メディアグランプリ

実は、すごいのかもしれないママチャリのネーミング

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松尾麻里子(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
(ええい、忌まわしい・・・!)
いくら、マンションの敷地内が出入り自由とはいえ、我がもの顔で自転車を平気で置いていくのは、さすがに、マナー違反じゃないのか。
今日も、何食わぬ顔で置いていく諸君。いい大人が恥ずかしいぞ。
 
騒がしい蝉の声と、私のじっとりとした視線を、皆さま、全く気にすることもなく自転車を置いて軽やかに駅の方へと去っていった。
やがて、私の視線は、しゅんと下降していくのだった。
 
(せめて、もう少し、悪気ある素振りをしてくれよ〜。)
 
心の中ではそんなことを思いつつ、駅前、出入り自由、そりゃ、駅近の有料駐輪場と比べたら、こんなに便利な場所はないよな、タダだしと、と毎日ここを通るたびに我が住処を呪っているわけだが、ある朝、いつものように、苦々しい思いで敷地内を歩いていると、ふと、一台の自転車が目に入った。
普通のママチャリなのだが、貼ってあるステッカーらしきものには、
 
「F A T C A T」と書いてある。
 
おや、何かがおかしいぞ。
自転車に、直訳すると「デブ猫」なんだろな、この違和感。
 
その名前をつけたセンスはよくわからないけれど、この日を境に、駐輪場や横断歩道で見かける自転車のステッカーに自然と目がいってしまい、今や、しびれる名前を持つ自転車に出会うことが、私の秘かな愉しみになっていた。
 
主に、しびれるネーミングセンスを披露してくれるのは、
通称ママチャリと呼ばれる一般的なシティサイクルが多く、おしゃれな高級マウンテンバイクや、アシスト付き電動自転車など、有名メーカーの商品にはほとんどといって、F A T C A Tのような斬新な名前はついてはいないようだ。
 
では、私が見つけた素敵な名前を持つ自転車たちの一部をご紹介しよう。
 
O F F I C E  P L A C E(オフィスプレイス)
究極のサテライトオフィスなのか。
Y E S  W E  C A N(イエス ウィーキャン)
昔、流行りましたね。
M I M O S A(ミモザ)
植物・・・?
C O C O N U T(ココナッツ)
車体は確かに白いけど・・・
A G E N D A(アジェンダ)
会議ではよく使いますね、「本日のアジェンダは・・・」とか。
S C A L A B E S T Y L E(スカラベ スタイル)
スカラベはフンコロガシの一種で、つまりフンコロガシスタイルという意味になりますが・・・。
 
一体、なぜ、このような名前をつけるのか。
とても気になったので、国内自転車メーカー大手、アサヒサイクルのお客様問い合わせ窓口に勇気を持って質問をしてみた。
 
《質問》
なぜ、自転車の名前には、いっぷう変わった名前がつけられているのでしょうか?とても気になるので、教えてください。
 
こんな愚問に対しても、アサヒサイクルさんはしっかりと即レスで回答をくれた。
 
《回答》
どのような名前が変わっているかは存じ上げませんが、自転車の商品名の決定に関しては、社外に公表しておりませんので、お答え出来かねます。
ご了承ください。
 
なるほど。ありがとうございます。アサヒサイクルさん。
 
もう、これは想像するしかないか。
 
7月、とある自転車メーカーの会議室にて、今日招集されたのは、サイクル事業部、マーケティング2課の部長をはじめ、以下メンバー
 
「11月に販売する新しい自転車の商品名について、企画会議を始めます。」
「今回、販売をするのは、26型、シティサイクル、カラーはシルバーとブラックです。」
「黒か、B L A C K H A L L(ブラックホール)はどうかな。」
「部長!それ、いいですね!」
「そうだろう、なんか底無しに速そうだろ」
「あ、すみません。既にその名前は商標登録済みです。」
「そうか。では、B L A C K C A T(ブラックキャット)は?」
「すみません、それも既に・・・。」
「そうかー、では、最近、流行っている言葉とか、よく聞く言葉は?」
「B I G B O S Sはどうすかね?」
「あ、新庄かー。」
「T E A M Sとか、マイクロソフトに怒られますかね?」
「ギリZ O O Mとかならいけんじゃね?」
「じゃ、O N L I N Eは?」
 
うーん・・・。
 
「最近、友達が、俺は焚き火のエバンジェリストだって、言い出したんですよ。流行っているじゃないですか、ソロキャンプとか。俺、エバンジェリストって知らなかったんですけど、調べたら、伝導師って意味らしくて、なんか、カッコよくないすか?」
「エバンジェリストか、なんか響きがいいな」
「E V A N G E L I S Tか、それいいな、それにしよう!」
 
あくまで、この企画会議は、私の勝手な想像だが、
やってみて一つ思ったことがある。
 
自転車の名前をつけるって実はとても難しいかもしれない。
26型、ブラック、シルバー、シティサイクル、というキーワードで、商標登録にない名前を探さないといけないのだが、例えば、色にまつわる名前の検討を始めようにも、“自転車らしい“を意識すると、ぴったりの名前が案外浮かんでこない。だから思ったのだが、何の関連もないF A T C A Tという名前を付けるって、実は、すごいのかもしれないと。
たまたま、目の前を太った猫が通り過ぎたか、自分が飼っている猫がそうなのか、背景はわからないが、斬新な名前を持つ自転車達については、今もなお、謎が残ったままである。
 
皆さんもぜひ、ご自分の自転車をあらためて見てみてください。
どんな名前がついているでしょうか?
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325



2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事