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「将来の夢」について、3歳から始めたいキャリア教育


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記事:ほしのちかこ(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「大きくなったら何になりたい?」
「走るのが早いねー、将来はスポーツ選手かな?」
幼い子どもに向けて、家族や身近な人がこんな声をかけることは、よくある。
小学校の作文や卒業文集でも「将来の夢」というテーマはよく使われる。
 
この純粋な問いかけも、積もり積もって、呪いに変わることがある。
 
 
私には、長い間、夢がなかった。
幼い頃の将来の夢は覚えていない。おそらく人並みに「◯◯やさん」などと言っていたのだと思う。はじめて夢らしい夢を持ったのは、小学校の高学年の頃だった。読んでいた本に出てきた、心理カウンセラーという仕事を、将来やりたいと思った。
中学生の頃は、その夢は消えたわけではないけれど、目の前の受験という目標のほうに気をとられ、あまり意識をしたことがなかった。高校生になって、いよいよ大学の学部を考え始める頃、心理学で食べていくのは難しいのでは、という思い込みから、その夢をあっさり諦めた。簡単に諦められる程度の夢は、夢ではないんだろうなと、冷めた目で見る自分がいた。
高校生の私にとって、夢とは将来なりたい職業であり、進学先を決めるための基準だった。しかし、その夢がない。将来の漠然とした可能性、「つぶしがきく」「食べるのに困らない」、そういう「安定」と少しの興味をもとに、進路を決めるしかなかった。
結局私は、心理学を少しは学べるであろう看護学に進み、いろいろあって中退し、商学部に入り直した。大学を中退したことを、自分にとって正解だったと思えたとき、「人生の大きな選択を支援したい」と、ようやく夢のようなものが見つかった。
 
そしてこのとき、気づいた。
夢は、「将来なりたい職業」ではない、ということに。
自然に「職業」で考えていたことに。
 
 
私は以前、高校生・大学生のキャリア教育に関わる仕事をしていた。現在は、大学生・社会人を対象としたキャリア支援を仕事にしている。
キャリア支援をしていると「やりたいことがわからない」「夢がない」という話を頻繁に聞く。高校生から社会人まで、一様に。多くの人が、私と同じように悩んでいる。
 
何故こんなにも、みんな同じ悩みを持つのだろうか。
 
キャリアについて考える機会がないから?
これまではそうだったかもしれない。でも最近はキャリア教育も充実しており、小学校ですらキャリア教育を行っている。キャリアについて考える機会はある。
 
それよりももっと大きな要因は、これまでの「常識」にある。
「将来の夢=将来なりたい職業」という常識、あるいは思い込みだ。
 
終身雇用や年功序列が当たり前だった頃、将来=職業で考えていても差し支えはなかった。むしろ、それが当たり前だった。
しかし、今は転職や副業も当たり前。人生100年時代、生涯同じ職業ではない人も多くいる。将来を職業で考えるのはナンセンスだ。
それなのに、前時代からの常識は、簡単には変わらない。
 
人は、知らない職業を夢とは言えない。子どもが関わる大人は限られている。両親、親族、先生、習い事の先生……。子どもは、それらの大人たちの職業や、テレビや本で見たことのある、認識したことのある職業しか、将来の選択肢にできない。将来の夢=職業とすると、やりたいことがわからない、夢がないと思うのも当然である。
 
職業は、多くの場合、目的でなく手段のはずだ。しかし、「職業」で考えることが当たり前になっていると、本来の目的を見失う。そして周囲の誰も、本来の目的は何だったか、ということを掘り下げてはくれない。そうすると、その職業に就くのが難しいと思った時、夢がなくなり、挫折経験となる。
「職業」で考えなければ、「やりたいことがない」人はほとんどいないし、自覚していないだけで深掘りしていけば出てくるものだ。
 
「大きくなったら何になりたい?」という質問は、親や祖父母、学校の先生から、何度も何度も問われることで、「将来の夢=職業である」という思い込み、呪いになっていく。そして「やりたいことがわからない」人が増えていく。
 
 
「どんな人になりたい?」「何をしたい?」などの質問とともに、「何になりたい?」は確かに将来を考えるうえでの質問のひとつとして有効だ。だから「大きくなったら何になりたい?」という質問自体が問題なのではない。
しかし、みんなが一様に「どうありたいか」ではなく「何になりたいか」と問うこと、また
それが軽い話題として扱われるにも関わらず、そこから話を深めていく機会が少ないことが問題なのだ。
 
子どもはいろいろな大人と接して、様々な考え方に触れたほうが良い。だから、誰かが子どもに「大きくなったら何になりたい?」と聞いても、それをとめようとは思わない。将来を考えるきっかけとして、むしろその質問はありがたい。私自身もその質問をすることはあるかもしれない。
だけど、子どもが自分で将来を限定してしまわないように、職業で考える癖がつかないように、意識しておくことは大事だ。将来の夢を職業で答えていたら、どうしてそう思ったのか、問いかけたい。
 
私の息子は最近4歳になった。
将来の夢の話を息子とするのはもう少し先かもしれない。でも日々の中で、「将来の夢=職業である」という思い込みをつくらないような関わりをしていきたい。
 
 
 
 
***
 
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