天然野生のキノコ狩りは過酷なアウトドア、絶対にお勧めしない3つの理由。
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記事:さとう さら(ライティング・ゼミ8月コース)
「キノコ狩り」はどんなイメージだろうか。
いちご狩りみたいな感じ? 栽培園に行ってキノコを収穫、バターと醤油で、香ばしいキノコ尽くしBBQ?
TVなどでよく見かけるそれは、菌床にびっしり生えたマイタケや、原木に可愛く生えたシイタケなど、見ているだけで楽しい。そこで、私が体験した過酷な自然環境での本当のキノコ狩りと、絶対にお勧めしない3つの理由をお伝えしたい。
一度進むと後戻りはできない、恐怖の登山
釣りに行く約束をしていた友人から、
「キノコが豊作だから、キノコ狩りに変更しないか」と提案された。
私にとって初めてのキノコ狩り。先達のイメージを持っていた私は、友人の誘いを軽々しく承諾した。しかし、その誘いは「天然野生のキノコ狩り」だった。
狩り当日、私は初めての体験に浮かれていて、友人の車がどんどん山を登っている事に疑問を抱いていなかった。
山の上には、友人の親戚である3人のおじいさんガイドが待っていた。彼らは小さな頃から山でキノコ狩りをしているベテラン選手だ。
魚籠(びく)というキノコを入れる籠を背中に背負い、キノコ狩りが始まった。
「さぁ、出発するぞ!」
向かったのは目の前の畑ではなく、横の山。傾斜は30度、もちろん登山道もない。道なき道をかき分けて、キノコ狩りパーティーは出発した。道がない山を登るのは初めてだった。加えて、落ち葉がふかふかに積もっていて、うっかり普通のスニーカーで来た私は、何度も滑落しそうになった。きつい傾斜と転落の恐怖もあり、10分後には500mlのポカリスエットが空になっていた。
想像と現実で心が折れてしまい、ここに座って皆が帰ってくるのを待って下山しようと思ったのだが、一度来た道には戻ってこないという。同じ道にキノコはないからだ。ジーザス……私は、絶望の淵から前に進むことにした。
見つけても簡単には持ち帰れない
登山の足を止めふと見上げると、木々の隙間から木漏れ日がさし、秋とは言えしっとりと包み込むようなやさしい空気が流れていて、つかの間の癒しを満喫した。
「こっちにあったぞ!」というおじいさんの声に、皆が斜面を駆け上がる。その木の根元には、艶々で水気を含んだ天然野生のキノコが、神秘的に美しく生えていた。
赤黄茶色の葉が絨毯のように広がり、深い茶色の大きな木がそびえ、その割れた根本にたたずむ立派なキノコ。降り積もった葉の下に隠れるように、倒木や切り株の上に、それは様々な場所に生えている。中でも松茸は切り立った山頂の尾根、尾根がくぼんだ所の鞍部(あんぶ)という危険な場所に多く生えているそうで、毎年多くのハンターが滑落する事故が起こっているそうだ。天然の松茸がなぜ高いのか、初めて理由を理解できた。
おじいさん達は幼馴染で、小さい頃から両親に連れられキノコを狩りに山に入り、生えている場所、食べれるキノコ、危険なキノコの見分け方を学んできた。
「これはあの種とこの種がまじっている」「裏側の柄が変だ」など、必ず皆でキノコ選別の議論をする。
「人もキノコも見た目には個体差がある。少しでも確信の持てない要素があったら、絶対に持ち帰らない。今までたくさんのキノコを見て、食べて学んだんだ」
と言いつつ、何度か毒キノコを食べてつらい目にあったことを話してくれた。やっと見つけたキノコも食べられないものが大半だった。
肝心の収穫はというと、魚籠(びく)山盛り! にはならなかった。キノコ発見の掛け声がかかると、パーティーの男性たちが山肌を元気に駆け上っていき、私が到着するころにはキノコはひとつ残らず刈り取られていたからだ。
落葉がふかふかに積もった山を下るのはもっと大変だった。ヘロヘロになって平地に降りた後も、スタート地点まで更に想定外のウォーキングが待っていた。
天然野生のキノコは狩るものじゃない、買うものだ
帰りにキノコ直売所に立ち寄った。私の取れなかったキノコが山盛り500円などで売っている。今日の労力を考えると、なんとありがたい価格設定なんだろう。大量のキノコを購入して帰路に着いた。天然野生のキノコは、プロに感謝して買うべきものだと心から思う。
家についてほっと一息、遠足は終わり……ではなかった。
魚釣りと一緒で、持ち帰ったキノコは後処理が必要だ。野生のキノコは、枯れ葉や土や虫がついている。キノコを取って裏返すと虫がいて、何度も絶叫した。
過酷な登山と精神的疲労で限界寸前の体に鞭を打ち、キノコゴミをきれいに洗い流し、ゆでて冷凍する。せっかくなので取れたてキノコで、味噌煮込みキノコ汁を作った。キノコが新鮮だからといって特別においしいわけではなかった。これでようやく過酷なキノコ狩りを終えることができた。
その甘い響きとは裏腹に、本物のキノコ狩りは非常に過酷だ。しかし、天然野生のキノコは、幻想的で美しい。私は二度と行かないが、体力に自信のある方は、山へ旅行したついでに、本物のキノコ狩りの旅に出かけてみてはどうだろうか。
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