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ネトゲ廃人が仮想世界の冒険の果てに、リア充になった理由(わけ)


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:青梅博子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
ネトゲ廃人という単語をご存じたろうか。
辞書で調べると「オンラインゲームに没頭・熱中しすぎて、現実の生活に支障をきたす事態に陥っている人を指す俗な表現。ネット中毒者のうち特にゲームに没頭している人」と書かれている。
十数年前、まだ家電メーカーで会社員をしていた頃の話だ。
私はオタクの友人に誘われて始めた「ファイナルファンタジー11オンライン」というゲームにはまっていた。
 
このゲームは、インターネットを通じて不特定の多数の人がゲーム内の仮想世界でコミュニケーションを取り、モンスターと戦ったり、販売品の製造、売買をゲーム内で行う、一般にMMORPG「大規模多人数同時参加型オンラインRPG」と呼ばれるものである。
 
現実の私は「地球に住む日本人で20代のOL」だが、ゲーム内では「ヴァナ・ディール世界のサンドリア王国に住むタルタルという種族の赤魔導士」であり、魔法や特殊能力を使って、迷宮探索やドラゴン討伐などの冒険を、ゲーム内でできた仲間たちと力を合わせて達成していくのだ。
私は、見知らぬ土地で、心躍る別の人生を満喫できる仮想体験にすっかりはまり込んだ。
 
はまるとやりこむ系の私は、会社から帰ったらすぐにパソコンを立ち上げて、眠くなる限界までゲームをし、休みの日は、他のことは一切せず、ゲーム世界に一日中没頭するという生活を送っていた。立派すぎる廃人である。
 
こんなひきこもり廃人生活を約一年ほど続けて、私は、はたと気づいた。
あれ? ゲームの私は一年かけて「赤魔導士として最高のレベルになり、あらゆるスキルを最高値まで身に着けた無敵の存在」になったけど、現実の私は「何一つ成長してない」んじゃないの、ということに。
そりゃそうだ、座ってコントローラーを握っているだけじゃ、何も起こらない。むしろちょっと太ってしまっている。
 
そこで私は考えた。
ゲーム内でやってきたことを、全部リアルでやってみたら、もっと楽しいのではなかろうかと。
 
こう思うようになったきっかけはあった。ゲームの中で旅をしたときのことである。
 
最初にゲームを始めるとき、参加者は、遠く離れた地方の3国で散り散りに「冒険者」としてスタートする。そして、それぞれの地で経験を積んだ後,遠く離れた「都市国家ジュノ」まで一人旅をして、あらたな冒険に挑むという決まりになっていた。
新米冒険者は乗り物にも乗れず、瞬間移動もできないので、自分より強いモンスターが跋扈する長大な距離を徒歩で向かわなければいけない。仮想現実とはいえ、出発するときは本当に怖かった。
「ジュノで待ってるから頑張って」というチームメイトの声援を受け、私は、ものすごい勇気を振り絞って一歩を踏み出した。
そして、ゴブリンに襲われ、オークにタコ殴りにされ、ジュノまであと半分くらいところで、息絶えてしまった。
こうなると、誰かに蘇生の魔法をかけてもらうか、いったんゲームを抜けて、また最初からやり直すしかない。
死体のまま「どうしよう」と半泣きになっていると、突然身体が光って生き返った。周りをみまわすと、少し離れたところから、見知らぬ冒険者が手を振っている。通りがかった人が魔法で助けてくれたのだ。その上、尽きかけていた生命力と魔力を最高値まで補填してくれ「good luck」と言い残して、風のように去っていった。有難くて、パソコンの前で泣いてしまった。
その後も、ピンチになると、通りすがりの人がどんどん助けてくれて「私も新人のときは助けてもらったから恩返しなのよ」と、かっこよく去っていった。日本人も外国人も問わずみんなが手を貸してくれた。
無事にジュノに着いたとき、私は「未知の冒険は怖いけど楽しい、困ってもわりとどうにかなる、だって、世の中良い人ばっかりだし」と確信していた。
 
それまでの私は、インドア派で、自己中で空気が読めないので人づきあいが苦手だった。そのため自分に自信がなく「無理」が口癖だった。だけど、この一年を経て、少し人が好きになって、少し冒険に挑戦できるメンタルを身に着けられた。今の私なら現実世界でもいけるかもしれない。
無駄に思い切りの良い私は、スパッとゲームを辞めて、ゲーム内でやってみて面白いと感じたいろんなことを、実際にやってみることにした。
一年引きこもっていた上実家暮らしだったので、貯金はばっちりである。
 
動物に乗っての移動が楽しかったので、まず、会社の部活「乗馬部」に入部した。
釣りが楽しかったので「初心者のための東京湾アジ釣りツアー」に行ってみた。
木工と伐採が楽しかったので「間伐ボランティア」に参加して、林業の人からチェンソーを習い、木に登って枝打ちを習い、製材所でボランティアバイトをし「大人のための木工教室」に参加した。
会社の「編み物部」に入部した。
ミシンを買って、ワンピースを縫えるようになった。
「秋葉原電子工作教室」にいって、ハンダ付けの達人になった。
ゲーム内で格闘家という職業に就いていて恰好よかったので「中国拳法」を習った。三段までとった。
料理は、張り切りすぎて後に本職になった。
リアルでやると、どれも本当に楽しかった。すべての行為が、生身の私の経験値になり、スキルになった。大好きな友達に何かを作ったり、喜んでもらえたりできる。失敗したらリアルダメージを喰らうが、それもまた経験値だ。これを機に、興味をもったら、とにかくやってみる、行ってみるという人生方針が固まった。
この「リア充」生活は、ネトゲ廃人経験がなければ、踏み出せない一歩だった。
 
オンラインゲームは、実際に死なないし、傷つきもしない。嫌になったら簡単に逃げ出すこともできる。
だからこそ、未知の世界にチャレンジする前に勇気の出ない人や、身体的に遠出が大変な人が、簡単に仮想体験できるシミュレーションの地として、とても有効であると思うのだ。
身体的には仮想でも、精神体験的には「本物」なのだから。
 
ちなみに、当時ゲーム内でチームを組んでいた仲間たちとは、未だに連絡を取り合って、年に2回は全員で飲み会をしている。人間性的に屑だった頃の私を見捨てずに、助け合いと人生の楽しみ方を教えてくれた彼らと、ファイナルファンタジー11というゲームを一緒に体験したすべての人、そしてこのゲームの制作者に最大限の感謝を捧げたい。
 
 
 
 
***
 
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2022-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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