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メディアグランプリ

人生の絶頂と後悔、そして未来へ向かって


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田 隆志(ライティングゼミNEO)
 
 
もうかれこれ10年以上前になるのだろうか、結婚相談所でのありさを紹介された。ありさというのは仮名で、はじめて会った時の第一印象が女優の観月ありさのように、目玉が飛び出るぐらいの美女が現れた。横浜のホテルのラウンジでの顔合わせではメチャクチャ緊張しながらお互いの自己紹介をしていたが、どうにかこうにかデートの約束を取り付けることができた。
 
横浜のデートはド定番のみなとみらいの赤レンガ倉庫でウインドウショッピングしながら、マリンタワーで夜景を見てから、中華街で食事をするというコースをセッティングした。こんなデートプランなんて、ありさにとっては何度も経験していることだと容易に想像できるが、それでもずっとニコニコしながら一日楽しんでくれたようだ。私はずっと緊張で小刻みに体が震えていたことだろうし、会話の中でも変なことばっかり口走ったであろう。
 
「今日一日ありがとうございました。また誘ってくださいね」
 
こうして僕とありさは横浜駅でそれぞれの電車に乗って、帰路についた。東海道線に乗ってニヤニヤしながらスマホを眺めながら余韻に浸っていた。
 
翌日、結婚相談所から機械的に一本のメールが届いた。
 
「ありささんから交際終了の連絡が来ました。交換した連絡先は直ちに消去してください」
 
結婚相談所を通じた婚活というのはいつもこうなのだ。女性と出会う機会はそれなりに増えているのだが、お断りするのもカジュアルで、そんなやり取りは何度も経験している。いつも通りのやりとりで多少なりとも打たれ強くなっているはずなのだが、さすがに観月ありさに振られるのはショックだった。
 
こうやって、いつものようにさえない婚活が続いていた。
 
 
 
遡るほど10年前、彼女と別れてからしばらく一人で過ごしていた私は結婚相談所にお世話になることになり、いわゆる婚活がスタートした。
 
学生のころも全然女性に振り向いてもらえないさえない少年ではあったが、根拠もなくいつかいい人が見つかって幸せな結婚ができると思っていた。
 
ところが、30を過ぎて彼女と別れ、いよいよ生涯独身となるということも現実味を帯び段々と焦りだしていた。それ以上に30を超えたぐらいから、漠然と変わりたいという欲求が出てきたのか、結婚相談所に登録することになった。
 
いつもの日課は「婚活専用ポータル」に出てくる条件に見合った女性が紹介されるので、会ってみたいと思える女性をひと月に20人ほど申し込みをして、見事にマッチングできた2人が「初顔合わせ」として、ホテルのラウンジや喫茶店などで小一時間ほどお話した後に交際に発展していくという流れだ。そして、交際を重ねたのちに晴れて二人は結ばれるというわけだ。こうしてみると、誰でも結婚できそうに見えるだろう。私も新垣結衣によく似た美女と結婚できると思っていた。
 
お決まりのパターンは、月に20人の女性に機械的に申し込みをして、1人から3人程度のマッチングが成立して、静岡や横浜に足を運んでホテルのラウンジで面会を行うのが通常パターンである。だいたい30前後の女性の顔合わせであり、見事なまでに美女ばかりと顔合わせをしていた。
 
しかし、現実は厳しく何とか顔合わせまでにこぎつけても、次の日には容赦なく「お断り」のメッセージが結婚相談所から届いて、おそらく30回ぐらいは振られているのではないだろうか?
 
