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うんこが高く売れた時代よ、再び!

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記事:小林 美紀(ライティング・ライブ 東京会場)
 
 
もし今、あなたがお食事中にこの文章を読んでいらっしゃったら、どうぞご容赦ください。もしそうでなければ、ちょっとだけうんこの話にお付き合いくださいませ。
 
皆さんは、うんこが高く売買されていた時代をご存知でしょうか?
まさか? いえいえ本当のお話です。ほんの数十年前まで、私たちのうんこは大事な資源でした。
 
ご存じの方も多いかと思いますが、戦後最大のベストセラーといわれた黒柳徹子さんの自伝的物語『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)には、好奇心いっぱいな少女トットちゃんが、肥だめ(うんこを貯めておく場所)に思いっきり飛び込んではまってしまい長時間抜け出せなくなったエピソードが出てきます。
 
時代は1940年代。ほんの7~80年ほど前の実話なのですが、『窓ぎわのトットちゃん』の舞台となった東京の自由が丘や等々力など現代のおしゃれタウンの近くでも、肥だめが暮らしの中に普通にあったことがわかります。
 
では、肥だめはなんのためにあったのか。答えは「畑の野菜などの肥料に使うため」なのですが、さらに時代をさかのぼって江戸時代でも、この肥だめ、つまり「うんこ」は貴重な資源として売買されていました。
 
江戸時代では、うんこは何段階かにランク付けされていて、ランクトップは「金肥」(きんぴ)と呼ばれ、他のうんこよりも高い値段で売られていました。金肥と言われていたのは、殿様などエライ人々のうんこ。つまり、栄養のある食べ物をたっぷり食べていた人たちのうんこのことで、まさに金のような価値とされ、このうんこは高く取引されていたそうです。
 
この金肥をめぐって取り合いの争いが起きたこともあったようで、当時、江戸っ子たちが、べらんめえ口調で
「やいやいやい、おめえ、オレが見つけた殿様うんこを横取りするんじゃねえ」
「うるせえ! おめえこそ、横取りするんじゃねえよ。このうんこはな、オレ様が先に目を付けたんだ。このうんこはぜってぇに渡さねえ」
……などと、うんこをめぐって争ったのでしょうか。そんな必死な様子を想像するとおかしくなりますが、当時は「金肥」と呼ぶほど貴重な資源。とても大事な商品だったのです。
 
そもそも畑の土壌は、山の土がそうであるように、肥料などをあげずとも時が経てば自然に地力(ちりょく)を取り戻せます。しかし江戸のように、人々が集中し都市化した場所では、大量かつひんぱんに野菜を作る必要があったため、畑の地力の回復が間に合わず、肥料が常に必要でした。
 
現代のように化学肥料などなかった時代です。さらに江戸時代は鎖国をしていましたから、ほぼすべてのものが自給自足でした。そこで江戸の人々は、さまざまな工夫をこらして、あらゆる有機物を肥料にしました。そして、人のうんこも大事な資源のひとつでした。
 
江戸後期の人口は100万人を超えていたそうで、当時のパリやロンドンが80万人くらいですから、江戸は狭い範囲に多くの人が住む、世界一の超過密都市でした。しかも、徳川家康が江戸幕府をつくった1600年当時は15万人くらいだったのが、参勤交代などで人が集中するようになり、やがて100万人になったのですから、急激な人口増加で食料不足や廃棄物(うんこも含む)の処理が大きな問題だったようです。
 
その両方を解決する方法のひとつが、うんこ循環システムだったのでしょう。そのおかげか、江戸の町は世界一の過密都市でありながら、とても美しく無駄が一切ない、完璧な循環社会でした。まさにSDGsの先駆けです。
 
現代の日本の暮らしでは、水洗トイレは当たり前。うんこは流されていくもので、それを集めて売る人は多分……いません。ところが先日、うんこは今も「金肥」だ、という話を聞いて私はすごくワクワクしました。
 
ほとんどの人がその価値に気づいていないけれど、現代でも私たちのうんこは栄養たっぷりで、うまく肥料にすればこの上なく良い資源に変身するのです。
たしかに、江戸時代の一番エライ人よりも現代人の食べ物は、間違いなく栄養たっぷりなぜいたくご飯です。江戸時代だったら「超金肥」です。そう考えると、そんなうんこを水に流しているなんて、なんとモッタイナイことでしょう!
 
ちなみに、とある大学での実験では、現代の「金肥」で作ったお野菜は甘くてとても美味しかったそうです。もともと、江戸時代の豊かな食卓を支えていたうんこたちですもの。おいしいのは当然でしょう!
 
うんこが高く売れた時代。完璧な循環社会だった時代の知恵は、現代の様々な問題解決、SDGsのヒントとなってくれそうです。
とある知り合いの農家さんが「今年に入って、円安やウクライナ情勢悪化で、輸入肥料がとんでもなく高騰し、ありえない値段になっている!」と悲鳴をあげていました。このままだと農業が成り立たなくなる、とも。そうしたら野菜の価格も高騰することでしょう。
もしかしたら、現代の「金肥」に注目が集まる日は近いのかもしれません。
 
 
 
 
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2022-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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