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食べない道楽


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記事:今津眞一(ライティング・ゼミ8月コース)
 
 
「食べる道楽」は普通に聞いたことがあったが、「食べない道楽」は聞いたことがなかった。これの意味するところは、食べないことを楽しむという事。
私が人生で初めて「断食」を体験した時に、知った言葉だ。
 
では、食べないことの何を楽しむのか? 疑問に思われるかも知れない。今日はそのことについてお話ししたい。
 
以前より断食には興味を持っていた。ある本で、江戸時代の有名な観相家である水野南北という人が、「人の運は食にあり」と説き、「粗食小食が開運を握る」と言っていたことを読んだことがあった。
彼は、人の顔を見てその人の吉凶を占う人相占いの専門家だが、彼の占いのバックグラウンドは大変興味深いものだった。
少し説明すると、彼は小さいころからやんちゃで本も読めなかった。そんな彼が18歳の時、悪事を働き牢屋のお世話になるのだが、そこで出会う罪人の人相が、町人の人相とあまりに違っていることに興味を持ち、牢から出たらその理由を突き止めようと決心する。仕事をスタートした時、最初の3年は床屋へ弟子入りし顔や頭の形を観察。次の3年は風呂屋の三助となり裸になった人の肉付き、骨格、陰毛の生え方まで観察。そして次の3年は火葬場で働いて死んだ人の骨相を観察し、その人の人生との相関性を見極めようとしたそうだ。キャリアアップ? とでも言えるような仕事の就き方が素晴らしい。
 
彼がそこで気付いたことは、食と運命の切っても切れない関係だった。 誰が来ても、食事の量や時間、内容など詳しく聞き、そのうえでその人の吉凶を占ったとのこと。彼が到達した境地は、彼の観相学の根本となり、彼の占いは100%当たると評判になったそうだ。
 
現代人は、ともすれば食べ過ぎていると反省せざるを得ない。食品ロスに至っては、日本は廃棄している量も半端ではなく、決して豊かさを自慢できるものではない。かく言う私も、その一人だ。好きなものばかり食べ、体に必要と思われる栄養にバラツキがあり、余分なものを脇腹にため込んでいっているタイプである。
断食をすることで、その後の食生活が変わり、小食で済むようになると本には書いてあった。体質改善も兼ね、本当に必要なものを少し食べるだけで良い体質になるならば一石二鳥だ! 先ずはやってみることに。
 
2012年春、御殿場にて開催された2泊3日の座禅断食コースに申し込んだ。
私は、今まで断食などしたことがない、まったくの未経験者。初めて参加したこの時は、お腹がすいて寝つけないかもと考え、非常食としてカロリーメイトをカバンの底に忍ばせていたぐらいである。
 
「う~ん、我慢できるかなぁ……」
考えているだけでは、何も変わらない。
「やってみるか!」
 
申し込んだきっかけは、以前から興味を持っていたことと、前年の東日本大震災でいろいろと考えさせられ、何か新しい変化を求めてだった。
 
当日は現地集合、約20名ぐらいだった。断食は2泊3日の予定で、金曜日から始まり日曜日のお昼まで続く。水と塩、以外は何も口にせず、座禅と休憩を繰り返す。そして断食明けに、梅湯を大量に飲み大根や生野菜を食べ、空になった腸管の内壁に貼りついていた宿便(便秘により腸内に長期間滞留している便)を剥がし、腸内をきれいに掃除するのだ。
梅の酸が洗剤のような役割をし、大根や生野菜は水分を取られてその食物繊維がタワシとなり、そのタワシで腸管の中をきれいにするという仕組みだ。
 
この断食では、2泊3日の最短で宿便を出すことが一つの目標になっていた。後で分かったことだが、座禅で背筋を伸ばすことが腸と自律神経に作用し、宿便が出やすくなるようだ。いろいろと考えられ過去の経験則が生かされているのだろう。
 
最初は何気なく過ごしていたが、2日目に入って身体が重く感じられる時があった、通常の食事で得るエネルギーがなくなり、体の中に蓄えられているエネルギーを使うようになった時だそうだ。エネルギーの源が変わるのだ。それを過ぎるとまた安定し、2日目の夜など特にぐっすり眠ることが出来た。
 
断食明けの3日目は、気持ちよく目覚めた。そしてお昼ごろには明けの食事が待っていた。不思議とお腹がすいている感覚が殆どない。個人差があるのかもしれないが私の場合、食事を始めて30分もしないうちにもよおしてきた!(宿便である) トイレへ行ってみると、黒い便がドバっと出てきた。 腹黒いやつほど沢山出るらしい。(笑)
何度もトイレに通い、食事が終わった時には、何か達成感すら感じたことを覚えている。
 
私が一番ビックリしたことは、何といっても断食後の爽快感だ。
以前なら昼食後、決まってウトウトと眠くなってしまっていたのだが、それが一切ない。スキッと頭の中が極めてクリアーなのだ。感覚が研ぎ澄まされたのか、匂いに敏感、味にも敏感、歩いているだけでも何か愉しい! こんな経験は今までしたことがなく、強烈な印象となった。
 
 
コロナでここ2年ほど参加できていないが、機会を見つけてまた参加したいと思っている。食べることを楽しむ道楽もあるが、時々食べないで自分の体をリセットし、感性を研ぎ澄まし、食べることの喜びや有難さを再認識する道楽があってもいいと思う。
これが、みなさんに「食べない道楽」をおすすめする所以である。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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