プロフィール写真を変えたらイメージした未来が近づいてきた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:深谷百合子(ライティング・ゼミNEO)
出来上がったプロフィール写真を見て、私はがっかりした。自分の顔写真って、どうしてこうも満足のいかないものばかりなのだろう。免許証もパスポートもそうだ。「この写真を何年も使うのか」と思うと憂鬱だ。コピーを提出したり、人に見せなければならない時は一層憂鬱になる。それでも、免許証やパスポートは、本人と確認できることが目的だから、写真が気に入らなくても目的が果たせればそれでよい。でも、仕事用のプロフィール写真となると話は別だ。
「個人事業主にとって、自分のプロフィール写真は店の看板と同じ。だから、自撮り写真ではなく、プロに撮ってもらった方がよい」
そうアドバイスを受けて、私はネットでフォトスタジオを検索した。ヘアメイクもつけてくれるスタジオを予約し、撮影に臨んだのだ。
仕事用のプロフィール写真など、今までに撮ったことがない。どんな服装がよいのかもよく分からない。そこで、知り合いの女性起業家たちがSNSにアップしているプロフィール写真を見てみることにした。その中から、「こういう感じの写真がいいな」と思う写真をいくつかピックアップした。何枚か選んだ写真に写った女性たちは皆、白いジャケットを着て、爽やかな笑みをたたえていた。
「白いジャケットはきちんとした感じがあるし、明るくていいな」
「こんな風にソファに腰掛けている感じもいいな」
「バックに緑の観葉植物が入っているのも素敵だな」
そんなことを思いながらイメージを膨らませた。
スタジオで、フォトグラファーが「どんな感じがいいですか?」と聞いてくる。私は自分でピックアップした写真を見せながら「こんな感じがいいです」と答えた。そのほか、仕事の内容など、いくつかの質問に答えて撮影が始まった。
ヘアメイクもプロに頼んだし、服装も自分の気に入った白いジャケットを選んだし、ちゃんとしたスタジオでプロのフォトグラファーに撮ってもらったし、どんな写真になるだろう。ワクワクしながらデータが送られてくるのを待った。ところが出来上がった写真を見て、そのワクワクした気持ちは一瞬でしぼんでしまった。
確かに「いいな」と思った人たちの写真とよく似た爽やかな雰囲気だ。ヘアメイクをしてもらったおかげで、実物より数段いい感じの私である。でも、どこか「これは本当の私じゃない」という違和感がぬぐえなかった。ただ、「きれいに撮れた写真」というだけだった。憧れのタレントの写真を持って行って、美容師に「この髪型にして下さい」と頼んで失敗した時に似ていた。何か似合ってないのだ。
しっくりしない気持ちのまま、SNSのアイコンやブログのプロフィール写真に使ってみたけれど、自分の写真を見るたびに、背中がむずむずした。
よく「第一印象は見た目が大事」と言われる。自分もそうだけれど、「何かいいな」と思って興味を持つとき、たいてい目に入ってきた情報で判断をしている。そういう目で見ると、写真に写っている私は、ただ微笑んでいるだけの人で、これといった特徴がない。何をしていそうな人かも分からない。「何か気になる」と思って、その先に進んでもらえそうな雰囲気は全くなかった。
たまに知らない人から、「マナー講師ですか?」とSNSにコメントがくることもあった。全く違う仕事をしているのに、「そう見えるんだな」と私は苦笑するしかなかった。つまりそれは、私が何をしている人なのかが相手に伝わっていないということの証拠だった。
今だから言えるけれど、私は当時、自分のことを全く分かっていなかった。「こういう感じがいいな」というのは、自分がいいなと思う人のその人らしさであって、自分らしさではない。不本意な写真になったのは、フォトグラファーのせいではなく、私が自分のことを分かっていなかったからだ。
とは言っても、自分のことって自分ではなかなか客観的に見ることができない。「こうなりたい」という願望が、いつの間にか「私はこういうタイプの人間である」と思い込ませてしまうこともある。洋服選びひとつとってみてもそうだ。つい、「見られたい自分」を基準に選んでしまう。自ずと発している雰囲気や、人から評価されている面というのは、自分では分かりづらい。
「そういう時は、自分が仕事で関わったお客様から直接聞いてみるといいですよ」
ブランディングの専門家が書いているメルマガを読んで、私は実践してみることにした。
自分の印象を人に聞くのは、小っ恥ずかしい。聞かれた方だって、悪いことは書きづらいだろうから、いいことしか書かないだろう。それでも、相手から自分はどう見えているのかを教えてもらえば、自分でも気づかなかった一面に気づけるかもしれない。
