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崖っぷちアラフォー婚活女が「ガンダム」に救われた話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:杉本陽子(ライティング・ライブ東京会場)
 
 
「ガンダムの中で一番好きなキャラクターって誰ですか?」
 
私は微笑みながら赤ワインをグラスに注ぎつつ、彼に尋ねた。
 
彼との4度目のデートは駅近くのお洒落なイタリアンだった。
 
彼とは結婚相談所のお見合いで知り合った。
彼は東京在住なのだが、どうしても彼自身の出身地である福岡の女性と結婚したいということで、福岡の結婚相談所に登録して、私と出会うことになったのである。
 
お見合いで初めて彼に会った時の感想は
「なぜこんな人が結婚相談所に登録しているんだろう?」だった。
 
婚活を始めて約4年。これまで何十人もの男性と出会ってきた。
アラフォーの私が出会える男性はアラフィフの方が大半で、どちらかというと会社の上司みたいな感じで異性として意識することのできない人のほうが多かった。
 
一方、目の前の彼は実年齢の48歳よりも10歳くらい若く見えて、清潔感があってシュッとした印象。一応名の知れた会社に勤続25年でそれなりの収入もあった。これまでいくらでもご縁があっただろうに、どうしてわざわざ結婚相談所に?というのが正直な感想だった。
 
女性というのは用心深い生き物なのかもしれない。実はこう見えてすごく性格がキツいとか、神経質とか、絶対何かしら結婚相手に向かない「負の要素」があるに違いない、と思った。
 
とはいえ。私はすでに彼にあった瞬間に一目ぼれしてしまっていた。
 
「女は顔さえ良ければ何でも許してくれる」
 
と言ったのは、昔マッチングアプリで出会った自称ジャニーズ系のろくでなしの既婚男(プロフィールにはバツイチと書いてあったのに!)だった。
 
(私はそんなんじゃない! 大切なのは顔じゃない!)
 
ちゃんと男性の本質をしっかり見抜いて結婚するかどうか決めるんだ、と固く心に誓った。
 
1度目、2度目のデートではテーブル席で向かい合うことが多かったが、3度目のデートで二人座れるのがやっとの個室に横並びで座ることになった。
 
ワインをボトルで頼んで、グラスを交わしながらじっくりお互いの趣味の話をしあう。
どうやら、彼はガンダムが好きなようである。
 
一方の私は、ガンダムの主人公がアムロということは辛うじて知っているが、それ以上はよくわからないし、正直興味もほとんどなかった。
 
がしかし、お酒も入るにつれ、彼のボルテージはどんどんあがってくる。
 
「シャアは赤い彗星と呼ばれていてね」
「地球連邦軍のホワイトベースが……」
「ククルスドアンの島でザクに撃墜されて……」
 
私がわからない言葉がポンポン飛び出してくるのだが、彼の熱気は高まる一方であった。
 
「シャアってどんなキャラクターなんですか?」
「へ~! すごいですね!」
「それからどうなっちゃうんですか?」
 
私は図らずも彼の話をどんどん引き出してしまう。
 
ふと腕時計を見ると、もうすでに2時間が経っていた。その間ガンダムの話しかしていない。
 
(も、もしかして彼がこれまで独身だった理由って、これなんじゃ……?)
 
彼は自分の好きな話、特にガンダムの話になると止まらないようなのだ。
 
(私が彼のことタイプだから、興味のない話でも思わず聞いちゃうのよね。彼のこと全然タイプじゃない顔だと想像して話を聞いてみよう)
 
幸い、今回は横並びに座っていたので、彼の顔を見なくても大丈夫だった。
 
全然タイプじゃない男性が全然興味のない話を一方的にしてくるのをただひたすら聞かされる。
 
何この地獄絵図……。
 
 
 
になるはずだった。
 
楽しいのだ。彼が楽しそうに私に話をしてくれるのが嬉しいのだ。それがたとえ私の興味のないことであっても。
 
私の目論見は砕け散った。観念しよう。私はこの人といると幸せなのだ。
顔がどうとかこうとかはどうでもよくなっていた。
 
私がガンダムを好きになればいいんだ。そしたら彼との時間がもっと楽しくなるに違いない。
 
私は3度目のデートが終わってから、ガンダムについて調べ始めた。
「ガンダムファースト」だけで43話もあるので、全部見るのはしんどいからまずは映画版を観ることにした。それでもなかなかハマりきらず、ガンダム好きの男友達を見つけていろいろ解説してもらうことにした。
 
一応ファーストの内容全般と、その後の流れについてもざっくり頭にいれたところで、目の4度目のデートに臨む。3度目のデートの時よりも、専門知識が入ったおかげで、彼の話に前よりもついていけそうだ。
 
ガンダムシリーズ通して彼が一番好きなキャラクターは「ガンダムZ」のカミーユらしい。
 
(あの、人をすぐ殴る精神不安定なカミーユ……?)
 
好きということは、どこかで自分と似ているところがあったり、共感するからそう思うのではないかなと思うと一抹の不安を感じたが、「ガンダムZ」を全部見たことないのであまり考えないことにした。
 
前回以上にガンダムの話で盛り上がったところ、彼が「ごめんなさい、僕、ガンダムのばかり話してましたね」と言ってくれた。
 
おお、やっと気づいてくれましたか。
 
そこから、お互いの仕事の話や、旅の話など、ガンダム以外のところでも話が盛り上がった。
お店には開店時間に入店したのに、気づいたらお客さんは私たちだけで閉店の時間となっていた。
 
翌日のデートで「結婚を前提として僕とお付き合いしてくれませんか?」と正式にお付き合いのお申し出をいただいた。私は「喜んで」と答えた。
 
それからほどなくしてコロナ感染が急拡大、一度目の緊急事態宣言が発令された。
私たちはお付き合いの間、1度しかリアルでデートできなかったが、土日、祝日、ゴールデンウィークと、休みの日は1日も欠かさずZOOMでのオンラインデートをした。
 
ガンダムの話から始まり、仕事の話、旅の話、家族の話など、いくら話しても話尽きることがなかった。時には、ガンダムだけではなく、私がこれまた全く興味のない野球の話を2時間熱中して話してしまったりする彼のことがなんだか愛おしかった。
 
そんな日々が続き、やっと緊急事態宣言も解除となり、3ヵ月ぶりのリアルなデートで彼は私にプロポーズしてくれた。
 
「お付き合いの間、ほとんど会うこともできなかったのに、私と結婚しようと決断してくれた決め手を聞いてもいい?」
 
彼を見送る空港で私は尋ねた。
 
「これまでこんなに一生懸命、そして楽しそうに話を聞いてくれた女性はいなかったからだよ。これからもそんな女性には出会えないだろうと思ったから」
 
結婚したい理由で私にとってこれ以上嬉しい回答は無かった。
 
(確かに、ガンダムの話を私以上に一生懸命聞いてくれた女性はいなかっただろうし、これからもいないだろうと思うよ)
 
とは言わなかったが。
 
 
 
それから月日は過ぎ、結婚して2年半が経った。
 
「この人が長年結婚できなかったのには理由があるに違いない」の答えは、「ガンダム」以外に未だ思いつかない。ちょっとカミーユっぽく熱くなりすぎるところはあるが、いたって優しい旦那様である。
 
 
私は今でも、旦那さんと結婚できたのはガンダムのお陰だと思っている。
 
マチルダ中尉の言葉を借りて、この言葉で締めくくりたい。
 
「あなたの存在が無ければ私もやられていたわ。ありがとう」
 
 
 
 
***
 
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2022-10-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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