青春! 集まれともだち村
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記事:村民(ライティング・ゼミ8月コース)
『みんな集まれ〜!』
と言ってもいないのに、生徒の皆が金八先生に集まりキャッキャと楽しいそうにしているドラマのオープニング映像の様は青春の見本のようだ。
そんなことあるわけない。と、ひねくれた目線で過ごしている私だが、
人生の中で私はそういった青春をともだち村で経験したことがある。
それは私の数少ない青春の記憶。
もう、ともだち村はない。だけど時々、きらきらとかがやく子供達を街で見かけると思い出す。
ともだち村というのは埼玉県で行われていた読書会が2年に1度開催する子供キャンプだった。
もう20年も前なので詳細は思い出せないが、森の中にある青少年センターと言われるところで宿泊していたので最近流行りの本格的なアウトドアなものとは違い、林間学校と言った方が想像しやすいかもしれない。
初めて参加したのは中学3年生の時だった。お世話係で参加していた姉の紹介だった。
2日間のキャンプの工程は、お世話係の高校生以上の年齢から20代〜30代の人たちが集まって、レクリエーションを企画し、班の振り分け等や当日のスケジュール管理なども行うキャンプの裏方たちで進める。
キャンプでは小学1年生から中学3年生までの参加者が集まって5〜6人で班を作っていたが、
メインでキャンプに参加する年代の子供たちは小学生なので、
初めて参加した中学3年生の私は下の子たちを見るお世話係に近い役割だった。
小学生の子たちと全力で遊んでとても楽しかったけれど、キャンプを企画する先輩たちがとてもキラキラしてかっこよく見えて、その仲間に入りたかった。
その次の開催で私は高校生になったのでお世話係として初めて参加し、
自分より年上のお兄さんお姉さんに混ざって様々な企画を進めての参加は、それはとても楽しい経験だった。
そのともだち村で重要なのが村長という存在で、キャンプを引っ張っていくリーダーだ。
皆のカリスマで人気があり、村長がキャンプを盛り上げていた。
3回目の参加の時、なぜかともだち村の村長になってしまった。
表に出るタイプでは全くないのだが、会に参加し始めたのが周りの皆より遅かったので運営の仕方が分からず、裏方が出来なかったからだ。運営に携わるお世話係のほとんどが、小学生から読書会に参加する古参のメンバーだった。
私の戸惑いは急に村長という神輿に乗せられただけではない。
前回、前々回の村長はとても皆に人気のある兄さんだったからだ。
彼は皆から慕われていて、私もとても尊敬していた。ともだち村という場所でなくてもカリスマ的な存在だというにおいがする。絶望しかない。この後の村長はとても荷が重かった。
カリスマ的な要素は全くない私はひとみごくうになることを決めた。
生けにえというか、公開処刑というか。始まる前からずっと胃が痛かった。
しかし私には断れない理由があった。
その年でともだち村は最後の開催だったのだ。最後なら、役不足なれど甘んじて全うしたい。
経験の浅い私は、会のほとんどを皆に助けてもらった。頼りない村長である。
会の肝心なところは読書会の神に助けてもらった。
子供の頃から読書会に参加していたひとつ上の先輩である。神にはこの活動で数えきれないほど助けてもらった。村長という役回り上、皆には言えない不安も神に聞いてもらい、私の毎回のダメな発言にも神が落ち着いて聞いてくれていたおかげで、私は何とか役割を全うできた。
皆が聞いたら村長クビだろうが、さすが神。私の不安を丸ごと包み込み、会がうまく進むように動いてくれた。
私は神のあなたが村長をやるべきだろうと思っていた。
本来なら満場一致で神の彼女が村長だろうと疑問に思ったが、村の長より神の方が立場は上なので違うのだろう。神ゆえに運営での役回りも裏の村長という立ち位置だった。
村長は全く働いていないが、神と皆のお陰でキャンプ当日は大きなトラブルもなく無事にキャンプが終了した。
プレッシャーで2日間私は生きた心地がしなかったが、無事に終わって神に電話をした。
神は事情があり2日間の開催の間、初日しか参加できなかったのだ。なので2日目は相当目一杯だった。
不安から解放された私は真っ先に神に電話で報告した。
私からの報告を聞いた彼女は、無事に終了した事より私の心配をしてくれていた。
神は2日間とも参加したかっただろうし、本当は村長をやりたかっただろう。
本来なら彼女がやるべきだった。前カリスマ村長からの信頼も厚い彼女だった。
でも2日間とも参加できないからと、複雑な想いで私にバトンを渡してくれたであろうことを終わってからようやく気付いた。
キャンプが終わるまで自分の不安でいっぱいで、彼女の気持ちに気付かなかった。
終わってから気付く後悔と、電話越しの彼女の優しさに涙が止まらなくなってしまった。ありがとうの気持ちをちゃんと伝えられなかった。
もし、あの時に戻れるのなら。などと都合のいい事を考えてしまうが、もうともだち村は開催しない。挽回ができない後悔というものは日に日により濃くなっていくことを、歳を重ねるごとに思い知らされる。彼女はそんなこと、気にしなくていいよ。と言いそうだけれど。私はずっと、後悔したままなのだ。
彼女に直接返せない恩を今、私は別の誰かに返している。彼女からもらった優しさを、せめて私の周りの人たちに返せたら。
いつかまた皆で集まって、あの時の思い出を素直に語り合いたい。
大人になった私たちが集まったともだち村は、とても素晴らしい村になるだろう。
***
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