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マウントはつらいよ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木喜勝(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
マウントを取られると、しんどい。
 
なんとなく「マウントをとられる」ということは女性だけの問題に思えるが、男だって取られる。
年収はいくらだ。車は何に乗っている。仕事で成果を上げた。無能な部下を叱ってやった。あと多いのは綺麗な女性と関係を持ったとか。
 
大学の友人達との飲み会は、そういうことだらけになった。
不甲斐ない私は、にこにこしながら「すごいねぇ」と聞いているものだから、相手は調子に乗って来る。仲の良い友人がいたのだが、社会人になっていろいろ変わってしまった。飲み会に行くたびに「だからお前はダメなんだよ」と始まるので、嫌になる。絶対になりたくなかった“酔っぱらい説教おじさん”に、友人がなってしまったことに一抹の寂しさを感じる。
 
「マウントを取る」という言葉の語源は、格闘技のポジションに由来する。
時々「山を登る」と勘違いしている女性がいるが、違う。仰向けの相手に馬乗りになった状態のことを「マウントポジション」という。
 
これがまた強いポジションだ。
まだ格闘技が発達していなかった頃。ヒクソン・グレイシーというファイターが、このポジションを得意としていた。日本人のファイターたちは、これで次々とやられた。もともと、日本の格闘技はパンチや、キックの「立ち技」が主流だった。けれど、ヒクソンさんの戦い方は「倒してから殴る」という物だった。とてもシンプルだけど、当時は「その手があったか!」という感じだったらしい。
 
あのポジションになったらもうおしまいだ! と思っていた。しかし、マウントポジションは最強ではない。
 
あらゆる格闘家が研究に研究を重ね、そのポジションから抜け出す方法がいくつも発見されたのだ。
例えばブリッチ。うまく相手をコントロールすれば、相手を横に吹っ飛ばして抜け出せる。他にも、相手の骨盤を手で押さえて、エビのようにびこびこ身体を動かしても抜け出せる。その他にも、やり方は様々だ。
 
趣味でブラジリアン柔術なんてものをやっていると、実際にこのポジションになってしまうことがある。けれども、抜け出し方は教わった。さぁ抜け出してみせるぞと意気込むが、うまくいかない。あれ? おかしいぞ? と思っていると、あっという間に腕や首ををグキッとされてしまう。稽古が終わった後、やり方はわかるのにどうしてうまくいかないんだろうと、ため息を吐いてしまうことが多い。
 
人間関係も、大半がうまくいかない。
本屋に行くと、人間関係についての悩みを解決する本がいくつも出ている。みんな、人間関係で悩んでいるのだ。私もその一人なので、それらの本をいくつか読んだ。いろいろなやり方はわかる。しかし、どうもうまくいかない。「それが出来たら苦労しないよ」というアドバイスばかりだ。
 
マウントを取られたら「相手は自信の無いかわいそうな人だから気にしない」とか言うけど、はいはいと黙って聞いていればいつまでもマウントを取り続けてくる。スピリチュアルな本なんかには「そんな相手にも感謝の気持ちを送ろう」とか書いてあったりする。出来るわけないだろ、私は聖人じゃない。
 
マウントを取って来る人だけでなく、人との関わり方はいろいろあるみたいだ。しかし、人はそれぞれ違う。だからこそ、本に書かれてあった通りの関わり方だけでは、どうにもならないこともある。つまり、その相手に会った関わり方を、試行錯誤していくしかない。
 
話を柔術に戻す。その後、私は試合でマウントポジションを取られなくなっただろうか?
 
稽古が終わった後、先生にマウントから抜け出せないことを相談してみた。
「何回も何回も抜け出し方を練習するしかない。それで、いつしか出来るようになる。だから、いろいろ試してみることが大事。その繰り返しで、自分独自の抜け出し方が見つかることもある」とのこと。
 
なるほど、と思った。結局は、練習あるのみ。
けれど、まだまだ取られる。方法をいくら学んでも、馬乗りにされる。
だが、それから腕や首をグキッとされることは少なくなった。何十回に一回は、マウントポジションから抜け出すことが出来るようになった。
 
柔術も、人間関係も、日々いろいろ工夫しなければいけないと思う。
マウントからの抜け出し方は、本屋に行けばいくつも開発されている。多分、いじめとか、上司との関係とか、部下との関わりとかも、結局自分で探し、自分で試すしかない。
 
もう一つ、先生のアドバイスで「マウントを取らせないことを考える」ということも教えていただいた。そう、“逃げる”のである。
 
私は、人間関係的な「マウントポジション」を取って来る人達との飲み会は行かないようにした。
この前も大学のサークルの飲み会があったが、私は行くのを断った。
楽しいはずの飲み会で、心が疲労して帰って来るのはバカバカしい。うまくマウントを交わすことも出来るだろう、そういう方法もいくつかあるだろう。けれど、その中から、私は“逃げる”を選んだ。
 
そんなリングからはさっさと降りた方がいい。ファイターでない我々が、余計なことで競わなくていいし、戦わなくていい。そうするともまた知らない場所で「あいつは逃げた」というような輩も、この醜い世界ではいるのは確かだ。けど、そんな奴らに勝っても何もならない。
 
でも、ふと思う。もう一度、マウントを取りあわなくたってよかった時代に戻れたらなと。
人間関係は難しい。けれど、どこかで誰かと繋がっていないと、寂しい。
だから今日も、人々は人間関係のことで頭を悩ますのだろう。
 
 
 
 
***
 
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2022-07-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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