メディアグランプリ

迷ったら飛び込んでみよう、バンジーも人生も。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:関田 信吾(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「なんか刺激的なことないのかね~」
社会人になって3年目、一通り業務にも慣れ、自分の仕事でも少しずつ「色」を出せるようになってきたときに、大学時代の友人Kと久々に会った。
Kとは大学時代にもともと同じ部活に入っていて、彼が部活をやめてしまった後も、同じ寿司屋で3年半ほどアルバイトをしていたこともあって仲がいい。私は1年大学を休学し、Kは大学院に進んだため、私のほうが社会人歴は1年長いのだが、Kも社会人2年目になって少しずつ仕事に余裕が出てきたのか、何か日常とは違った毎日を求めるようになってきていた。
「大阪にいてもいつもと同じ日常だもんな~。いっそどこか旅行でも行く?」
なんとなく大阪にいて同じ土日の繰り返しではつまらない気もしていたし、思い切って場所を変えて楽しんでみよう、ということで私とKは旅行に行く先を探し始めた。
 
しばらくしてKがインターネットで探し当ててきたもの、それは「日本一高いバンジージャンプ」についてのインターネット記事だった。その記事によると、ちょうど一年ほど前の2020年8月に、日本一高低差の大きい200m越えのバンジージャンプが岐阜にできたらしい。旅先はここで決まりだ、と言わんばかりのKを尻目に、私は正直あまり気乗りがしなかった。旅行に行く予定の時期は11月の末だ。バンジーがある岐阜の山奥なんか、絶対に寒いに決まっている。
しかも私は、それ以上に高いところが苦手だった。東京タワーの、床が透明な窓ガラスになっている部分でさえ、足がすくんでしまう。岐阜の山奥の橋の上から、谷底に向かって200m以上も身一つで自由落下するなんて、考えられなかった。
でも今まで経験したことのないことをやってみたい、新しい刺激的なことを経験したいという気持ちは私にもあった。
尻込みしていた私に向かって、Kはこう言い放った。
「迷ってるんだったらさ、とりあえず飛び込んでみれば?怖い怖いと思っていても、実際やってみれば思ってるよりたいしたことないかもよ?」
Kの一言に背中を押され、私は人生で初めてのバンジージャンプにトライしてみることになった。
 
そこからの段取りは早かった。ほかに同じ部活に所属していた友人を2人集め、すぐに宿の手配とバンジージャンプの予約を手分けして行った。オープンから一年経過しているとはいえ、バンジージャンプはよほど人気なのか朝の8:30からの予約しか取れなかった。
近くの宿をとったにもかかわらず、バンジージャンプの場所まで1時間ほどかかるため、宿での朝食についてはあきらめざるを得なかった。しかし今回の旅の目的はバンジーだ。むろん、すべての日程はバンジーを中心に組まれることになる。
断念せざるを得なかった朝食の代わりに、前日の夜は宿で豪華な夕食を済ませ、温泉に浸かってゆっくりと疲れを取りながら翌日のバンジージャンプに備えた。
 
翌朝、早起きをして、寝ぼけ眼のまま準備を済ませ、バンジージャンプの舞台となる橋へと向かった。到着が近づくにつれ、少しずつ緊張してきた。その一方で、朝食も食べずに朝の8:30から日本一高低差の大きいバンジージャンプとは、今後の人生でも間違いなく最大の目覚ましになるだろうな、なんてくだらないことを考えてもいた。
 
会場に着いたら簡単に受付を済ませ、その後命の保障はない旨の誓約書に署名をさせられさらに緊張が高まっていくのを感じた。バンジージャンプ用のジャケットのようなものを何重にも重ねて着せられたが、1枚着ていくたびに、服の重さ以上に体が少しずつ重くなっていった。
 
いよいよ服装などの準備が終わり、レクチャーを受けて飛び降り台のあるところまで5分ほど歩いた。飛び降り台のすぐ裏手で、バンジーに挑む順番の説明があった。同じ時間帯には、私たち4人のほかにも2人組がいた。にもかかわらず、よりによって、私の跳ぶ順番は一番最初だった。
高いところが苦手でありながら、トップバッターになってしまうなんて……。よりにもよってほかの人がどんなふうに飛ぶかを見て、イメージをすることすらも許されないとは……。
しかし、ここまで来たら腹を括ってやるしかない。気持ちを切り替え、安全ハーネスを身に付けてもらって飛び降り台の先端までゆっくりと歩を進めた。バンジージャンプのスタッフの方は全員外国の方で、カタコトの日本語でコミュニケーションをとってくれたのが、さらに異様な雰囲気を増大させた。果たして生きて帰ってこれるのか?
 
「飛ぶときまで下を見ないように」というアドバイスを忠実に守り、飛び降り台の先端にたどり着いた。下さえ見なければ、意外と足がすくむこともなかった。それどころか、赤や黄色に紅葉した山々の景色がとても綺麗だ。大自然の空気を大きく胸に吸い込み、ゆっくりと吐き出すと、スタッフのカウントダウンに合わせて谷底に向かって思い切りよく飛び込んでいった。
 
すごく気持ちいい。まるで大空を飛んでるかのようで、どんどん地面が近づいてくる。風を切るように進み、勢いよく地面に向かって突っ込んでいくかに思われたところで体につながれていたゴムが伸びきって自由落下が止まった。爽快な気分だ。旅行を計画していたころのどちらかといえば鬱屈な気持ちは、いつの間にかどこかに消え去っていた。一歩踏み出したことで、また新しい体験をすることができた。
 
今回、高いところが苦手な私が人生で初めてバンジージャンプに挑戦することができたのは、Kの後押しのおかげだった。Kの一言がなければ一歩踏み出すこともなく、秋の岐阜の紅葉の景色の綺麗さや、その中をものすごいスピードで落下していく爽快感も、知ることができなかった。バンジージャンプをし終わった今振返ってみれば、恐れていた谷底への一歩なんて、実はたいしたことはなかった。必要以上に怖がりすぎていたのだ。
 
同じことは、人生でもよく起こっているんじゃないかと感じる。なんとなく恐れていて一歩踏み出せない。行動できない。そんな場面に私たちは幾度となく出くわす。
しかしその恐れは、実際にやってみると思っていたよりも全然たいしたことなかった、なんてことはよくある話だ。しかも今回のバンジーの体験で私は今まで知ることのなかった爽快感を得たように、実際に一歩踏み出してみると今まで見えていなかった新しい世界が見えてくることもある。それどころか、動き出さなければ何も得ることができないのだ。そんな学びを、このバンジージャンプの体験から得ることができた。
バンジージャンプも人生も、迷ったら一歩踏み出してみることをおすすめする。そうすれば、新しい世界が見えてくるかもしれない。
 
 
 
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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