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メディアグランプリ

子どもがかわいすぎてつらい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:桐渕真人(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
うちの5歳の息子が異様にかわいい。
控えめに言って、世界一かわいい。
 
親バカは認める。
だけど客観的に見ても、ちゃんとかわいいらしい。
いつもにこにこの笑顔と可愛い発言で、出会う人、出会う人、老若男女メロメロにしていく人たらしの天才なのだ。
 
ただ、かわいさを損なって余りある暴れん坊でもある。一緒に遊ぶと必ず父ちゃんは痛い目にあうし、ものが壊れる。それでもやっぱりかわいい。
 
どうしてこいつはこんなにモテるんだろう、観察してみたら人たらしのヒントがたくさんあった、という話をしたい。
 
今朝の朝食に、デラウェアのぶどうを与えてみたら、やつはキラキラした目で喜んだ。
「ぶどうだー!」
1つずつ房からちぎって、眺めて運ぶ。
「あ!おっきー!」 とひとしきり喜んでは、ぱくり(皮ごと!?)。
「あ!ちっちゃーい!かわいいー!」 とひとしきり愛でては、ぱくり(皮ごと……)。
どっちでも喜ぶのかい。
食べることが大好き、ぶどうが大好き、大きくても小さくてもとにかく嬉しい、そういうポジティブな気持ちを全身で伝えてくる。
最後に「はい、とうちゃんにも、どうぞー」 と必ず一粒(しばらく握っていたせいで生あたたかい)だけくれる。美味しいものは分かち合うともっと幸せになることを5歳ながらに知っているらしい。
そんなにストレートに喜びを伝えられたら、父ちゃんはまんまと今日もぶどうを買って帰ってしまうのだ。
 
でも朝は、彼がかなしくなる時間がある。今やっている遊びを切り上げて、保育園に出発する切り替えの瞬間だ。
「さあ、時間だから出かけるよ」
母親が声を書けると、口を尖らせ、顔中に悲しさを溢れさせながら、「もっと あそびたかったの……」 ぼろぼろと大粒の涙をこぼしてしくしくと(本当にしくしくという音がする!)泣いてしまう。これが始まったら父ちゃんの出番である。
 
「父ちゃん、なぐさめる?」 と聞くと「うん……」 と素直に力強くよじ登ってくる。
頭をなでてやりながら、
「もっと遊びたかったね」(うなずく)
「でも、保育園の時間なのも、ちゃんとわかってるんだもんね」(うなずく)
「両方やりたくてこまっちゃうね」(うなずく)
これを繰り返す。
 
母親がかけた、なぐさめタイム5分のタイマーが鳴り、「さあ出かけるよ」と再度声をかけると、こんどは「んーーー!」 と元気に返事をしてさっそうと出かけていくのだ。
「だって、ぼくは、ほいくえんだいすきだお?」 とか言いながら、キャッキャと大きな声で揚々と走っていく声が聞こえる、出かけたドアの向こうから。さっきの悲しみは一体何だったの、と父ちゃんが思うところまでが、朝の一連のルーティーンだ。
でも、確かに、大人でも今やってることをバシっと切り上げて次に行くのは難しい、気持ちがついてくるのに時間がかかるときあるよね。
 
夕方、やつを保育園に拾いに行く。
インターフォンを鳴らし、保育士さんに息子を連れてきてもらえるようお願いする。
扉の内側から「ええ!?きょうはとうちゃんがおむかえなの!?」と喜ぶ声が聞こえて、本来なら父ちゃん冥利に尽きる場面だが、母親が迎えに来ても全く同じリアクションということがわかっている。
「なんで父ちゃんがお迎えに来るとうれしいの?」
「あそんでくれるからー!」
「ままがお迎えだと、何がうれしいの?」
「あそんでくれるからー!」
「父ちゃんでも、ままでも、どっちでもうれしいの?」
「……ん?んーーー!」
 
先日の旅行先での話。温泉に入ったところ、よその同い年くらいの女の子が、少し薄暗い温泉を怖がって泣いていたのを見つけた息子は、にこにこいつもの調子で話しかけた。
「ねえ、ねえ、なんでないてるの?おふろ、おっきくてたのしいよ?」
いきなり温泉で女の子をナンパした。知らない土地とか、知らない子とかいう都合は、彼にとって話しかけない理由にならないのだ。さっきまで泣いていた女の子は、息子のにこにこに引っ張られたのか、すっかりごきげんでお風呂に入ったようだ。後でその子のお母さんに感謝されてしまった。翌日、泣きながらお別れになった。
 
彼がナンパするのは子どもだけではない。
去年の夏、家族で、河原で遊んでいた時のことだ。気がついたら、息子は隣の知らない家族の輪の中で、なにやら餌(おかし)をもらって談笑していた。すごいコミュ強だな、と言っても彼はあまりお話するのは得意じゃない。会話の内容じゃなくて、真っ先に自分の心をオープンにして、一緒にあそぼの顔をしてにこにこ近づくだけで、どんどんお友達を増やしてしまったのだ。
気がつくと水着も脱いで物理的にもオープンになってしまうのは困ったものだけど。
 
さて。
あらゆる出来事には、良い側面と悪い側面があり、重要なのはどう受け取るかだ。グラス半分に入ったワインを見て、後少ししか無いと考えるか、まだたくさんあると考えるかは、あなたにとって幸せな方を選ぶと良い、みたいによく例えられる話だ。
物事を楽しい方に受け取ろうというスタンスを生まれながらに持つ息子は、何にでも喜ぶし、いつもにこにこ嬉しそうだ。
また、恥ずかしがって隠したり、背伸びしたりせず、自分の欲望や喜びを丸出しにすることに躊躇がない。傍から見ていて、本当に純粋に、欲しい物、食べたい、やりたい遊びを思うままに欲しがったり、遊んだりする姿は、表裏がなくて本当に清々しく感じるんだろうと思う。
世界一かわいい息子は、人に好かれようとしているわけじゃない。ただ一生懸命生きているだけなんだ。全力で生きていることを楽しんでいることは、他者から見てとても魅力的に映るんじゃないか、と思えた。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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