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後一日と聞いて感じたことは


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記事:山田THX将治(ライティング実践教室)
 
 
10月5日のこと、私が加わっているSNSグループに、
「後一日だ。ワクワクが止まらない!」
と、感情の籠った書き込みを発見した。
瞬時に私は、
「後一日ということは、1,095日待った、正確には待たされたんだなぁ」
と、感じ入ってしまった。
 
 
この三年間、世界的に蔓延した、新型肺炎ウイルスのせいで数限りないイベントが中止もしくは無観客開催と為った。代表的なものでは、2020年夏に開催予定だった東京オリンピックが、一年順延の憂き目に遭った。更に、順延された2021年夏に為っても、パンデミックが収まらなかったことで、無観客での開催と為ってしまった。
これは、オリンピックと同じく私が観戦を楽しみにしているカーレースのF1も同様だった。2020年・2021年と2年連続して、無観客開催は勿論、日本が世界に誇る三重県・鈴鹿サーキットに、一台のマシンも呼ぶことが出来なかった。
 
私は、小学一年生の時(約60年前)にニュース映画でHONDAの初勝利(F1での)を知って以来のF1フリークだ。映画にも為った1976年秋に富士スピードウェイで臨時開催されたレースも観戦に行った。豪雨の中、ずぶ濡れで観戦したっけ。高校3年生の時だ。
 
毎年鈴鹿へ、F1観戦の為に通う様に為ったのは1987年のことだ。数年抜けたことは有ったが、今年で35年にも為る。
もうこう為ると、私の鈴鹿行は年中行事だ。何かの拍子に、私が中京方面へ行くことが知れると、私を知る方は押し並べて、
「今年もF1が日本に来る季節か」
と、知る様に為ったものだ。
 
 
そんな大好きで、それこそ私にとってクリスマスやハロウィンの様な年中行事・F1が、2回も開催されなかったのだ。今年・2022年の開催も、例年よりかなり遅く、夏に為ってから正式発表の運びと為った。
考えてもみて欲しい。もし、バレンタインデーが2年も飛んでしまったら、落とそうとしたイケメンが、どこかへ行ってしまうかもしれない。さもなければ、他の女性に落とされてしまうかも知れないのだ。
誰だって、精神的に不安定な状態と為るだろう。最低でも、過分なストレスに悩まされることだろう。
 
そんなストレスが溜まり切っていた私は、夏に為り、今年のF1開催が正式に発表される(それも有観客で)と、今度は反対に3年分の期待が一気に噴出してしまった。何しろ、3年分の楽しみが溜まっていたのだから。
まるでそれは、3年振りに遠足へ行ける小学生の様だったことだろう。
いや、多分それより酷かったかもしれない。
大人に為ってから、運悪く麻疹(はしか)なんぞに罹ろうものなら、命に関わったりするというのと同じだ。
 
それからというもの、麻疹に罹った老人の私は日夜、今年のF1観戦のことで頭が一杯に為り、何事も上の空に為っていた。
何しろ、3年振りの里帰りみたいなものだからだ。
普段から準備の取り掛かりが遅い私だが、今年の鈴鹿行きは違っていた。2週間も前に、観戦用の荷物はすっかり出来上がっていた。5日も前に、その荷物も車に運び入れていた。
麻疹の老人は、子供以上に我慢が無く為るのだ。
しかも、出発が近付くに連れて、3年分の楽しみは3倍を超えて3乗といっても大袈裟ではなくなっていた。
 
 
そして例年通り、日曜日の決勝前の水曜日に、名古屋まで前乗りしていた私は、
『後一日』
の書き込みを目にしたのだ。
もう私のワクワクは、限界に達しそうだった。
そして、閏年を挟んだ為1,095日と為っていた我慢の日々を想い返していた。
そして、
「明日、鈴鹿サーキットのメインゲートに立ったら、涙を堪えられないだろうなぁ」
と、想像していた。
そして、興奮が収まらず眠れない自分に、
「鈴鹿サーキットとF1は、逃げないから早く寝ろ!」
と、言い聞かせた。
 
 
翌日、例年なら実施されるコースウォークが中止に為り、何のイベントも無い鈴鹿サーキットに向けて、私は車を走らせ始めた。
『イベントも無いのに何故』
と、御考えの向きも有ることだろう。
私の様なF1フリークにとって、グランプリの前夜祭ともいうべき木曜のサーキット入りは、行くだけで価値が有るというものなのだ。何しろ、最低限レースの準備をしているピットスタッフやサーキット関係者が、奔走する姿を見ることが出来るのだ。
もしかしたら、コースの下見に来たレーサーに逢えるかも知れないのだ。
それより何より、少しでも、誰よりも早く、3年振りのF1グランプリに近付きたいのだ。
 
例年よりかなり遅い10月6日10時過ぎ、私は鈴鹿サーキットのメインゲートに到着した。
友人と一緒だったので、何とか涙だけは堪えることが出来た。
 
しかし、心の中では、
「やっと、やっと、来たぞ!!」
と、号泣していた。
 
1,095日も待った自分を、褒めてやりたくなった。
 
 
 
 
***
 
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2022-11-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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