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たとえチーズがどこかに消えたって


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記事:板井さやか(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「あぁ、やっぱり減っている!」
私は確信した。
 
数年前に北海道の田舎から東京に出てきて驚いたことのひとつが、インドカレー屋がとても多いということだ。
場所によってはファミレスより多いと感じる地域もあるほどだ。
私の今の住まいからも一番近いレストランはインドカレー屋、そしてそのお店から300メートルも離れていない距離にもう1軒インドカレー屋がある。
それまでカレーと言えば、家で食べるゴロゴロの野菜が入ったルーカレーしか知らなかった私は上京後に一気にインドカレー屋の大ファンになった。
ちなみにスープカレーは札幌に住んだことのない私にとっては全く馴染みがない。
その中でも特に好きなのがチーズナンだ。
初めて食べたとき、熱々のナンを割ると中から大量のチーズが溢れてきて感動したことを覚えている。
 
インドカレーにはまった私はオフィス周辺のインドカレー屋に頻繁に通い、複数ある店舗のチーズナンランキングを密かに作っていた。
金曜日限定のキーマカレーとホットチャイのため、同僚と線路を超えて徒歩10分のお店にも毎週のように通ったほどだ。
在宅勤務になってからテリトリーが近所になったが、徒歩・自転車で行ける店舗はいくつもある。
 
極めて個人的な感覚だが、最近チーズナンに異変が起きている気がする。
最初に違和感に気づいたのはオフィスビルにあるレストランに同僚と行ったときだった。
「あれ?チーズナンってこんなにあっさりしていたっけ?」
体調の関係でしばらくチーズナンを食べていなかったこと、その店はコロナ禍を経て店名と内装を少しリニューアルしていたことから、その時はこれがこの店のテイストなのだと納得した。
 
しかし2回目はすぐに訪れた。
その翌週、近所のお気に入りの店のチーズナンをちぎった時だ。
「あれ?お店の人チーズナンと普通のナンを間違った?」
ここで私はある仮説を立てた。
 
そして先日、別の店舗のチーズナンを食べてから自分の仮説があながち間違いではないと思い始めている。
「チーズナンのチーズが減っている。そしてそれは世界情勢のせいに違いない!」という説だ。
 
最近は毎月のように流れる食品、日用品の値上がりのニュースを見て「またか」と思う人も多いと思う。
小麦粉やキャノーラ油に始まり、アイスクリーム、紙おむつなどの日用品からついに電気代金まで、値上がりした商品を上げるとキリがない。
値段自体は変わらなくても、久しぶりに買ったパンやお菓子などを「あれ、こんなに小さかったっけ?」と感じる経験をしたことがある人もいるはずだ。
企業側はお客さんの金銭的負担を増やさずにこれまでと同じ価格で商品を提供し続けたいと考えだろうし、消費者としても実際に値上げを数字として実感するのは辛いものだからその方法はある意味ウィンウィンなのかもしれない。
 
チーズナンに関する仮説を立てた後にニュースを確認すると、やはりチーズは値上がりしていた。
原油高や原材料高、他国の乳製品の需要拡大、ロシア・ウクライナ情勢や円安などが響いているらしい。
 
コロナ禍によってオフィス周辺のインドカレー屋は何店舗も閉店したが、住宅街にある近所のインドカレー屋は一軒も閉まることなく営業を続けている。
原材料費が高騰しているにも関わらずお値段は据え置きのままでだ。
ニュースによると同じ材料である小麦粉もテイクアウト用に使用するプラスチック製品も値上がりしているしているらしいのに、なんとお客さんのことを考えてくれている店なのか!
そう、味もカレーの量も値段も変わってない、ただチーズの量がこれまでより少し減っただけなのだ。
ふと思った。「これは感謝するべきことではないだろうか」
それを私は鬼の首を取ったように「チーズが減った」とひとり騒いでいた。
 
「チーズが少ない!」と嘆いたり、文句を言うことは簡単だ。
でも、私はチーズが減ったことに文句を言うのではなくて、こんな情勢にも関わらず引き続きお店でおいしいカレーを提供し続けてくれることに感謝する人になりたいのだと気付いた。
まずはすぐに歩いていける場所で最高においしい食事を提供してくれることに感謝しよう。
この気付きは今の自分の環境や体型、すべてに共通して使えるはずだ。
ないものを無理やり足そうとしたり、ないことを悲しんだり不満に思うのではなく、まずはあるものに感謝してみよう。
探してみると身の回りにたくさんあるはずだから。
 
それにたとえチーズナンのチーズがどこかに消えたって、それはちゃんとしたナンだから。
 
 
 
 
***

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2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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