友人Kとの奇妙な関係
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記事:カワマツ アヤリ(ライティング・ゼミ10月コース)
私は友達が少ない。
そんな私が結婚式に招いたのは、少数精鋭の友人たち。高校や大学の同級生、バイト先で仲良くなった友人など……。
そんな中に一人、学校や職場は一切関係ない、ちょっと変わった関係性の友人がいた。
ここでは彼女を”友人K”と呼ぶことにしよう。
友人Kは、結婚式に呼んだ友人の中では、一番古くからの付き合いだった。
一方で、顔を合わせて一緒に過ごした時間は、一番短いと思われる。
なぜなら、友人Kとは、ネットで出会った友人だからだ。
そんな友人Kは、私にとって第二の家族である。
友人Kと私は、中学二年生の時、とあるブログサービスで知り合った。
当時のわたしはあるアイドルのことが好きだったが、周囲に気の合う友人がいなかった。
そこで、ブログを始めることで、アイドルの話ができる人を探そうとしたわけだ。
ブログサービスのユーザー数が多くない中、同い年で、かつ同じアイドル好きなユーザーは少なかった。
そんな状況で、友人Kのブログを見つけるのはあっという間だった。
自然にお互いのブログを読んだり、コメントを残す仲になった。そしてお互いの連絡先を交換するに至った。
その後、ブログをお互いに更新しなくなっても付き合いは続いた。メールのやり取りをしたり、年賀状の交換をしてみたりした。
時は流れ、発言の場はブログからTwitterへと場所を変えた。
Twitterというのは不思議なもので、その人の「つぶやき」を見ているだけで、なんとなく人となりが分かってくる。それは、フォローしている時間が長ければ長いほど、だ。
自分がどういう時にTwitterでつぶやいているか、思い返せば「そりゃそうだよ」という話ではある。
「家族が〇〇してくるの本当に嫌だ、構わないでほしいのに」
「アイドルの〇〇くんやっぱ好き……同じ時代に生まれて本当に良かった……」
「今日仕事で失敗した、死にてぇ……」
そう、ほとんどが”現実では言えないこと”や”言わなくてもいいこと”だ。
フォロワーのそういったつぶやきを毎日見ていれば、毎日一緒に過ごしているような、そんな感覚に陥る。
Twitterという家に帰ってきて、タイムラインという部屋に入る。
フォロワーがつぶやいているのを聞く。たまにコメントしてみたり、聞き流すだけのこともある。
そうやってフォロワーは、”同じ部屋に集まった同居人”になる。
そう、まだ家族ではない。
“付き合いの長いフォロワー=家族”とはならないのである。
さて、ここで友人Kと直接会ったときの話をしていきたい。
友人Kは東海地方に住んでいるが、一方の私は、東日本の日本海が面する田舎に住んでいた。お互い「この距離だと、そう簡単に会えないね」と話していた。
しかし、私は大学進学を機に、都内で一人暮らしをするようになった。
上京した年の春、私達が応援するアイドルが都内でライブをやることになり、そこでぜひ会おうという話になったのだ。
会うのが楽しみな反面、不安な気持ちも大きかった。
なぜなら、今までネットで知り合った友人と実際に会ってみて、良かったと思えたことが一度もなかったからである。
ある人は、会ってみたら想像以上に”陽キャ”で、住む世界が違う人だと思ったこともあった。
また別の人は、ちょっとヤンキーっぽくて、もう関わりたくないと思った。
友人Kに対しては、ネット上で長い間仲良くしているという安心感と期待感がある反面、「ここで縁が切れたらどうしよう」という不安があったのだ。
約束の当日。いざ会ってみたら、そんな不安はよく晴れた空に消えていった。
彼女には失礼かもしれないが、喋り方に”オタクっぽさ”があり、服装は派手すぎずオシャレすぎず、大学一年生らしい相応な印象を受けた。
「仲間だ!!!」と思った。
これ以降、回数こそ多くはないが、共通の趣味であるアイドルのコンサートや舞台を、機会を見つけては一緒に行くようになった。
舞台やコンサートの前後には、ご飯を食べながら趣味の話で盛り上がったり、時には観光したこともあった。
ある時には「実はさ……つい先日私失恋したんだけどさ……、だから今日の舞台の〇〇にめっちゃ共感してさァ……」なんてぶっちゃけた話もした。今思い出すだけで、顔から火が出そうだけれど。
こうして、友人Kと直接会う度に、短いが濃密な時間を一緒に過ごした。
すると、Twitterのタイムラインで見かける彼女のつぶやきも、特別親しいものに感じられてくる。
そう、ずっと前から仲の良い、気のおける人――家族である。
おそらく、ただ趣味が同じだけでは、ここまで仲良くならなかったはずだ。
出会うきっかけとなったアイドルだけでなく、アニメや漫画、その他舞台作品など、奇跡的に好きなコンテンツに共通のものが多かった。
そのため、自然と話す内容・会う理由は多種多様になったし、話していて退屈なことはまずなかった。
また、私が最初に感じた「仲間だ!!!」という感覚は、間違いではなかった。
趣味以外の色々なことを話すうちに、ものごとの考え方や、趣味に対するスタンス、人生観・金銭感覚など、近いものが多かったことに気がついた。
そんな私たちだからこそ、一緒にいて楽しく過ごすことが出来たのだと思う。まさに奇跡だ。
一方で、このようにも思う。
「無意識のうちに、お互いの考え方に影響を及ぼし合っているのではないか?」
実は、”奇跡的に考え方が似ている”のではなく、”必然的に考え方が近くなった”のではないか、ということだ。
タイムラインという同じ部屋で長い月日を過ごした私達は、無意識のうちに影響を与えあっていたのではないか。
それはまるで、嫌でも影響を与え合う”家族”そのものだ。
すると、この関係は奇跡か必然か、どっちだろうかと考える。どちらのようにも感じられて、実に奇妙だ。
しかし、”家族”ともなれば、奇跡でも必然でもどっちでもいいのかもしれない。
損得勘定なしにお互いの人生を尊び合える関係は、もしかしたら、本当の家族よりよっぽど家族らしい。
この奇妙な関係は、これからも一生かけて大事にしていきたい。
***
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