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私かわいくないもん!日本のかわいい文化と、かわいい至上主義


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記事:冨井聖子(ライティングゼミ4月コース)
 
 
「ママ、きいて。ママはかわいいのに……。なんで、ちぃはかわいくないねん!」
 
小学3年生の娘のちぃは、最近【かわいい】というものに目覚めたところである。
これがかわいい。
あれがかわいい。
キャラクターの【かわいい】はよく言っていた。
しかし、最近は、人間に対して言うようになった。
「〇〇ちゃんはかわいい」
その後に続くのは「でも私はかわいくない」なのである。
そのような価値基準を、教えたつもりがなかったので、これは興味深いなと思ってしまったのだ。
 
かわいさなんて人それぞれだし、蓼(たで)食う虫も好き好きである。
そんなことを言ってしまっては、娘との会話は成立しないし、娘も納得しない。小学校3年生が知っている語彙力で【蓼食う虫も好き好き】を説明するには、どうしたらいいんだろうか?
 
私の娘は、私のことをよく褒めてくれる。
かわいいとか、その洋服ステキとか、表現してくれる。つまり、娘も褒めて欲しい子なのだ。だからこそ、私も、たくさん褒めるようにしている。
「ママ、今日、かわいいね!」
「ちぃだって、かわいいじゃん」
というのが、我が家の通常の会話である。
しかし、かわいいって、大人に言うのは恥ずかしいのかもしれない。
現在、絶賛35歳。かわいいという褒め言葉とは、一線を画したいお年頃である。正直、きれい、かっこいい、すてき、のほうが嬉しかったりもする。
 
でも、いくつになってもかわいいが通用するのが日本である。かわいいものであふれているのだ。
郵便局にも、くまのキャラクターがいるし、電車にキャラクターがラッピングされることもある。街を歩くだけなのに、イラストを見ない日はない。
世界の人気キャラクター(TitleMax制作、総収益の世界ランキング)を見ても、1位から10位までに5種類もの日本のキャラクターがランキングしているし、世界のミッキーよりも、プーさんよりもポケモンが上なのだ!
海外では、日本語の「かわいい」を「Kawaii」と表記するのも【日本独特の文化】として定着している気がしてくる。
 
とはいえ、私にも同じ時期があった。かわいさ至上主義であり、比較して自己否定になりやすいのが、思春期のひとつの側面かもしれない。なかなか「自分ってこうだから」と振り切れない時代なのだ。
そんな多感なときに、初めてできた彼氏。別れた原因は、彼の浮気という大事件があった。
自分の価値が、本当にゼロになった気がしてしまった。私がもっとかわいかったら、こんなことが起きなかったんだと、思い込もうとした。
 
その時は部屋から出ない。
ベットの上から降りない。
生活圏内90cm四方。
丸くなって、布団をかぶって、心も布団もじめじめしていた。
母も、見るにみかねたのだろう。部屋に入ってきて、こう言い放った。
「自分の顔って、一生の付き合いでしょ?自分の顔ぐらい、自分でかわいいって思ったほうが得だよ?だって、他人にかわいいって言ってもらえるかどうかなんか、わからないじゃない。でも自分に対して言うんだったら、いつだって言えるもの」
心も顔も湿度90%の私は、こんな顔のどこを見て、そんなことを言うんだろうと、心の中で舌打ちをした。
 
でも、今考えると本質的だな、と思えるから不思議だ。
 
現実問題、他人にかわいいと言われることを目的としていたら、それはなかなかに難しい場面が多い。でも自分自身が、自分のことをかわいいってつぶやくのであれば、1秒でできる。
これを読みながらでもつぶやける。
誰にも迷惑をかけることもない。
幸か不幸か、コロナ禍のためにマスクをつける習慣ができた。
そのため、小さい声で「私って最強。マジ天使。私、かわいすぎる」と、つぶやけるのである。びっくりするほどのナルシスト発言で歩いていても、誰にもバレることがない。マスク様さまである。
 
結局のところ、身もふたもないことを言ってしまえば【かわいい】こそ人の価値観なのだ。
誰かと比べるものでもなければ、比較する定規も時代と共に変わる。平安時代の美人と、令和の美人は基準が違うと聞いたことがある。結局あやふやなものなのだろう。
 
さて、悩める小学3年生。
そろそろ解決策といこうではないか。
 
「ねこちゃんはかわいい?」
「かわいい!!」
「ハムスターはかわいい?」
「うん、かわいい!」
「犬は?」
「ちぃはネコのほうが好きだけど……犬もかわいいと思う!」
「どれが1番かわいいの?」
「ねこちゃんが1番かわいい!」
「それは、ちぃが、ねこちゃんが1番好きなんだね。ハムスターも犬もねこちゃんも、それぞれ、かわいいんでしょ?」
「全部、かわいい!」
 
はっと気づいた娘は、満面の笑みで私に抱きついてきた。そして、2人でクスクス笑いながら、ヒミツの話をしたんだ。
 
ちぃもかわいい。
ママもかわいい。
これでいいよね。
これがいいよね。

 
 
 
 
***
 
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2022-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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