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まさかまさかの3か月後……その時、私はマクベスだった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:むぅのすけ(ライティング・ライブ大阪会場)
 
 
『無理無理無理無理、今の私に演劇とか出来るわけないって
だって、マクベスってシェイクスピアの戯曲でしょ? 硬そうだし、そもそも名前しか知らないし、なんだか字面だけで難しいもん。
……とりあえず通信受講だし、現地受講の方みたいな発表会はないって書いてあるし、一緒に演技するわけじゃないから、覗き見させてもらう感じで、この際、講義だけ、そう講義だけ受けさせてもらおっかな~』
 
 
今から3か月前
訳あって、申し込んでいた『演劇の脚本を書いてみるゼミ』の開講が直前に流れてしまい、主催者側の謝罪と共に、代替として紹介された幾つかの演劇系のゼミを見比べながら、私は考えていた。
 
実を言うと、自分が演じることに全く興味がなかったわけではない。
正直いつかはやってみたい気持ちはあった。
 
それでもその時点では、一度ライティングのゼミを終え、このまま書くことを終わりにして卒業してしまうのが寂しくなったことから、記事というエッセイとは違って思いっきりフィクションを書いてみることができそうな先述のゼミに、早々に申し込んで楽しみにしていたのだ。
 
だから演劇とはいえ、脚本を書いてみたかった私としては、決して自分が演じることを望んだわけではなかったのである。
しかし代替に紹介されたゼミとは、基本的に東京で演じながら学ぶものがほとんどで、その場所も内容も、全てが大阪に住む私には諦めざるをえないものだった。
 
そう思っていたのに
近く開講される【名作演劇ゼミ・第一回マクベス】が、なんと追加の別枠で通信受講が可能になったらしい。
ゼミとして第一回目ということは、主催者側としても初めてなのだ。
どんなゼミになるのか、きっと主催者側も想像しきれていない中で、通信受講生を受け入れてくれるとは!
全てが初めて尽くしの中でどうなるかわからないのは、講師の先生も、スタッフさんも、参加者の皆もきっと同じで、今回だけは全員が1期生なのだ。
そう考えると、そこに参加してみるということが、まるで生の舞台を観劇するみたいに、ワクワクするような期待として押し寄せてきた。
 
それでも、自分が演じるということにまだ抵抗があった私は、冒頭のように、とりあえず自分が演じる可能性を頭の隅に押しやって、見切り発車の如く受講することにして初回講義に滑り込んだのだった。
 
 
講師は、当然のように俳優の方なのだが、大学と院で演劇学を専攻して学んでこられたという。
今回はシェイクスピアの頃の時代背景や、その頃の演劇というものの在り様など、現代社会で過ごしていると、一生知ることのなさそうだったことも教えてくださる。
 
有名だけれど現代には馴染みのない難しそうなことを、講師は私たちにわかりやすく説明してくださった。
俳優養成所や劇団で活躍された経験をお持ちなので、座学と演技の両方の指導にも長けておられるのだろう。
 
そして私はその経歴に関することもさることながら、ご自身に誇りをもって 『俳優』と名乗っておられることに、純粋に尊敬の念を抱いた。
 
自分は○○である、というところに入るのは、たいてい生活の糧を稼ぐ仕事である場合であるかもしれない。
でも講師は掲載された記事の中で語っていた。
○○という生きがいの看板を、自分の心の中に胸を張って掲げること。
それは途中で変わってもよいから、そこに愛を注いで生きていくことこそが人生なんじゃないか、と。
 
私流の解釈で恐縮だが
それを読んで、何のキャリアもなく自分には誇れることは何もないと思っていた私は、とても共感して嬉しくなった。
まだはっきりわからないけど、私にも、きっとある。
胸を張って、誰に言わずとも 『私は○○なの』 と誇れる何かが。
勇気をもって、疑いなくそう思えた。
 
 
そんな講師がくれる課題へのフィードバックは、とにかく優しかった。
毎回、課題に沿って動画を録画して投稿する。
めちゃめちゃ恥ずかしいのだが、繰り返すうちにフィードバックを頂くのがクセになりつつあった。
 
何かしら見つけて褒めてくださった後に、少し注意点や次回に向けての考え方などを示してくださるのだ。
毎回こんな風なやり取りを、課題として、通信受講の他の2名の方と取り組んだ。
講師も仰っていたが、面白いもので同じ課題に取り組むのに、三者三様で仕上がる出来栄えが全く異なるのだ。
 
受講者同志はほとんど交流できなかったが、同じものに取り組み続けたことで、私は勝手にそのお二方を近しく感じ、リスペクトしていた。
講座の中盤からの課題は、講師の決めたマクベスの名場面とされるモノローグ(一人芝居)の箇所になった。
 
短剣がカギとなる、その表現に悩みながら
私たち3人の通信受講者は、それぞれのマクベスを創るべく取り組んで行った。
 
 
講座が進むにつれ、初めにわかっていたことと違うことが知らされた。
現地受講者の発表会の場で、通信受講者の最終課題が披露されるという。
 
えらいこっちゃ!
聞いてないよ、私たち(通信受講者)は観るだけだったんじゃないんかい!
 

思いながらも、もうその頃には自分が観られる抵抗心もほとんど薄れていた。
どちらかというと、発表の場に混ぜてもらえることがありがたいとすら思っていた。
恥ずかしいけど、どうせ講座のFacebookグループに動画を投稿している時点で観られてるんだし、ええいままよ! といった心持だった。
この心境の変化も、受講前には想像できなかったことだった。
 
 
かくして、発表の日の前に最終課題の〆切がやってきた。
 
セリフも覚えきらず、文字にするのも情けない出来での仕上がりだったが、最終課題の条件は 『一発撮り』 だった。
途中でセリフを間違えようが、忘れようが、一切止めずに演じ切ること。
このコワさも含めて、演劇の舞台の本番の醍醐味なのだから。
そして最後は笑顔でカーテンコールをするように、とのことだった。
……私の賽は投げられた。
 
 
講義最終日
現地受講の皆さんの最終稽古の後、いよいよ発表会が始まった。
私はトップバッターだ。
現地にいる方と同じように、PCから流れる普段着での自分の課題を観ながら、不思議な心持だった。
 
そこにいるのは間違いなく私なのだが、そこでは、私はマクベスだった。
 
3か月前には想像できなかった自分が、そこにいたのだ。
 
自己流のカーテンコールに失笑を買ってしまったところで、我に返った。
その後も皆さんの発表は続き、私は拍手をしたりドキドキしたりしながら観続けた。
 
 
あの時間は私にとって特別だった。
講座は終わってしまったが、発表の場だけでなく、この3か月間で演劇に触れたことこそが、宝物のような経験だったように思う。
 
そして、こんな経験をさせてくれた講師の石綿大夢先生に心からの感謝を申し上げたい。
 
第二回講座は、すぐに始まる。
同じくシェイクスピアの、ロミオとジュリエットだそうだ。
きっと面白いに決まっている。
 
 
天狼院書店発
演じなければわからない 『名作演劇ゼミ』
第二回 ウィリアム・シェイクスピアの ロミオとジュリエット
講師: 俳優 石綿大夢先生
2022年 9月15日 スタートです
 
思い切ってやってみると、優しいフィードバックに勇気と元気が湧いてきますよ。
他にも魅力は沢山あります。
貴方も味わってみませんか?
虜になるかもしれません。
 
 
 
 
***
 
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