メディアグランプリ

レッツ食リポ!(昆虫編)


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記事:小畑 泉彦(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「まるで〇〇の宝石箱やあ~」
某タレントが得意とする食リポの定番コメント、一度は聞いたことがある人も多いだろう。
テレビ番組だけでなく動画配信等のメディアでも食リポは気軽に楽しめるコンテンツだ。
 
しかし料理を食べてその場で適切な感想を述べるという行為は、豊かな表現力が必要になるので実際は難易度が高いはずだ。私は舌が肥えていないうえに語彙力も貧困であるため、どんな有名店の看板メニューだろうと「おいしい」「うまい」「やばい」で片づけてしまう。これでは料理人がせっかく腕を振るった一品の素晴らしさを世間に共感してもらうことは難しい。
 
ところで世界では食糧不足が社会課題になっている。国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書ではこうした食糧問題への取り組みとして、栄養価が高く低コストで飼育できる昆虫食が挙げられているという。昆虫にはタンパク質などの栄養が豊富なのだそうだ。最近では昆虫食を商品化する企業も増えていると聞く。日本では馴染みが薄いものの、アジアでは食虫が盛んな国も多い。これからは食リポで昆虫食を扱うことが増えるかもしれない。
 
そんなある日、私にも昆虫を食する機会が訪れた。常連であるバーのマスターが食用タガメからエキスを抽出したカクテルを開発したという。いきなり昆虫を食べるのには抵抗があるが、飲むだけなら……と店に赴いた。例のカクテルをオーダーしようとした際、私は何を思ったか「タガメ、食べてみてもいいですか?」と口走ってしまった。同行していた妻も「えっ、マジで?」という顔をしていた。
 
知り合いに全国を取材して回る記者がいる。彼は取材先でいろんなグルメを楽しむのだが、海外ではゲテモノ料理も積極的に食べるという。そのときにどこかの国でタガメも食べたそうだ。あくなき好奇心で「俺は自分が知らないことを無くしたいのだ」といつも言っていた。人はさまざまな経験を通して成長していくものである。そんな彼の言葉に影響されてか、私もタガメを食すことで一皮むけたくなったのだろう。
 
マスターはどこか嬉しそうに食材であるタガメを小皿にのせて差し出してくれた。ちゃんと食用として処理されているので害は無いが、私はそのビジュアルに気圧されてしまった。ああ、これは正真正銘のタガメだ(タガメを知らない人はぜひ自己責任のもと、ネットで画像検索をしてみてほしい)。
 
昆虫のフォルムが哺乳類や魚介類とは大きく違うのは言うまでもない。そういえば昆虫は宇宙からやってきた生命体であると主張する「昆虫宇宙起源説」という説を聞いたことがある。他の生物が徐々に進化の過程を経ているのに対し、昆虫は現在とほぼ変わらぬ姿で地球の歴史上にいきなり現れていることからその説が唱えられているらしい。もちろん真偽は定かではないが、なんとなくロマンを感じてしまうのは私だけだろうか。そう考えるとタガメをここで食すことは、宇宙を感じると言えなくもない(たぶん感じられない)。
 
だがタガメを頭から丸かじりするのはさすがに気が引けたので、マスターにお願いして胴体から脚を取り外してもらい、まずはそれを口に運んでみた。予想通り固い。勇気を出して噛んでみると口内にタガメの味と香りが展開された。食リポ苦手の私がそのとき実際にバーで述べた感想をお伝えしよう。
 
「きれいな泥の味がしますね」である。
 
泥を食べたことがないのになぜこの表現が浮かんだのかはわからない。タガメはきれいな水にしか生息しない昆虫なので、当たらずといえども遠からずと思いたい。これが食リポ番組だったらディレクターは次回から私を降板させるだろう。
 
結局、泥味にひるんでしまいメインの胴体までチャレンジすることはできず、ヘタレな私の昆虫食チャレンジはあえなく幕を閉じた。ちなみにカクテルの方はというと、泥どころかとてもフルーティな香りでタガメから抽出されたものとは思えない美味しさだった。人は見かけによらないと言うが、虫も見た目によらないものだ。
 
日本でも古くから一部の地域でイナゴやハチの子などの食習慣はある。けれども日常の場面で「給料も出たし今夜は豪勢にバッタでも食うか」とはならないし、スーパーで昆虫食コーナーを見かけることもない(あくまで私の生活圏内での話だが)。我々の生活に昆虫食が定着するにはしばらくかかりそうだが、食リポでうまく伝えることができれば普及は少し早まるかもしれない。
 
もしあなたが昆虫食をいただく機会があったら、ぜひその味を言葉にして私が食べたてみたくなるように表現してみてほしい。
そしてタガメを食べる際は「きれいな泥」以外のたとえを考えてみていただきたい。

 
 
 
 
***
 
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2022-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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