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好きしか勝たん


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記事:中尾静恵(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
「好きこそものの上手なれ」 とはよくいったものだ。
「好き」 という気持ちは、あらゆる活力となり、また心を豊かにしてくれる。
好きになれば、心が踊り、ワクワク、ドキドキするし、夢中になり、懸命に取り組もうとする。
一生のうちに、そんな「好き」 にいくつ出会えるだろうか。
 
私は、大学時代に、『タッチフットボール』 というスポーツに出会った。それは、当時は日本では全く知られていない、今でも知る人ぞ知る、マイナー中のマイナースポーツだ。
「女子チーム創設につき、メンバー募集!」 という勧誘のチラシが、大学の女子トイレに貼られてあったのを見て、「おもしろそう!」 と思ったのが、始まりだった。
(かろうじてポケベルが出現するかしないかのこの時代、トイレの個室に勧誘チラシを貼るのは、とても効果的だった。しかも、用を足すときに見えるところに笑)
大学に入学してからも、何かしらスポーツを続けるぞ! と意気込んで、いろんなクラブやサークルを見学したものの、ピンとくるものがなかった。大学に行ってバイトに行くぐらいのフツーの生活をしていた、そんな1年生の終り頃の出来事だった。
 
魅力的だったのが、未知のスポーツであることと、これからチームを創るというところだった。つまり、全員初心者ということだ。元々の身体能力の差はあったとしても、経験の差はない。なんとも興味深いではないか。
ひとつ、わかっていたことは、その『タッチフットボール』 というスポーツは、アメリカンフットボールを簡単に、かつ安全にしたスポーツということだった。
例えるなら、アメリカンフットボールを親とすれば、タッチフットボールは子供のようなものだろうか。
 
アメリカンフットボールと聞くと、「ロボットみたいに、ヘルメットとか被って痛そうなやつで、ルールが難しい」 と思われがちだが、タッチフットボールは、ルールこそ基本的にはアメフトと同じだが、ヘルメットなどの防具は一切つけず、タックルなどの危険な行為はない。簡単に言えば、ボールを持っている人を追いかけて、両手で背中に『タッチ』 するという、鬼ごっこの延長のようなものだ。
 
もうひとつ、興味を持った理由が、大学のアメリカンフットボール部が全国屈指の強豪で、その試合をよく観に行くようになったことで、アメフトっておもしろい! と感じていたからだ。
そのアメフトのようなものを、自分でプレーできるということが、おもしろそうでならなかった。
 
そしてそれは、期待以上のもので、私がのめり込むのに時間はかからなかった。
その後の大学3年間は、タッチフットボール一色だった。もちろん、アメフト部の応援も、かかさず行った。
マニアックにアメフトを観て、自分もタッチフットでプレーをするという、レアな女子大生だった。
やればやるほどおもしろくなり、知れば知るほど奥深く、もっと上手くなりたい、もっと強くなりたい。もう「好き」 以外の何ものでもなくなっていた。
 
大学卒業後も、「好き」 は続いた。
タッチフットやアメフトで繋がった人たちに誘われ、新たに、『フラッグフットボール』 という、タッチフットを更に簡単に、安全にしたスポーツに出会った。それは、ボールを持った人を『タッチ』 する代わりに、腰の両側につけた『フラッグ』 と呼ばれる、幅5cm、長さ30㎝ほどの布切れを取るというもので、人と接触するのは一切禁止という、老若男女楽しめる安全なスポーツだった。
その手軽さ、安全さから、結婚、出産後もプレーヤーを続けることができたのだが、それ以上に、とにかく、まだまだ上手くなりたい、なぜなら好きだから。それに尽きた。
人生で、こんなに好きで、夢中になれるものに出会えるものなんだ、と思った。
 
だが、ここ数年は、「好き」 ではなくなった。
 
どんなに好きな者同士が集まったとしても、人間が集まるところに、いざこざはつきものだ。ちょっとした意見の食い違いや温度差で綻びが生じ、「好き」 が過ぎる私はショックが大きく、こんな嫌な思いをするなら、もう関わりたくないと思うことが続いた。
と同時に、仕事や家事、育児も何もかもうまくいかない時期が重なり、結果体調を崩した。本当に何も出来なくなり、何にも興味が沸かなくなり、人と会いたくもなくなった。
それに加えて、コロナウィルスが全国に蔓延し始めた。タッチフットやフラッグフットをすることも、アメフトを観ることも、そのものが出来なくなった。いろいろな良くないタイミングが重なり、「好き」 だったものは、もう、好きでも嫌いでもなく、どうでもよくなっていった。
 
それから、約3年が経った。
友達が、フラッグフットボールの大会に出ると聞き、なぜか急に、「観に行ってみようかな」 という気持ちになった。今までなら、聞いても行こうとも思わなかったし、わざわざ遠方に電車に乗って、しかも灼熱の太陽の下へ出向こうとするなんて、自分でも自分の気持ちが理解できなかった。でも、その時は、朝起きられたら、その時の気持ちに逆らわずに動いてみよう、と思った。
 
そうして、たどり着いた試合会場。若くても30歳代~50歳を越えるオジサンたちが、暑く熱い戦いを繰り広げていた。そこには、間違いなく、みんなの 「好き」 の気持ちが、目に見えるようにたくさんあった。みんな、このくそ暑い中、ほんま元気やなぁ、アホちゃう笑 と思いながら、気付いたら声を出し手を叩き、応援して観ていた。
 
タッチフットやフラッグフット、アメフトで繋がった多くの人たちも、その大会に参加していて、数年ぶりに会うことが出来た。みんな、「久しぶり! 元気かぁ?」 と、以前と変わらず話してくれた。
あんなに、人に会いたくなかったのに、好きなことが好きでなくなっていたのに、そこには私の好きだったものが変わらずにあった。自分で勝手に、「好き」 をやめていたことが、バカバカしくなった。
真剣に、でも心底楽しんでいるオジサンたちの姿に感動し、パワーをもらい、「好き」 ということはこんなにも心が満たされるものなんだと、気付かせてもらった。みんなに「ありがとう!」 と言って帰ってきた。
日焼けの跡が痛かったが、それ以上の感謝の気持ちと共に、また「好き」 を始めてみようと思った。
 
 
 
 
***

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2022-07-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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