであろう先ほどのビルの周辺を過ぎて、目的地に到着。

「あのう〜〜、すみません、先ほど○○の交番からこちらに落とし物が届いていると伺って来た○○ですが……」

「ああ〜〜!よかったです!ちょっとあっちへ連絡しますね。
……お疲れ様です!○○です。
14時20分、○○さん、取りに来られましたので報告いたします。」

「はい、お待たせしました。よかったですねぇ、こちらで間違いはありませんか?」

「はいーー!!これです!!うわぁ!!すごい……ありがとうございます!!」

「届けてくれた方も、きっとこの方、困っていると思うのでとおっしゃって」

「本当にありがとうございます……!届けてくださった方へお礼をお伝えしたいのですが、連絡先って書かれてますか?」

「その方は、落とされた方が困っていると思うので、見つかれば僕はいいのでとおっしゃって」

「親切な方に感謝です……。差し支えなかったらどんな方だったんですか?多分、落としたあたりからここまでは少し距離があったと思うんです……こんな炎天下の中……」

「きっと同じくらいの年代の方で、多分その方もお仕事中でここまで届けてくれたようです」

「本当にありがたいです……」

たしかに私も、過去に車の鍵や様々なものを交番に届けてきたが、確かに連絡先や持ち主が現れなかった場合の権利も放棄してきた。
 
そのことは今の今まで忘れていたし、あの届け物は持ち主のもとに戻って、持ち主はわたしに感謝をしているだろうかなんてことは考えていなかった。
 
そういうものだし、きっとこの日の私の恩人も同じなのだろう。
 
その方に今回はお礼を直接伝えられないとしても、この受けた親切をまた別のひとへ伝えていけばいい。昔の映画のように。
 
『ペイ・フォワード 可能の王国』映画の公開年を調べると、冒頭のドラマと同じく2000年。
中学1年生になった主人公は社会科の最初の授業で、担当のシモネット先生と出会う。
先生は「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら、何をする?」という課題を生徒たちに与える。
主人公の提案した考えは、「ペイ・フォワード」。
自分が受けた善意や思いやりを、その相手に返すのではなく、別の3人に渡すというもの。
 
親世代に愛を与えられた分だけ親世代を愛し返す代わりに、親世代から愛を与えられた分だけ次の世代を愛する(pay forward)。 これが “pay it forward” の意味の由来。
 
この日の親切な方も、きっと今まで親切を受けた経験があるのだろう。
もしくは無くしものをして困った経験があるのだろう。
j見知らぬ誰かが困っている姿を想像できて、見返りを求めずに、貴重な時間を割いて、炎天下を歩き交番まで届けてくれたのだろう。
 
「ペイフォワード」、これまで以上に見返りを求めず行動していこう。
 
それがきっと、恩人への感謝を伝える最大で最良の方法なのだろう。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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