観月ありさ似の美女と赤レンガ倉庫やマリンタワーでの一日中デートできるなんてパターンはもう激レア中の激レアパターンである。あの日、二人で歩いているときは幸せの絶頂にいるかのような気持ちだったが、余韻をかみしめている間のお断りのメールを受け取った時には、しばらく仕事が手につかない状態になってしまった。
 
 
 
それでも、私の婚活活動はいつもの通りに続いており、毎回顔合わせをしては断られるというお決まりのパターンを繰り返しており、当たり前のように描いていた幸せな結婚生活というものをあきらめかけていた。
 
その日は珍しく浜松に向かうことになっており、新幹線ではお相手のプロフィールや趣味・PRをいつものように眺めている。顔合わせの時にこれらを頭に入れておかないと初対面の人を相手に何を話せばよいのかわからなくなってしまう。誰とでも打ち解けるような人間であればいいのだが、私のように口下手な人間はある程度のシミュレーションをしないと、上手くいったためしがないのだ。
 
その女性は浜松の障害児向けのカウンセラーで「あゆみ」という。年齢は私の一個下でタバコは吸わない。これだけ見れば特段変わったところはなさそうだが、これまで婚活で会っていた女性とは何かが違うような気がした。
 
趣味や自己PRの欄をみるとプロ野球観戦が好きで毎年のようにナゴヤドームに足を運んで中日ドラゴンズの試合を見に行っていることをアピールしている。もちろん女性のプロ野球ファンはたくさんいるのだが、全面的に野球が好きとアピールする女性もなかなかいなかったので新鮮だった。傍から見ればニヤニヤしながらスマホを見ていたのだろう。
 
緊張しながらもちょっと慣れてしまった感じで10分ぐらい前に浜松のホテルのラウンジでゆっくりと座って待っていると、相手の結婚相談所のカウンセラーがあゆみをつれてやってきた。
 
私はこれまで数回このシチュエーションを経験しているけどやっぱり慣れない、後から知ったことだが、あゆみにとっては初めての婚活ではじめて男性と一対一で話をすることになるようだ。こんな風に二人とも緊張しながらの顔合わせとなった。
 
「あゆみさんは野球観戦が好きなんですね?最近どこかの試合に行きましたか?」こんな風に相も変わらずたどたどしい質問を投げかける。
 
そんな私にも控えめに微笑みながら、旅行で仙台まで楽天VS日本ハムの試合に行ったことを話してくれた。しかも、楽天の先発は田中将大で日ハムの先発はダルビッシュ有であり、二人とも日本を代表するメジャーリーガーとなっている。そんな2人の激しい投げ合いだというので随分と興奮して話をしてくれていた。
 
わたしも野球が大好きで、ここまで野球が好きな女性と話すことがなかったから、久しぶりに楽しい顔合わせができたと感じられた。
 
その後は結婚相談所からのお決まりの「交際終了」の冷たいメールが届くこともなく、静岡と浜松での食事を楽しみながら数か月の時を感じていた。
 
 
 
2011年のセリーグのペナントレースは中日ドラゴンズが優勝した。当時のドラゴンズの監督は常勝軍団を作り上げている落合博満だったが、この年を最後に退団が決まった。
 
あゆみと出会ってから4か月が経ちそろそろ具体的な行動をとらなくてはならない。その年のクライマックスシリーズ、ナゴヤドームでの中日VSヤクルトの試合のチケットを何とか入手してあゆみをさそった。
 
中日が見事に勝利したら、プロポーズをしよう
 
この日を迎えて中日ドラゴンズ3勝、ヤクルトスワローズが2勝とこの日見事に勝利すれば晴れてセリーグチャンピオンとなり、日本シリーズへコマを進めることができる。
 
私にとって初めてのナゴヤドームでの大事な試合、8回を終えて2-0と中日がリード、このまま中日が逃げ切ればよいはずなのだが、プレッシャーで背中から変な汗が出てきている。9回表ヤクルトの攻撃、中日はいつもの通りリリーフエースの岩瀬が出てきた。
 
