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正論は正しくないのか?


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:TOMOMI (ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
私には、高校生の息子がいる。
彼は、今まさに反抗期真っただ中だ。
2年くらい前から私たちはよくケンカをするようになった。
それまでは、私が一方的に小言を言うパターンだったが、中3になったあたりから
私の小言に言い返してくるようになった。
お互いが自分の主張を正しいと思っているので、いつも言い合いになった。
それでも、少し前までは、彼が最後に「ごめん」とあやまって終わるパターンだったが、最近はあやまってくることはない。
私はというと、親として最低限言わなくてはいけないことがあると思っており、間違ったことは言っていないと自信があったので、彼にあやまることはなかった。
いつか私の話を理解してくれるだろうと期待していた。
しかし、最近は争いがどんどんエスカレートしていた。彼はおこると私に暴言を吐くようになった。それでも、私は彼を正しい道へ導こうと正論を言い続けた。人に暴言を吐くような人間になってもらいたくなかったし、それに気づいてもらわなくては・・・・・・と。
私たちは、まるで正論という名の石をぶつけあっているようだった。
 
その日も、いつものようにケンカになり、彼は怒りのあまり家を出て行ってしまった。
原因は、学校を休む回数が増えたことだ。朝、体調が悪くなるのだが、それは夜中の電話やゲームが原因だということはわかっている。以前、私は、「電話はしたい」という彼の要求をのみ、学校に影響をあたえないことを条件に夜中も自由にさせていた。ところが、やはり寝不足で体調が悪くなり、休む回数が増えた。そして、塾も休みがちになり、部活までさぼるようになった。
そのことを私が注意したのだ。「寝不足が原因なのだから、夜は早めにねてほしい。塾や部活はきちんと行ってほしい。塾を休む時は、事前に私に連絡してほしい」
どれも当たり前のことだと私は思った。すると、彼も彼なりの正論で攻撃してきた。
「そんなにくち出してくるなら部活やめるわ。部活をやってない子はいっぱいいる。塾だって学校だってやめるわ」
おそらく、私に対してそれまでの怒りがあったのだろう。私の言い方や話したタイミングも悪かったのだろう。そして「俺の行動に指示してくるな!命令するな!」と彼に言われた。私は命令しているつもりはなかった。しかし、私の言葉は彼にとって命令にきこえてしまっていたのだ。そして、彼は家を出て行った。
 
私は自分では口うるさくない母親だと思ってきた。
学校へ休まず行くこと。そして規則正しい生活を送ることは親が言うべき最低限のことだと思っていた。勉強をしなさいと言ったことはないし、夜中を除けばゲームも遊びも自由にさせていた。
正しい道へ導くのは親の役目だとも思っていた。
例え言い争いになっても言うべきことは言わないと! と思っていた。
 
家を出ていった時、夜10時をすぎていた。心配だったが、父親が彼と連絡をとっていて無事なのはわかっていた。彼が父親と話すことで、自分が悪かったことに気づき謝ってくれるのを私は期待していた。
11時少し過ぎたとき、息子から電話がはいった。
(やっとわかってくれたのか。謝罪だな)と思い電話にでた。
息子の口からでたのは「警察につかまった」という衝撃的な言葉だった。
私は動揺したが、すぐに近くの現場まで迎えに行った。
「11時過ぎなので見て見ぬふりできず保護しました。高校生の保護はよくあることですよ。お祭りの日とか。お母さんとケンカしたんですってね。大丈夫ですよ」と動揺して泣きそうな私を警察官はなぐさめてくれた。
その日、眠れず朝をむかえた。
 
今まで、ずっと正しいことを説明すれば相手は分かってくれると思って生きてきた。
それがどれだけ説明しようが聞き入れてはもらえない今、どうしたらよいかさっぱりわからない。
暗いトンネルの中にいるような気持だった。
 
そんな時にある人からアドバイスをもらった
「正論をぶつけあうのはやめた方がいい。今は息子を信頼して、息子のやりたいようにやらせてあげればいい。そして正しさをぶつけないで、黙って息子の言ったことを受け入れてあげて。彼を信じて見守って」と。
 
学校を休んでも何も言わなくてもいいんだということに心底びっくりした。
親として言わなくてはいけないと思い込んでいた。
そして、「信じて受け入れるということは、言葉で何もいわないだけではなく、表情にも態度にも不満はでないものだよ」とも言われた。
なるほど! いままで私は納得していないことを無理やり受け入れた時、顔がムッとしていたり、態度が冷たかったかもしれない。
 
話している中で、ふと気づいたことがあった。
息子の気持ちは、私が親に対していだいている感情と同じではないか!
私は子供のころから親に、やりたいことでも、親がダメということはやらせてもらえなかった。厳しく育てられてきた。それを不満に思いながらも従ってきた。
しかし結婚して家を出た後も、私の生き方に口を出してくる親に正直うんざりしていた。
私のことを、だまって信頼して受け入れてくれない親に怒りや悲しみを感じていた。
失敗しようが成功しようが、自分の道は自分で決めて進みたいと思い始めていた私にとって、次第に親の口出しは許せないものになっていった。なぜ、「失敗してもいいんだよ。自分のやりたいようにやってごらん」と私の味方になってくれないんだろうとずっと思ってきた。
自分たちの価値観で私の生き方をきめてほしくなかった。
そして、親のいうことはいつも世間一般の人が言う正論だった。
けれど、私にとって必要なのは正論ではなく、私のやることをすべて認めて信頼して味方になってくれることだった。
 
その私の思いと息子の思いが一緒だったことに初めて気づいた。
そして、親と私はまさに同じことをしているのだ。
親の正しさを子供に押し付ける。
 
彼の気持ちが痛いほどわかった。心の奥のほうで、キューと苦しくなった。
彼に対して心底申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
わかってあげなくてごめんね。
今、私にも彼にも一番必要なのは正しさではないのだ。
 
私は心に誓った。
息子が学校をやめようが留年しようが、今後どんなふうに生きようが、彼を信頼して彼の一番の味方になるって。
 
その日から私は一切正論を言うのをやめた。
彼のやることをだまって見守り、彼がやってほしいということを最大限協力した。
こうするべきだ・・・・・・という正論は捨てた。
すると彼の様子がすこしずつ変わってきた。
自分で早めに寝るようになり、学校も休まなくなった。やる気のなかった部活も行くようになり、今では試合に勝つことを目標に休まず頑張っている。調子も絶好調のようだ。
将来の目標もきめ、塾も真面目に行くようになった。すべてがうまくまわっている。
気持ちひとつでこんなに変わるものかと正直驚いている。
 
息子のおかげで私は気づくことができた。
子育てに一番大事なのは正しさではない。
正論という名の石はもうなげない。
息子よ、教えてくれてありがとう。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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