月の思惑にのせられて
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:pon(9月ライティング・ゼミ9月コース)
「最強のエンタメやん」
そう認めざるを得ない現象でした。
みなさん、11月8日の夜は月を見あげましたか?
わたし、実はその日が皆既月食と天王星食が同時に起こる、とても貴重な日だと知ったのは、当日の夜だったんですよね。あやうく大事な瞬間を経験せずに終わるところでした。それは、まるで目の前で生演奏を聴いたような興奮と感動の経験でした。
ちなみに皆既月食とは月が地球の影に完全に重なり隠されて、いつもの温かな白い輝きが徐々に赤い銅のような静かな色味に変わる現象。天王星食は月に天王星が隠れる現象です。
私がそれを知った夕飯の準備の時間。冷蔵庫のあまり野菜を入れた鍋の味が心配で味見をして整え、揚げたてのカキフライが冷めないように慌ただしくテーブルに並べ始めた時でした。
「げっしょく始まってるらしいで。442年ぶりの。てんのうせいしょくとセットの」
「え? そうなん?」
食卓のセットしながら、彼が言った言葉が何のことかよくわからない……それよりカキフライが冷めてしまわないか心配の方が勝ってしまって、一旦話を深堀りせずに慌ただしく席につきました。
「いただきます!」と、食べごろを逃すまいと、2人で必死に鍋をふーふーしながら一口食べて、カキフライを一口食べて、あっつあつのサックサクに揚がってたことに大喜びして、やっと気持ちが落ち着きました。やけどしかけた喉に冷たいお茶を流し込んだところで、
「げっしょくと、てんのうせいしょくて何?」と聞いたら、彼がネットのニュースを見せながら、どんな現象か、その2つの現象が同時に日本から見えるのは442年ぶりであることだと教えてくれました。
「始まってるはずやで。見てみる? 見えるかな?」と、彼が鍋を食べながら言ってくれて、やっと事の大きさが把握でき、箸を置いて慌ててベランダにでました。空を見上げると月がゆっくりとかげり始めていました。
すごく神秘的な皆既月食を無事に見上げることができた……実はここからが私にとってさらに感動が広がっていく経験となったのです。
月の変化を見ながら、「あ!」と思い立って、ちょうど月の見える方向に住む、兄に電話をかけました。姪っ子や甥っ子が月食を見てどんな反応をするかなとワクワクしたからです。しばらく鳴らしましたが電話は繋がらなかったので、次に父、母、兄との家族のグループLINEに、「月みたー?」とだけ送りました。あまりにもキレイに月食していく様子が見えるので、思わず見て欲しいと共有したくなったのです。
母からはすぐに、「見てるよー 」の返信が。ちょうど空を眺めていたようです。やりとりはそれだけなのですが。母が月を見ていたことと、逃さず見れたことに嬉しくなりました。
そうこうしながらベランダで眺めていると静かな夜の住宅街に
「ガラガラ!見える見える!ほらほら!」
と、窓を開ける音と声が聞こえてきました。そのワクワクした声が、次々にあちこちの家から響きます。まるで楽しい演奏を聞くように様々な楽器が曲中に音を重ねていくようにあちこちから、弾みのある声が重なっていきます。
すると、わたしのスマホも鳴りました。兄からの折り返し電話でした。
電話からは「月見る余裕ないぐらい忙しかったわー!!ちょっと今から見る!」と、ベランダに出る音と、後ろで子供たちのキャーキャー走りまわる声。義姉の「頭拭いてー!」と、子供たちを呼ぶ声が聞こえました。お風呂上りだったようです。
「月見たよー!月がたべられちゃうんだよねー?」と、可愛い声も聞こえてきました。電話が終わって、私たちは鍋温めなおそうかーなんて言いながらご飯を再開してからも、食べ終わった後も、なんども月がどうなったかを見にベランダにでたり。
そうして、ふと思ったのです。こんなに最近夢中で見入ったモノなんてあったかな?と。最近、慌ただしく朝も夜もテレビを見る時間もない生活。そんなエンタメ離れしていた私でさえもアツアツの鍋と箸を置いて、見入ってしまった。そこらじゅうの近所の家族たちも、皆んな窓を開けて見ていた。家族にみてみなよ! と、すすめたくなった。
目の前で起こった一連の出来事は生演奏を見た後のような興奮と感動を与えてくれました。
「これって……繋がりを生み出す最強エンターテインメントショーなのでは??」そう気づいたのです。
こうやって月の現象一つで、色んな家庭の中や人との会話がうまれる瞬間を体感し、家族と大切な人たちと一緒に経験できたという奇跡に、余韻のような興奮と感動がさらに湧いてきました。
TwitterやInstagramでもタイムリーに話題になっていましたが、次の日も会社や学校で、「月見た? 」なんて会話があちこち生まれたかもしれません。
この現象がなぜ繋がりを生み出す最強のエンタメショーになったのか?
・天気が良かったら見れるかも?など運任せのような条件つき付加価値。
・442年ぶりの貴重さのインパクトがあること。
・その時、限られた時間じゃないと見れないこと。
・自分の目で見ることに価値があること。
・道具やスキルはなくても簡単に見られること。
・見れたこと自体に感動や喜びを感じること。
・美しく神秘的なこと。
・皆んなが体験したがっていること。
まさに皆んながチケットを取り合う期間限定のショーやテーマパークのパレード、コンサートなんかは、この条件にいくつか当てはまります。
皆既月食に繋がりを生み出す最強のエンタメのあり方を教えてもらいました。月の思惑通り、私もみなさんに、この体験のことを話さずにはいられませんでした。
次の日本で見られる皆既月食は3年後の2025年の9月8日です。何が起こるかワクワクしませんか?
***
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」
〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168
■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」
〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325