ほぼほぼ中日の勝利は間違えないのだが、9回にヤクルトが意地の一点を返す。試合がわからなくなってきた。
 
当然このまま逃げ切ってほしいところなのだが、そのまま勝利したらプロポーズをすると決めているのだが、言葉が出てこない。もう頭の中が真っ白になってしまった。
 
そのままボケーと試合の行方を見ているうちに、気が付いたら危なげなく岩瀬がヤクルト打線を抑えており、何ともあっけなく中日の勝利が決まった。
 
あゆみはもちろん中日の勝利に酔いしれていたが、私はなぜか呆然としていた。
 
「どうしよう、早く言わなくては」
 
もたもたしている間に、名古屋駅に到着して帰りの新幹線に乗り込んでしまった。浜松についてしまったらお別れになってしまう。
 
「あのう、よかったら僕と結婚してください」
 
なんとも不格好でたどたどしいプロポーズだ。本当だったらホテルで夜景を見ながらカッコつけて決めたいところだったはずなのに、何とも中途半端なんだ。
 
「資格試験の勉強しながらになるけど、それでもいいなら」
 
この年の日本シリーズ、中日はソフトバンクに負けてしまい日本一は逃がしてしまったその日、ぼくたちは正式に入籍することになった。
 
 
 
2012年は僕とあゆみにとって大きな革命だった。特にあゆみは10年勤めていた浜松の職場を退社して、静岡の新居に移り住んだので、言うまでもなく大きな環境の変化であり、静岡市での知り合いは僕しかいない状況だった。
 
私は、入社以来三島の工場で10年勤めていたが、会社の都合やらなんやらで静岡のグループ会社に転籍となった。転籍と同時に係長から副課長に昇格し、これまでずっとお世話になってきた上司が定年退職したということで環境も大きく変わってきた。
 
10年ぐらい自由気ままな一人暮らしを満喫していた2人が一緒に生活するということは大きな変化となっており、二人で一緒に野球を見ながらお酒を飲んでいるという長年の夢がようやくかなった。そして、毎日たわいのない話をしながらも新婚旅行にどこに行くのか地球の歩き方を読みながら二人で妄想していた日々だった。
 
しかし、結婚したと同じようなタイミングで日常の業務が忙しくなり、連日帰宅が22時を回ってしまうような生活になってしまった。さらには、半年後には東京と横浜のオフィスが合併となり、田町に100人を超えるオフィスに移転するというプロジェクトが立ち上がった。上司が定年退職を迎えた後もあり、オフィス移転のネットワークインフラ業務を引き継いだばかりの私は移転プロジェクトの総責任者となってしまった。
 
今にして思えば、慣れない業務のプレッシャーから相当イライラし始めていたのだろう。
 
一方で、知らない土地で私のために転職をしたあゆみにとっては相当なるストレスであるのは想像に難くない。それでも、私は自分中心の考え方を変えずに過ごしていた。
 
お互いに環境も変わり自分のことに精いっぱいで思いやりの気持ちを忘れかけていた。
 
あゆみに出会い、野球を見ながらプロポーズをした時には結婚するならこの人しかいないと思うぐらい価値観がシンクロしていた感覚があったが、結婚生活を通じて価値観が合わない者同士の結婚となってしまった。
 
そして、2013年8月7日、二人は正式に離婚をした。
 
その日は35歳の誕生日、35までに結婚する目標は達成できたのだが同時に離婚まで成立してしまった。
 
もしも時間を元に戻すことができるのならば、どこまで戻せばよかったのだろうか?
 
10年前の私にどうやって軌道修正すればよかったのか?
 
いくら後悔してももうあゆみは戻ってこない……
 
 
 
あれから10年近くが経過し、人生の大半を一人で過ごしている。
 
あまりに短すぎるのだが、結婚生活は私にとってかけがえのないものだった。
 
一人でいることによって仕事でもプライベートでも本当に好き勝手に過ごしていて、それが気楽だったことは否定しない。身軽である分だけフットワーク軽くいろんなことができたと思う。
 
しかし、あゆみと10年過ごすことができていれば私の人生はどうなっていたのか?ということも考えることも多くなった。
 
このまま、一人で気軽に気ままに好きなように生活するのが幸せなのか、それとも、まだ見ぬパートナーを見つけて、本当に人生を変えてしまうことが良いのか?
 
答えの一つがBook Loveにあると信じて、参加しよう。
 
 
 
 
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2022-09-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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