メディアグランプリ

「沈黙は金なり」VS「雄弁は金」

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記事:美月優璃(みつきゆり)(ライティング・ライブ名古屋会場)
 
 
「沈黙は金なり」という。
これは「黙っていることは時に、金ほどの価値がある」という意味だが、日本で生活していると
正にその通りだと思う。
余計なことを言わずに、大人しく黙っている方が良いとされる風潮がある。
しかし、そんな考え方は通用しない世界がある。
それを痛感したのはフランスに留学した時だった。
 
以前、私はフランスに2年6ヶ月間、留学をしていたことがある。
もっとも留学する前に日本で2年間、フランス語の勉強はしていた。
多少は会話が通じるかと思いきや、現地では悲しいくらいに自分のフランス語が通じなかった。
現地の人の会話のスピードとアクセントが強くて、ヒアリングがほとんどできない状態だった。
その時にはじめて、日本にいた時に習っていた先生は「自分に分かりやすい様に説明をしてくれたり、会話の内容も理解しやすい言い回しをしてくれていた」ことが、身に染みて分かった。
おまけに当時は何を血迷ったのか(笑)、「語学の上達の為には日本人が少ない学校が良い」と
考え、希望通りの学校を選んだのだが…… これが想像以上に自分負荷をかけることになったのだ。
 
私が在籍をした語学学校は、アメリカとドイツからの学生が大多数を占める学校だった。
なのでフランス語の授業の合間の休憩時間には、英語とドイツ語が飛び交う空間であった。
休憩時間になると、クラスメイト達は英語かドイツ語で互いにコミュニケーションをとり、
それがリフレッシュにもなっていたのだ。
私がいたクラスには、日本人は私一人。なので休憩中にクラスメイトとおしゃべりをするには、英語かドイツ語で話さなければならなかった。
ドイツ語なんて大学生時代に第二外国語でとったぐらいで、ほぼ記憶にない為、心もとない会話レベルの英語を使っておしゃべりをするしかなかった。
フランス語の授業でさんざん頭を使って脳みそがヘロヘロ状態なのに、休憩時間のクラスメイトとのおしゃべりにも更に脳をフル回転させなくてはならなかったのだ。
休憩時間であって、全くないようなものだった。
この語学学校にいっていた時は一日中頭がフル回転で、授業が終わった後はグッタリしていた。
 
そんな状態であったので、私の授業中や休憩時間での発言は少なかった。
必死でヒアリングして内容を理解し、自分の意見を言おうとしても、なかなか的確な説明ができない。
色々と考えているうちに、授業はドンドン進んでいく。
授業中は、ただ黙って聞いて、ノートを取るだけということが多くなってきた。
そんなある日のこと、先生か「ミナヲはなぜ発言をしないの? 自分の意見はないの?」と注意をされてしまった。
私は「自分の意見が上手く言えないから」と答えたら、先生は「上手く言えなくても、自分の意見は言わなくてはダメよ!」とお説教をされた。
私は先生に「自分の意見は言いたいけど、フランス語と英語の二刀流というダブルパンチで、余裕がないんだってば!」と、日本語でもいいから思いっきり伝たい気持ちで一杯だった。
 
日本では言葉少なで大人しい人は「奥ゆかしい人」と良い評価を受けたりするが、フランスでは自分の言わないと「何も考えていない人」だと思われてしまう。
フランスは自己主張の激しいお国柄とあって、男女問わず皆さんよーくしゃべる!
週末のカフェやレストランでは家族や仲の良い友人達と、ずーっとおしゃべりをしている人々が
非常に多い。
ホームステイ先や友人達も、とにかく皆さんおしゃべりが好きだった。
おかげで当時、フランス語のヒアリング力が非常にアップしたことは感謝している。
 
彼らの会話を聞いていると、倫理的に正しいかどうかは別として、自分の意見をしっかりと
持っていた。
それが時にヒートアップして他人を攻撃したりもするが、自分で考え出した結論を断固として
曲げないし、他人に簡単には同調しない。
日本にあるような同調圧力は存在しないし、彼らは受け入れないと思う。
それを証拠にフランスは「デモ」でも有名だ。
私も滞在中は頻繁に出くわし、バスが来ない、郵便物が届かない等、困ったことが多々あった。
自分納得できない、賛同できない政策や社会的なルールには妥協せずに異議を唱えるし、行動も起こす。
フランスでは「雄弁こそ金」であり、行動ありき、である。
黙っていることは「銀」どころか「銅」か、下手をしたら「屑」にしかならないかもしれない。
移民大国であるからかもしれないが、彼らの自己主張とコミュニケーションは、正に生存競争だと感じさせられた。
最初はとまどいつつも、私も滞在期間中に徐々に「言葉に自信がなくとも、自分の意見を言う。自己主張をする」というスタンスに慣れてきた。
段々と開き直りの境地になって(笑)滞在末期の頃には、かなり自己主張が自然とできるようになったと思う。
 
日本に戻ってからはほぼ真逆の環境になってしまい、「沈黙は金なり」の日本社会に合う振る舞い方に戻すのに、少々苦労した。
今では適応して問題はないが、最近になって「雄弁は金」の環境が懐かしく感じる様になってきた。
一番良いのはケースバイケースで「沈黙は金なり」の状況も、「雄弁は金」の状況も上手く使い分けて、楽しむことだ。
このライティングも「雄弁は金」の一環だと思い、アウトプットを楽しもうと思う。
 
 
 
 
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2022-09-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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