「そう言えば転職活動をしていた時も、そんなことをしたな」と不意に昔のことを思い出した。37歳で始めた転職活動は、なかなか上手く進まなかった。書類選考で落とされる日が続いた。だから初めて面接に呼ばれた会社で、私は最後に思い切って聞いてみたのだ。
「差し支えなかったら、面接に呼んで下さった理由を教えて頂けませんか?」
私はただ、自分の何に興味を持ってもらえたのかを知りたかったのだ。書類を見て、「ちょっと会ってみようか」と思われる何かがあったのなら、それは自分のセールスポイントになるかもしれないからだ。
面接官は快く私の質問に答えてくれた。そして、「努力家だと感じました」など、私の「褒めポイント」をいくつか挙げてくれた。それを聞いて私は「そういうところが自分の強みなのか」と自分を見つめ直すことができたのだ。
今回も同じだ。関わったお客様に私の印象についてアンケートに答えてもらうことにした。ありがたいことに、丁寧に回答をして下さる方が多く、自分では気づいていない「自分らしさ」を私は知ることができた。見た目の印象だけでなく、実際に私と関わって感じたことを書いてもらえたことで、「私はそういうことでお役に立てるのか!」という発見があった。そして、多くの人の回答に共通点があり、それが「私らしさ」なのだと認めることができた。
私は人から何を期待されているのか。それに対して私は何ができるのか。その輪郭が見えてきたところで、私はプロフィール写真を変えようと、撮影をお願いすることにした。
写真撮影はもちろん、当日の服装もヘアメイクも全てプロの力を借りることにした。その日に突然撮影に行って「こんな感じで」というような、前回の失敗を繰り返したくなかった。
私がお願いしたフォトグラファー、スタイリストのお二人からは、事前に課題を頂いた。それは、「私はこれからどんな人とどんな風に関わりたいのか」「どんな生き方をしていきたいのか」「どうありたいのか」といったことを言葉にすることだった。そして、「関わった方からどう見られているのか」「何が評価されているのか」についても整理し、そこから見えてくる「少し先の未来の私」を具体化していった。
そのうえで、その「少し先の未来の私」が着用している服を選んでもらった。それは普段、自分では決して手に取ることのないテイストの服だった。「大人の女性の女っぽさ」を醸し出すワンピース。普段、活動的な服装を好んで着ていた私にとっては、着慣れないものだった。でも、そこで感じた違和感は、「自分がなりたいイメージ」と「自分が本来持っている自分らしさ」とのギャップだったのだ。自分がなりたいイメージは、「ないものねだり」になっていることが多い。でも、「自分が本来持っている自分らしさ」を認めてみたら、その服は今の私にとてもよく似合っていた。フォトグラファーからも、「その服、イメージ通り」と褒められた。
写真はどんな場所で撮るのか、どんなポーズがいいのか、フォトグラファーから提案をもらいながら、撮影のイメージを固めていった。そうして、多くの人たちの協力を得て、具体的な撮影場所を決めた。ヘアメイクの方にも、当日着る服、コンセプトを伝えた。約1ヵ月の準備期間を経て、撮影日を迎えたのだった。
出来上がった写真は全部で85枚に及んだ。パソコンに向かって楽しそうにライティングをしている写真、ホワイトボードを背に生き生きと話をしている写真、本を手に微笑んでいる写真……。どれも「つくった自分」ではなく、「あぁ、そういうことをしていそうだな」と思える写真だった。少し先の未来を写し取ったものでありながら、自然体で一番自分らしい写真になっていた。「何か違う」という違和感は全くなく、「これが私だ」という確信を持つことができた。
自分の「看板」が変わったからだろうか。それとも、目指す方向を言葉にでき、写真という形になって自分の意識が変わり、覚悟ができたからだろうか。新しいプロフィール写真に変えてから、イメージした未来が向こうから近づいてきた。書く仕事を頂いたり、大勢の前で話す機会が舞い込んできた。自分が関わっていきたい世界、自分が役に立てそうな仕事、自分が一番自分らしくいられる方向へ軌道が変わり始めている。
今では最初に撮った写真が不本意な写真でよかったと思っている。当時の写真を見ると、プロフィール写真の何たるかも知らなかったあの頃より、少しは進化できたことを感じられるからだ。
そして、今回撮影したプロフィール写真も、「もうこれは今の私じゃない」と思える日が来るといいなと思っている。それは、「少し先の未来の私」を追い越した私になれた時だからだ。その時の私はどこで誰と何をしているだろうか。そんなことに思いをはせながら、私は今、目の前に現れた道を一歩一歩踏み出している。
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