メディアグランプリ

分析症という病


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:木田 和廣(ライティングゼミ・4月コース)
 
 
分析が私の仕事である。
 
与えられたデータを、もしくは、自分で収集したデータを分析する。分析が優れていれば、顧客に、それまでに得られていなかった気づきをもたらすことができる。結果として、目的合理性の高いアクション、結果の再現性の高いアクションを起こしてもらうことができる。そんな形で顧客のビジネス成長に貢献し、分析に対して対価をいただく。
 
主に取り扱うデータは顧客のWebサイトへ訪問したユーザーの行動データだが、自分で理解できる範囲のデータなら、何でも分析する。衣料品の店舗に設置した複数台のIoTカメラが収集したデータにもとづき、店舗内のレイアウトを改善するための分析、マンションの建築現場で働く複数の専門分野の職人さんが効率よく作業を進行できているのかを可視化し、作業効率改善の余地を見つけるための分析。などだ。
 
分析には歴然として優劣がある。したがって、分析者にも優劣がある。プロの分析者のはしくれとしてこの仕事について13年余り、よりよい分析者になるべく自分なりに努力してきた。
 
結果、分析が大好きになってしまった。
 
分析が好きになる兆しは、昔から見えていた。それに、分析を強みにしてキャリアを拓こうと意識もしてきた。というのは、ストレングスファインダーという診断手法で「あなたの強みは分析かもしれませんよ」と診断されていたからだ。ストレングスファインダーは有名なので受けた人も多いと思う。知らない人のために簡単にどのような診断なのかを説明すると、人間の資質を34に分類し、そのうちもっとも高く持っている5つの資質を「強み」として教えてくれるものだ。その診断の結果、私の強みは強い順に以下だったのだ。
 
分析思考、学習欲、達成欲、目標志向、コミュニケーション
 
分析思考を強みとして持っていること、分析が大好きなことは優れた分析者になる上で有利この上ない。ここで強力な正のループが発動した。「自分は分析が強みなのだと認識する。分析に関する学習をする。分析が上手になる。価値ある分析結果が出てくる。顧客に喜ばれる。分析が好きになる。」そして、病膏肓に入る。
 
仕事でもないのに、つまり、お金も貰えないのに、お客さんもいないのに、誰にも命令されていないのに、なんでもかんでも分析したくなる病気、そう、分析症である。
 
別にいいじゃない!? と思うだろう。しかし、これが困ったものなのだ。
 
ちょっと、わたしの状況を頭に浮かべてほしい。今、日曜日の午前中だ。やりたいこと、やらねばならぬことが列をなしている。やらねばならぬことだけでも、来週火曜日に迫った自分が講師をする2時間の尺のウェビナーのスライドのチェック、出版が決まっている書籍の原稿の執筆、ライティングゼミという天狼院書店主催の文章講座の課題原稿の執筆、などである。特にライティングゼミの課題提出の締め切りは明日だ。2000字の原稿を書かなければいけない。もう14週連続で提出しており、ネタはとっくに枯渇している。ただ、ここで連続投稿を途切れさせたくない。どれだけ唸ればネタの神様は降りてくるんだろう。
 
そんな、やること目白押し状態のあなたに、分析症は語りかけてくる。
 
「講座には何人参加しているんだろうね?」、「14回皆勤で課題を提出しているあなたみたいな人は何人いるのかな?」、「提出した課題が”コンテンツ”、つまり読み物として成立していると天狼院のウェブサイトに掲載してもらえるのだが、もちろん毎回掲載される訳ではない。提出した課題のうち、掲載された回数の割合を”掲載率”とすると、わたしの掲載率は何%くらいだろう?」
 
分析症が、「分析せよ、分析せよ」と語りかけてくる。
 
「いや、それを知るには、Facebookグループの全受講生の投稿を、4月中旬まで遡って全部、拾ってくる必要あるんだよ。無理だよ」あなたは答える。しかし、分析症は許してくれない。かくして私は、Facebookグループを延々とスクロールダウンし、どの受講者の方が、いつ課題を提出し、それに対して、講師の方(女性のメイン講師の方と、男性のサブ講師の方がいて、週替りでフィードバックを担当してくれる)が付けた採否を拾い上げるという作業をする。受講者は数十人、その人達の最大14回分の投稿履歴が対象である。スクロールする。投稿を見つける。採否を確認する、エクセルに転記する……。実に退屈な、いつ終わるのかもしれない作業だ。実際2時間半かかった。
 
普通に考えれば、2時間半もあればウェビナーのスライドチェックは終わるだろう、書籍の執筆だって進められる。2000字の原稿だって書けてしまうに違いない。一体、わたしは何をやっているのか? せっかくの休日を退屈な作業で無駄にする気か?
 
これが分析症の怖さである。
 
しかし、データ収集後は楽しかった。以下が結果だ。
 
●講師の先生たち、すごい。一人の講師の方にとっては隔週とは言え、十数から数十編にのぼる受講者の原稿を読んで、採否を決め、フィードバックしてくれる。もちろん仕事なんだろうが、頭が下がった。
●予想通りだが、提出率(提出数÷受講者数)は回を追うごとに下がっていった。直近の回では40%を下回る結果となった。
●14回連続で課題を提出している人は、全体の24%程度いた。私もその中の一人だが、講座終了までのあと2回、脱落せずに頑張って課題を提出しようと思えた。連続して投稿している他の受講生の方々に深い親近感を覚えた。
●14回連続で提出している人の中に掲載率が85%以上の受講生がいた。すごい。私の場合は64%だ。
●掲載率は、講師の先生によって結構差がある。メインの女性講師の先生の方がだいたい高い。サブの男性講師の先生は結構厳しく、掲載される難易度がより高い。サブ講師の先生に採用してもらえたら、より誇らしく、嬉しく思って良いと思う。
 
あーぁ、スッキリした。これで分析症も満足しただろう。
 
そうだ、この分析をネタにして原稿を書いて、提出しよっと。

 
 
 
 
***
 
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2022-07-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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