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メディアグランプリ

甥っ子が教えてくれた大切なこと


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記事:みなみあすか(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
「あ……折角できたのに……」
ギラギラ光る太陽の下、蝉の鳴き声が響き渡る公園で甥っ子と砂遊び。
コロナ禍でなかなか帰省ができなかった間に久々会う甥っ子は随分成長していた。
「公園に行く」と自ら主張し、「遊ぼう、遊ぼう」と覚えたての言葉を使って、
道具を携え近くの公園に私を連れていく。
前回会ったときにはベビーベッドの中で寝ていた子が自ら意思を示し、行動している姿を客観的にみて、「人間の成長ってすごい……」と心の中でつぶやく。
公園につくと一目散に砂場に行って、砂で山をつくったり、山にトンネルをつくったり、また、できた山に水をかけてみたり……と自分の世界に入って黙々と創り上げていく。そんな姿を懐かしく、面白がるように眺める。「私もそんなふうに砂場で遊んでいたっけ?」
毎日忙しく時間に追われて仕事に明け暮れていた私にとって、久々触れる子供の世界。
流れている時間も空間も違う。純粋に面白くて新鮮な感覚。
そんな色々な想いを頭の中で巡らせている間に、砂場にある造形物が増えている。
山だけでなく、今度は色々な大きさの泥団子が砂場の淵に並べられていた。
「みーちゃん、どうぞ」とその泥団子を私に手渡そうとする。
「ありがとう」と泥団子を手に「よくできたわね。美味しそう」
甥っ子は嬉しそうな笑顔を向けると、再び砂場にそそくさ戻り次の作業へ取り掛かった。
休む間もなくその世界に集中している、その集中力のすごさ。
好きなことにまっしぐらに取り組む姿勢に「色々学ぶものがあるな~ 」と甥っ子の姿から感じる。
気温がドンドン上昇し、うちわであおいでいる空気も熱風になってきて、そろそろ帰ろうかな・・・と思うとき、砂場の中の世界はさらに広がっており、いくつかの山ができあがっていて、その山と山をつなぐ道が作られ、川に見立てているのか水を流そうとしている。どんどんひろがっていく世界に、
次はどんなものを作るんだろうか? とついつい暑さも忘れてしまう程惹きこまれる。
 
と、次の瞬間……。
創り上げた世界をシャベルで壊し始める。
「えっ、折角できたのに……。せめて写真を撮っておけば良かった……」
後悔しきりの私とは違い、甥っ子は満面の笑み。
「何故?何故?」 私の頭の中は疑問符だらけ。
創るのも楽しいが、壊すのも同じくらい、楽しそうなのだ。むしろ壊すがテンションが高そうでもある。
なんてこと……。子供って不思議。
 
大人になると創り上げたものに固執しがちになってしまう。それを手に入れるまでの時間と努力が大きければ大きいほど手放しは難しいものになる。
しかし、子供たちは壊すことを恐れていない。
創り上げた砂山を崩したり、積木を崩したりすることを楽しめるのは、壊した後には何かもっと新しいスタートがあるとワクワクする感覚を嗅ぎ取っているかのようである。
破壊の後にある進化を本能で知っているかのように……。
 
その後、私は大きな決断をした。
ずっと踏み切れずにいたが、甥っ子と過ごした夏休みのあとに30年勤めた会社を退職し、
転職をしたのである。
 
愛着のある会社、仲間達、そして積み上げてきたキャリアを考えるとなかなか決断が難しい。
辞めさせられるなら諦めもつくが、自ら退職届を書いての退職となると、根が大きく張った大木を引き抜くかのような辛い体験であった。後ろ髪をひかれ、胸を引き裂けられるような思いの中、
「いっそのこと退職届を出さずに、このままいたほうが楽かもしれない……」
何度も退職届を書いては捨て、書いては捨て、何度書いただろうか。
 
その時、甥っ子と遊んだ砂場の光景をふと思い出した。
砂場で夢中に作り上げたものを、スパッと崩して満面の笑みの甥っ子の表情がよぎる。
「そうか、何を悩む? 壊した後に出逢う新しく生まれるものにフォーカスしてワクワクしようよ」と自分に
言い聞かせ、「さあ、前に行こう!」
過去との決別というより、その後に待っている新しい道を楽しもうと後押しされた。
 
そして、退職届を出した。
もう後戻りはできない。砂山を壊して満面の笑みの甥っ子のように楽しむ気分にはなれなかったが、
ワクワクしようよ……と言い聞かせ、引きつり笑いの私だった。
 
そして、新しい会社に入社した。
またゼロからの出発。
30年ぶりに新入社員になった。ひとつずつ新しく覚えることも、新しく仕事で出会う人も何もかもが新鮮である。手放すときには想像しえなかった、新しいチャレンジへのワクワク感が湧き上がってくる。
「これで良かったのだ」と自らの決断に納得した。
 
新しいオフィスのデスクから見える景色に目を向けると……。
眼下に見える景色は福岡市が進めている天神地区の再開発プロジェクト「天神未来創造-天神ビックバン」がまさに進行している光景だった。
天神をアジアの拠点都市にしようとまさに生まれ変わろうとしている。
昨年までよく買い物で出かけていたビル群が全てきれいに解体され平地になり、基礎工事がはじまり、新しいビルの建設段階に入っていた。
昔のビルは跡形もなく、前のビルの姿も記憶から遠ざかり、未来へ目が向いていた。
「どんな建物が立つんだろう?」
その工事の光景を見守りつつ、街の再生にワクワクする。
 
「破壊と再生」
「この街の状況は私の今の境遇と同じじゃない」
妙な親近感が湧いていた。
 
「手放さないと新しいものは手に入らない」
破壊は創造のためにある。
 
甥っ子と過ごした夏休みに大切なことを教えてもらった。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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