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私によく似た小説のキャラクター


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田 隆志(ライティング・ゼミNEO)
 
 。
「自分に近い登場人物が出ている本を紹介してください」
 
この手の質問が来るといつも迷ってしまう。例えば、「よく似ている芸能人は誰か」とか「自分を動物に例えると」みたいなことを聞かれると真面目に考えてしまった挙句、結論としてどれも違うのではないかといってごまかしてしまっている。
 
しかし、今回ばかりはちゃんと答えないといけないようだ。この答えがその後の私の人生が大きく変わる可能性もあり、その変化を自分でつかみ取らなくてはいけない。
 
あの天狼院が何を思ったのか「Book Love」なる読書会を開いて、カップルを40組作るとか息巻いている。まったく、あの怪しいところはそんなところまで進出する気なのか?私も最初は冷ややかに自分とは関係ないと思っていたのだが、日を追うごとに気になり始めており、もしかしたらホントに40組のカップルができてしまうのではないかと、なんだかただならぬ気配を感じ、気が付いたら例のごとくPayPalのボタンをポチっていた。
 
そして「Book Love」に申し込んだ瞬間、例のごとく紹介文を穴の開くまで読んでしまい、最初はバカにしながらも遠慮していたが、「今度こそは」と鼻息荒くなってしまっている。
 
そう、これは革命なのだ。
 
ところで、オレによく似た登場人物が出てくる本ってどこに現れるんだ?
 
真っ先に思い浮かべるのは、恋愛に臆病な男子が偶然にも、有村架純のような美少女に出会うけど、ドキドキして声もかけられないけど、不器用ながらなぜか惹かれあってそして結ばれるっていうストーリーなのか?
 
私はこれまで、美少女に出会ってもなかなかうまく言葉が出てこなくて、声をかけられないことはこれまでに何度もあった。デートどころか挨拶もろくに出来ないことも1度や2度ではなかった。それでも、お互い不器用で口下手ながらも思いを伝えることができるというのは、私らしいのかもしれない
昨年、有村架純の主演映画で「花束みたいな恋をした」では、大学のサークルか何かで華やかな友人の影でひっそりと過ごしていた陰キャの2人がたまたま同じ終電を待ちながら、お互いの趣味や考え方に惹かれあい、やがて二人は結ばれるシーンには胸が締め付けられた。有村架純のような美女のこんな風に付き合うことができればどんなに幸せかと本気で思ってしまった。
 
でも、「花束みたいな恋をした」の俳優は菅田将暉じゃねえか。こんなの絶対オレじゃ無い。もし私がこれを発表しようもんなら、会場は失笑の嵐で凍り付いてしまうの間違いなしだ。映画だけでなく小説も出ているけど、イメージは完璧に菅田将暉と有村架純だ。いくら奥手で華やかな場所が苦手がというのが共通点でも私が付け入るスキはどこにもない。ラブストーリーから探すのはやめておこう
 
さすがに恋愛小説から私に似た登場人物を探すのは無理があったので、他のジャンルから探してみることにしよう。
 
私と似たようなキャラがいそうなのは、やっぱりお仕事小説になるのだろうか?
 
改めて、自宅の本棚をざっと見返してみると、一冊の本がなぜか鈍い光を放ち、「お前に合う本はこれだ」と存在感を出していた。
 
「わたし、定時で帰ります」
 
この本は、平成も終わりを迎えるころに読んだ本であり、テレビドラマでも吉高由里子が主演で高視聴率をたたき出し話題にもなっていた。
 
主演の吉高由里子は「絶対に定時で帰る」ことを信条にしており、グータラと見られて同僚から非難をされることもあるが、決してグータラではなく、効率的に業務をこなし、やるべきタスクは定時内に片付けている。
 
平成の終わるころでは、「働き方改革」という言葉がバズワードとして浸透し始めて、長時間残業から、ワークライスバランスの向上ということで生産性が見直されるようになってきた。それでも、会社を残業することなく定時内で仕事を終わらせるのは、現実的には難しかった。
 
2019年当時に読んだ時には、時間内に仕事をきっちり終わらせて、必ず定時に帰宅する吉高由里子がうらやましくも眩しく映ってしまった。さらには、小説の舞台が適度にブラックな会社だったので、現実に私が所属する会社や上司を重ね合わせて、吉高由里子の働き方に感銘を受けて生産性ばかりを求めるようになった。
 
しかし、定時内に仕事をきっちり終わらせる生産性の高さと、仕事とプライベートをきっちり分けるマインドに憧れの気持ちはあるけれど、何となく「これじゃない感」をずっと持っているのも確かだ。
 
一方で、吉高由里子の同僚でいわゆる「皆勤賞女」が1章から登場する。彼女は長時間残業や休日出勤が当たり前で、病気になったとしても無理して出勤するくらいだ。そんな彼女の価値観からすれば、いつも定時で帰って有給を普通に使う吉高由里子が信じられない。
 
さらに悪いことに、「新人は教えてもらう身分だから休むなんてとんでもない」とか「朝は誰よりも早く来ること」と古臭い価値観で説教している。
 
私が見ても残業や休日出勤を新入社員に押し付けるのは、やはりおかしいと思わざるを得ない。この会社にはまともな社員はいないのか……
 
そんな「皆勤賞女」がせき込みながら新入社員を説教していると、こんな風に言い返されてしまった。
 
「そんなに長く働くのが偉いのですか、皆勤賞をとったって仕事で結果が出せなきゃしょうがないでしょ」とお前が言うかとツッコみたくなる新人に言い返されてしまった。
 
すると、皆勤賞女は図星をつかれてしまったのかその場で泣き崩れて何も言い返せなくなってしまった。
 
残業や休日出勤もいとわず、真面目にコツコツと業務に取り組んでいたのは、才能に恵まれずただ愚直に一生懸命だった価値観が音を立てて崩れた瞬間だった。
 
私自身も帰宅が22時を超え、休日出勤が当たり前のようにあり、疑問を持たずに受け入れていたこともあった。さすがに、同僚に休日出勤を押し付けるようなことはしなかったものの、「なんでこいつより評価が低いんだ」といつも毒づいていたぐらいだから、結局同じ穴のムジナであり、定時で帰る同僚を受け入れることができなかっただろう。
 
思い返してみれば、とにかく一生懸命仕事をするのは裏を返せば「臆病」だからだったのだと思う。臆病さゆえにとにかく真面目に一生懸命であり、そうではない価値観が受け入れられなかったのだと思う。
 
「真面目で一生懸命」なキャラが自分であると紹介するのはやはり抵抗があるが、臆病さゆえに定時で帰ることや有休を申請することができずに、こじらせてしまうところが似てしまっているのだと思う。
 
幸か不幸か、私はしっかり休みを取っており、業務の効率を見直しながら19時には帰宅できるようになっている。
 
しかし、いつまで経っても臆病さが抜けきれず、いつも自分の才能を信じ切ることができないでいる。
 
最近では、「臆病を極める」という言葉もある。臆病な私を認めてBook Loveに臨んでみようと思う次第である。

 
 
 
 
***
 
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